軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

906話 船のピンチ?

「まずは足を攻撃するよ!」

「おっしゃ!」

「いっちょやったるでぇ!」

アリッサさんの指示で、すぐに周囲のプレイヤーたちが動き出した。さすがに早耳猫の関係者や同盟クランの人たちだけあって、強そうな人ばかりだ。

勝てそうなら、俺たちは無理に前に出なくてもいいと思うんだが……。

「クマー!」

「キキュー!」

屋台グルメを味わう邪魔をされた食いしん坊たちが、怒りまくってやる気満々なのだ。

クママたちが張り切って突進していってしまったのを見送りつつ、俺は後ろから魔術での援護に専念することにした。盾職さえ吹き飛ばすようなクラーケンの触手に、絶対に近寄りたくないし。

クラーケンの触手は全部で4本。船で戦った時よりもかなりアグレッシブに動く。左右に大きく揺れてプレイヤーを吹き飛ばしたり、吸盤から棘のようなものが飛び出して攻撃したりもするのだ。

近接プレイヤーたちがかなりダメージを受けているな。当然、クママとリックも被弾しまくりだ。リックなんて、10メートルくらいの高さまでぶっ飛ばされたりしてたね。慌てて回復したよ。

ただ、戦闘は時間を追うごとに楽になっていた。

戦っている内に、島に探索に出ていたプレイヤーたちが戻ってくるからだ。少しずつ戦える人数が増えて、いつの間にか大人数レイドのような派手な戦闘になっていく。

触手出現から15分後。

全てのHPバーが削られ、触手が動きを止めた。皆で固唾を飲んで見守っていると、4本の触手がポリゴンとなって砕け散る。

皆が勝利だと思ったのだが、戦闘終了のアナウンスが聞こえてこない。

「なんだ?」

「おい! あれ見ろよ!」

「デッカイ渦が!」

騒ぎ出したプレイヤーたちがしきりに海を指さしている。そちらを見てみると、確かに大きな渦が海面に出現していた。

しかも、ゆっくりと岸に近づいていないか? え? 大丈夫?

しばらく皆で困惑していると、海からプレイヤーが上がってくるのが見えた。細身で耳がヒレのようになっている種族である。

「あ、フィルマだ」

「フム!」

船の中で出会わなかったから、いるとは思っていなかった。乗船してたんだな。どうやら水中が得意な彼女が、偵察要員として海底を確認してきたらしい。

「渦の下にクラーケンがいました! このまま待ってても、渦は消えないと思います!」

フィルマの報告を聞いて、皆が騒めく。これ、渦が船に届いたらどうなるんだ? もしかして、破壊される?

転移があるからホームへは帰れるけど……。だからこそ、船大破で船旅強制終了という可能性も否定できないのだ。むしろ、船が沈むかもしれないから、転移陣を解放できるようにしているのかもしれなかった。

「水中行動可能なプレイヤーは集まって! あと、クラーケン料理があったら全部買うわ!」

なるほど、ここでクラーケン料理か! どんな材料を使っていても、クラーケン肉を入れてると必ず水中呼吸のバフのみが付いた料理になるのだ。

いずれクラーケンとの対決で使うかもって思ってたが、結構早かったね。

俺はどうしよう。正直、水中についていっても役に立てる気がしないんだよね。ルフレやペルカがいるから、全く役立たずではないと思うけど……。

「ユート君! お願いがあるんだけど!」

「お願い、ですか?」

「うん。ユート君、クラーケン料理持ってないかしら?」

「持ってますけど、そんな多くないですよ?」

モンスたちとクラーケン料理パーティーしちゃったからね。皆で腹いっぱいになるまで食べて、ホームにある古代の島でダイビングごっこをして遊んだのだ。

古代生物がいっぱいいる海に潜るのはめっちゃ楽しかったね。ただ、そのせいでクラーケンのブロック肉もかなり使ってしまった。

「少しは提供できますけど」

「そう……。ユート君は、クラーケンと戦いたい?」

「え? いやいや、できれば戦いたくないですねぇ」

「クックマ!」

「キキュ!」

「ペペン!」

「怒るなって! 触手にあんだけ攻撃したんだからもういいだろ! あんなデッカイ化け物と水中戦とか、超恐いじゃんか!」

俺がクママたちを必殺泣き落としで説得していると、アリッサさんの下に早耳猫の人が近寄ってきた。

「クラーケンの素材、確保できました!」

「うん。ここに出して」

早耳猫の調達部隊が、プレイヤーたちから料理前のクラーケンをかき集めてきたらしい。

「ユート君。お願いって言うのは、これを料理してほしいのよ」

「こ、これ全部ですか?」

ちょっとした山になってるんですけど?

「他の料理持ちにも協力させるわ。で、モンスちゃんたちにはその料理を配ってほしいの」

「配膳係ってことですか? 別に問題ないですけど。いいよなお前ら?」

「フム!」

「クマクマ」

「キキュ!」

ルフレは自分の領分なのでやる気だ。クママも、ヤレヤレ仕方ないなって感じだけど、実はやる気になってるの分かってるからな? もうあざと可愛いクマさん顔してるもん。

リックは余り邪魔しないように。

「キキュ?」

とりあえず、手早く料理しちゃいますか。一番簡単な醤油炒めでいいよね?