軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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岩の向こう側の本格的な探索は今度の休日にする事にして、それまで別ルートを探す事にした。

向こうには行けたが、岩に身体全体を打ち付けるようにジャンプしなくてはいけない為、あばらの辺りがアザになってかあさんに見咎められたからだ。

窓枠の汚れも見つかったら関連付けてバレてしまいそうだった。

ルートは意外な場所にあった。

水が絶壁から噴き出している箇所の近くにある椿らしき植物の裏に、いい感じに乗り越えられる階段状の段差があったのだ。ひょっとしたらこの椿はこの段差を隠す為に植えられたのかもしれない。

だとしたら大人たちはこのルートを知っているはずだがどうなんだろう?

椿を掻き分けて戻ってくると、実が生っている事に気がついた。夏の初めに花が咲いていたのは知っていたが椿って実がつくんだっけ?

とりあえず大きくて黒々したのをいくつか採取して持ち帰る事にした。

家に帰ると目ざとくかあさんが俺の手の中の種に気付いた。

「あれオミクロンそれどうしたの?」

あまりの観察力に一瞬ドキッとしたが、こういう時は下手に言い繕うとバレるから素直に本当のことを言った方がいい。

「滝の所に生えてる木に生ってた」

「ああ、その実は焼いても茹でてもエグくて食べられないわよ」

お、大丈夫そうだ。

「そうなの?」

「私たちがこの村に越して来てすぐの頃、いろいろ試したんだけどね。潰して絞ると油は出るんだけど灯りに使えるほどは出ないのよね。とうさんたちが鉄の手入れに使えないかやってたけど良くなかったみたいよ」

「へえ、そうなんだ、、、でも毒ではないんだよね?」

「食べるのは止めておきなさい。お腹壊すわよ?」

「はーい」

なるほど油が取れるのか。

俺は早速ひとつボロ布に包んで石で潰してみた。

確かに布に油が染み出してきた。絞ってもポタポタするほどは出ない。

そして少々油臭い。もし大量に摂れたとしても天ぷらには使いたくない感じ。

椿なら髪にいいんだっけ?

それともお相撲さんが髷を結うときに使うんだっけ?

思いついたことがあって今度は男子トイレに行く途中に生えてる、ある草をひと枝摘んできた。

この村では食べられない草としてほぼ無視されているが多分これはローズマリーだ。

こいつを潰した椿の種と一緒に揉んでみた。

中々いい匂いだと思うんだが、どうだろう?

村人には受けないかしら? ローズマリーを料理に使わないくらいだしな。

そんな風に思いつつも、ギルドに行くとイータとイオタは強烈に反応した。

「オミくんなんかいい匂いさせてる」

「花畑で遊んだ?」

俺は油の染み込んだ布を見せた。

「滝の所に生えてる木に知らない実が生ってたんだ。試しに潰してみたら油が出たんだけど、匂いが良くなかったから好きな匂いの草と一緒に絞ってみたんだ」

ふたりはそっと布に触れ、指の匂いを嗅いだ。

「それでこれ、どうするの?」

イータの目が怖い。なんというか、爛々としている。

「いや、どうってことはないんだけど、髪の手入れとかに使えないかなって、、、」

「やってみましょ!」

イータが雑に結えた髪を解いて背中をこちらに向けて座った。

「あれ、字の勉強は、、、?」

「遅れて来といて何言ってんのよ、こんなの少しも掛からないわ」

そうか、遅れてたか。

この村には時間なんて概念はあって無いようなもんだけど、まあいいか。

俺は毛先の方から少しずつ布で拭くように油を塗り付け手櫛で髪を梳かしていった。

ボサボサに絡み合っていた毛が素直に解かれていく。

油の少なさが逆に良かったのかベタベタにはならない。

面白くなってスイスイ梳かしていって地肌の辺りまで来ると後はイータが引き継いで自分で梳かしていった。

「イオタもやってもらいなさい!」

当然と言わんばかりの命令でイオタもちょこんと座る。

サロン・ド・オミクロンの開店である。

同じようにイオタの髪も梳いていると、イータは満足そうに髪をひとつ結びにした。

かなり小ざっぱりした感じである。

イータは意外と小顔なんだな。

今までは髪のボリュームの所為で全体的に大きく見えていたのかもしれない。

気付くとイオタも自分で髪を梳かしながら感嘆の声を上げていた。

「うわあ、ツルッツル! 気持ちいいし、いい匂い!」

イオタもささっと髪をひとつ結びにすると満面の笑顔をこちらに向けた。

ヤメロよ、なんだか眩しいよ、、、

しかし俺は少々納得がいかなかった。

結んだ先がやはりボワンと広がっていてイマイチ清涼感に欠けるのだ。

「櫛って持ってないの?」

「クシ?」

「ブラシとか」

「ブラシ?」

ふたりともキョトンとしている。ラチがあかない。

俺はギルドを出て近くのゴミ箱を漁った。先の尖ってない魚の骨を拾って集めて洗って縛った。

即席のブラシである。

走ってギルドに戻るとイータの髪をブラシで梳かした。

しかし、やはり長年絡み合っていた所為かつるつるサラサラにはほど遠い。

うーむ、ヘアアイロンが必要か?

と、頭を捻っているとイオタは超感心した様子で声をあげた。

「すっごいね、おねえちゃん髪つるつるサラサラだよ?」

「ほんと? イオタもやってもらいなさ、、、」

「いや、ちょい待ち」

このままでは納得がいかない。

俺はイータの髪をゆるめに纏めて三つ編みにした。

こうすれば髪が広がらないし傷みも気にならない。

少々田舎臭いのが玉にキズか。

前髪も作ってないし仕方がない。

今度は口あんぐりのイオタを捕まえ、こちらもブラシで梳いた。イオタは髪をふたつに分け三つ編みおさげにした。

左右の位置が合わず何度かやり直したが、まあこんなもんだろう。

腰に手を当て鼻息をひとつ。

どうだいこんなもんだぜ、とふたりを見るとちょっと凄すぎてビックリという感じだった。

「、、、どうやったの?」

「え、どうって、、、髪をみっつに分けて交互に重ねて行くんだ」

そこからは三つ編み講座で、それを憶えたふたりは満面の笑みになった。

「すごいね、こんなの何処で憶えたの?」

「ギ、ギルドのマニュアルにロープワークの項目があって、それをひとひねりアレンジした感じ、、、かな?」

ギルドのマニュアルのロープワークの項には三つ編みは載ってなかったが、もっと複雑なモヤイ結びとかフィッシャーマンズ・ノットとか載ってたから大丈夫だろう。

「へえ、すっごい! あたしたちも字がスラスラ読めるようになったらこういうことも覚えられるんだね!」

「そうさ、さあ勉強の時間だ!」

と士気が上がったところでバルドムが口を開いた。

「もう暗くなるぞ、帰れ」

その表情はひとことでいうと呆れかえっていた。

うう、ゴメンよバルドム。