軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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それからしばらく経った。

ところで最近、村の様子がおかしい。

何がおかしいかっていうと、アレだ。

子供たちの俺に対する態度が何か微妙だ。

一緒に遊び、共に漁をし、並んで小便をしていた友だち連中がなにやら余所余所しい。

もちろんオミ氏が俺になってしまったから、変わったところもあるんだろう。だけど俺が転生してからもうふた月は経っている。

何で今更? という感じが拭えない。

でもまあ、今まであまり目立たないタイプだった俺が急にリーダー格になりつつあるのだから面白く思わない奴が居てもおかしくはない。

特に年上連中は何か思うところもあるのだろう。

だが、知ったことか。

俺は大人なのだ。うんこちんちんではもう心の底から笑うことはできないのだ。

と、思っていたら、一番の仲良しだったシオンが困ったように言って来た。

「今度の満月の日のお泊まり会だけどさ、ウチはちょっとなんかダメみたいなんだよね」

「あ、そうなの? うん、わかった。とうさんにそう言っとく」

そんなやりとりがあって、俺はそれをとうさんに伝えた。すると、

「ホントか? シオンの妹がオミにべったりだから次の満月を指折って楽しみにしてるって聞いたぞ?」

「え、それいつの話?」

「昨日の晩だよ。オミにも妹か弟がいた方が良いんじゃないかって話になってな、、、」

「え? 何で妹の話がお泊まり会の話になるの?」

俺はすっとぼけて聞いてみた。

「うん? イヤ、なんだ。ソレとコレとは別の話なんだがな、、、」

「あっそ。じゃあ、お泊まりは行って大丈夫なの?」

「お、おう。その筈だぞ」

深く突っ込まれなくてとうさんはほっとしたようだ。胸を撫で下ろしている。

カワイイもんだぜ。

俺はそのままの足で駆けていってシオンの家に上がり込んだ。

「おいシオン、とうさんに聞いたらお泊まり会大丈夫だって言ってるぞ?」

その時のシオンの気まずそうな顔、シオンの妹の嬉しそうな顔、シオンのかあちゃんの驚いたような顔を見てなんとなく察しがついた。

シオンは俺に来て欲しくなかったのだ。

理由はわからない、シオンに嫌われたのかもしれない。だが村の男児全員が余所余所しくなった事と関係があるのだろう。

とりあえず俺はこの場の空気をどうにか取り繕ろうと、

「あっ、ははは、なんでもない! あっ、今度のお泊まり会は僕がダメだったんだ! 間違えちゃった、またね!」

と苦し紛れに笑ってシオンの家を出た。

背後からシオンの妹の不満げな声と、シオンのかあちゃんのシオンを問い詰めるような声が聞こえてきた。

そんなことがあって俺は村の男児と遊ぶことがなくなった。

遊ぶって、ただ走ったり、ただ泳いだり、うんことかちんちんとか言ってバカ笑いすることだ。

何気にショックだったが、さすがに32歳の成人男性として泣いたりはしなかったよ。

せっかく鬼ごっこや高鬼や影踏みなど古式ゆかしい日本の遊びを教えてやったのに、全員死ねと心で思っただけだ。

ただギルドに行くまでの時間が暇になったので今まで興味があった崖の方の探索をする事にした。

村の背後に立ち塞がる断崖絶壁。

大きな岩がゴロゴロして足場が悪いし、午後になると暗いし、たまに落石もあるとのことで子供は特に近づかないよう大岩が並べられ、封鎖してある。

幸いウチは崖に一番近い場所に位置していたので、すぐ裏手の大岩を乗り越えれば目的地だ。

ただこの大岩が曲者で高さが大人の背丈程もある。大人でもよじ登るのは不可能な難関だ。

梯子でもかければ楽勝だろうが、禁断のサンクチュアリに足を踏み入れるのだからバレバレな痕跡は残せない。

しかし俺には温めていたプランがあるのだ。

それは俺の家の窓からジャンプして大岩に取り付くというプランだ。大岩の上部に取り付いてしまえばなんとかよじ登れるだろう。

問題は向こう側に降りたはいいが戻れなくなる可能性だ。家は近いのだから大声を出せば大人たちが助けに来てくれるだろう。

しかしそれでは探検にならない。

探検とは安全に行って無事に帰って来なければならないのだ。冒険家の植村直己さんもそんなことを言っていたような気がする。

俺は家の屋根によじ登って向こうの様子を確認してみた。

岩の向こうはちょっとした空き地になっていた。この岩がなければ家がもう一軒建ったことだろう。

しかしそれは帰還が困難であるということでもある。

向こう側に足場がなければ大岩を登ることはできないのだ。

俺は熟考した結果、梯子を用意することにした。

銛を2本先端で結びあわせた二等辺三角形に1本の縄を渡した簡易的な梯子である。

アルファベットのAのカタチだ。

これなら痕跡を残さず持ち帰ってくることができるだろう。

俺は早速銛を2本と縄一巻きを岩向こうに投げ入れ、窓枠からジャンプした。

思いの外、岩は指が掛かる箇所がなく、あっけなくずり落ちてしまった。

ヤバい。

銛2本をロストしたかもしれない。

木の少ないこの村では銛は大変貴重なものなのだ。

とうさんが気付かない訳がない。

焦った俺は何度もジャンプしたが、何度トライしてもずり落ちてしまう。

足に力が入らなくなってきていよいよこれまでか、と最後のチカラを振り絞り、岩の頂点の向こうに手を精一杯伸ばしてジャンプしたところ指先が取っ掛かりに触れた。

俺はその取っ掛かりの位置を頭に刻み込むと身体を引き上げ岩の向こうへと降り立った。

大岩の向こう側にはいいサイズの岩がゴロゴロ落ちてて帰りに梯子は必要なさそうだった。

我が家を建てるときに邪魔な小岩をこちらに捨てたのかもしれない。

さっき屋根から見た空き地の向こうはさっと見て回った感じ梯子が必要そうな難関はなさそうだった。

次は準備なしにこちらにこれそうだ。

俺はうなずいて家に戻る事にした。

銛と縄を回収し、家に誰か戻ってないか聞き耳を立て、音もなく静かに戻った。

窓枠が汚れていたのを拭き取ってミッション完了だ。

銛を定位置に戻し縄を壁にかけ、俺はギルドに向かった。ふたりの生徒が俺を待っているのだ。

遅れる訳にはいかない。