軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

905話 第一寄港地

島の森ということで、熱帯雨林風のジャングルをイメージしていたんだが――。寄港地の森は、想像とは一線を画す雰囲気だった。

針葉樹が殆どで、そもそも木の密度もさほどではない。木漏れ日が適度に差し込んで、見通しがとてもいいのだ。

モンスターの気配もない。もしかして、寄港地って全体がセーフゾーン的な感じ? 森を歩くと何の効果もないベリーやキノコが採取できるが、特殊な効果のあるアイテムなどはゲットできない。

「ペペーン!」

「ヤー!」

「クマー!」

モンスたちも気持ちのいい日差しと風を浴びて、楽しそうだ。まじでバカンス用の島なのだろうか?

そのまま散歩気分で島を歩くと、モンスターに襲われることもなく1時間ほどで一周できてしまった。

ビーチに戻ってみると、そこでは大勢のプレイヤーたちが寛いでいる。水着で遊んでいる者や、バーベキューをしている者、ビーチバレーをしている者など様々だ。

「というか、屋台まで出てるじゃん」

商人系、職人系のプレイヤーたちが、この機会を逃すなとばかりに色々売りに出しているようだ。露店や屋台はインベントリに入るものもあるから、設営もすぐなのだろう。

「いい匂いするなー。海鮮系かな?」

「クマー!」

「フムー!」

「キキュ!」

「あぶね!」

屋台から流れてくる匂いを嗅いでいた俺たちだったが、咄嗟にリックのやつを掴んで頭の上から引き剥がす。

ふー、間一髪だったぜ。リック本人は事態を全く理解してないみたいだが。

「キュ?」

「キュ? じゃねーの! 頭の上で涎垂らすなって何度も言ってるだろ!」

リックが食欲に負けて涎を垂らす気配を察知してしまうほどには、頭を何度も汚されてますからね!

「キュ」

「はいはい」

反省してる表情してるけど、それがこの場だけのことだって分かってるんだからな! というか、反省しているのは本当だけど、すぐに忘れちゃうのだ。

「……とりあえず何か食うか」

「クマ!」

「なんだ? あー。クラーケン串とか売ってるじゃん。美味そうだ」

「クーマー!」

船のイベントでゲットした分はまだまだ残っているけど、人が料理したクラーケンは初めて食べるのだ。それに、炭火で焼いた醤油味のクラーケンは微かに焦げが付いていて、異常に美味そうである。

クラーケンのブロック肉は乗船中のプレイヤー全員が手に入れたが、中には料理できない者や、興味がない者もいる。料理系プレイヤーはそういった者たちから買い取り、今回の屋台で使っているようだ。

自家製醤油を使ったクラーケンの串焼き、クラーケン入り超豪華海鮮焼きそば、クラーケンハンバーガーなど、面白い料理が揃っていた。

留守番の子たちの分も合わせて大量購入していると、近くの露店から声を掛けられる。色々とサービスもしてもらったし、儲かったね。

俺たちが通った後に、急に混み始めているな。ちょうど、島の探索に向かったプレイヤーが戻ってくるタイミングだったのかね? 時間的にもラッキーだったらしい。

「クママちゃんと一緒の――」

「俺にも――」

「おそろい――」

にしても混み過ぎじゃない? 急に人が押し寄せて、怒号まで飛び交ってるけど……。

「クマー?」

「おっと、何でもないよクママ。ビーチにシート敷いて、そこで食べようか」

「クックマ!」

「フムムー!」

「キキュ!」

食いしん坊たちの連携が凄い。

ササッと場所を確保すると協力してシートを敷き、どこからか取り出したカトラリーを並べていく。ああ、リックの頬袋か。

レベルが上がって頬袋の収納力がアップしているのは知ってたけど、あんなものまで入れているとは……。もはやアイテムボックスレベルじゃん。役に立ったけどさ。

にしても、口の中から取り出したカトラリーか……。いや、スキルの効果だから、汚れてないのは知ってるけどね?

「キキュ!」

「はいはい。今行くよ」

高速手招きをしているリックに苦笑いをしつつ、シートの上に料理を並べていく。

「クマー」

「フムー」

どんだけ食い意地が張ってても、フライングしないところがこいつらの良いところだよな。まあ、そのせいで涎が料理にかかりそうになってるけど。

「じゃ、いただきまーす」

「クマママー」

「キッキュー!」

「フームムー」

皆で手を合わせて、戦争開始だ。

「あ! 焼きそば取り過ぎだろクママ!」

「クマー!」

「キキュ!」

「リックー! 俺の皿から取ってくなって!」

「グゲ」

「ペーン」

「一口! 一口で食べるなって! というか、それもう丸呑みだろ! 食うの速過ぎぃ!」

どいつもこいつも油断ならないぜ!

奪い合いをしつつも料理を堪能していたら、不意に頭上に影が差した。

「え?」

なんだ? 太陽を遮るほどデッカイものが――。

「ク、クラーケンの触手! 敵襲だ!」

「ク、クママー!」

「キキュー!」

島にモンスターはいなくても、海からは来るってことね! でも、触手だけなら船でも戦ったのだ。戦いそのものに不安はない。

むしろ、激オコなクママやリックが暴走しないかのほうが不安なのだ。料理はまた後で食べればいいだろ! 邪魔されたくらいでブチ切れるなよ!

「おーい。少し落ち着けって」

「クマー!」

「キッキュー!」

ダメだ。威嚇に忙しくて声が届いてない。というか、クママは俺を守ってくれなくちゃ困るからね? 前出るんじゃないぞ? フリとかじゃないからな?