軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

879話 4等船室

オイレンたちと一緒にプールで騒ぐのはハードルが高いので、俺はそそくさとその場を去る。後部甲板はパリピたちの巣窟となっていたが、前方甲板はどうだろうか?

「ふー、こっちは落ち着いてるな」

というか、後部甲板から逃げてきた陰キャたちが集まっているんだろう。プレイヤーの数は多いのに、話し声もほとんどない。

「さて、ここまで来たけど、何するかな?」

デッキチェアに寝転がって休憩するだけでも構わないが……。

「そう言えば購買で釣竿レンタルしてたけど、ここからでも釣れるのか?」

「フム? フムー!」

「ペペン!」

「グーゲー!」

「うわっ! ちょ、お前ら急にどうした!」

ルフレと河童が左右から俺の腕を引っ張り、ペルカが足にしがみ付いてくる。どうやら、釣りがしたいと言っているらしい。

でも、水面までメッチャ距離あるけど、糸が届くのだろうか? リール付きの竿なら、届かせるだけは問題ないだろうが……。

「わかったわかった! とりあえず手持ちの釣り竿で試してみるから!」

「フム!」

「ペペン」

「グゲー!」

急かすなって! ローブ伸びちゃうって!

「ほら、釣竿だ。落とすなよ」

「フム!」

「ペルカたちには踏み台あるからなー」

「ペペン!」

「というかお前ら、海に飛び込んで自分で獲ってくる方が早いんじゃないか?」

「グゲ!」

「ああ、釣ることに意味があると」

うるさい3人に釣竿を渡してやりながら、俺もデッキから糸を垂らした。

「ニュニュ」

「ヤー」

「フーマー」

飛行3人組はデッキチェアに寝そべって完全にバカンス状態だ。メルムはクッションにしか見えんし、アイネは大人の真似する子供にしか見えんな。ファウに至っては、デッキチェア使う意味あるか?

「普段使ってる椅子出すか?」

「ヤ!」

「デッキチェアがいいのね」

「ヤー」

ファウがそれでいいなら構わんけど、デッキチェアの上に忘れ去られた可哀そうなお人形っぽいんだよな。なんか、遠目に見るとちょっと哀愁があるって言うか。

「ヤーヤー!」

「分かったから! 変な目で見ないってば!」

「ヤー」

釣りに集中しよう。釣り糸は海まで届いたし、問題はここまで釣り上げられるかってことだよな。

それから30分。釣果はそれなりであった。海面からの遠さはあまり問題なく、普通に魚が釣れるのだ。ただ、まだ北の島のそばということで、珍しい魚は釣れない。

市場で買える魚ばかりなのだ。まあ、楽しいからいいんだけどさ。しばらくモンスたちとワイワイと釣りをしていたんだが、不意にコール音が鳴り響いた。

「お? なんだ? 浜風からコール? もしもし」

「白銀さん、どもー。ちょっと聞きたいことがあってさー。4階にある購買チェックしましたー?」

「購買? 見たぞ」

「品揃えがどうだったか聞きたくて」

なんと、複数ある購買は、利用制限があるらしい。俺は全ての施設が使えるが、4等船室に泊っている浜風たちは、3階の購買しか利用不可であるそうだ。

それで、特別船室にいる俺に、コールしてきたんだろう。

「見たけど、テイマー、ファーマー、陰陽師系の品に関しては、ラウンジよりも充実してるってことはなかったぞ? ここだけにしかないアイテムもなかった」

「おー、そっかー。上の階の購買なら特別な商品があるかと思ったんだけど」

「ないない」

どうやら購買で販売する商品に違いがあるかと思ったらしい。あり得なくもないが、そこまで差が付くとプレイヤー間で不満が生まれそうだ。多分、ラインナップはほぼ同じだろう。

多少品揃えが良くても、ここだけの限定商品はさすがにないと思う。それよりも気になることが俺にはあった。

「浜風って4等船室なのか? どんな感じ?」

「え? まあ、狭いですねぇ。ログアウトするだけの場所だから、構いませんけど。なんなら見にきますか?」

「お? いいの?」

「その代わり、特別船室も見せてくださーい」

「じゃあ、そっちの部屋見た後で、俺の部屋に移動するか? おもてなしできるくらい広いぞ」

「へー、それはちょっと見てみたいですね!」

浜風の許可も下りたので、俺は彼女の部屋へと向かった。部屋番号を聞いているので、見つけるのは簡単だ。

部屋の前には浜風たちが待っていてくれたし。

「こっちこっち!」

「ココン」

「お、狐ちゃん久しぶり」

「コン」

浜風の妖狐が一緒にお出迎えしてくれた。フワッフワの黄色い狐、いいよなぁ。ちょっとお澄まし顔なのがたまらないのだ。

「へー、これが4等船室か。意外と悪くないな」

「でしょ? なんか、船って感じするし」

4等船室は確かに狭かった。4畳半くらいの部屋に、ベッドと机が置かれているだけで、半分以上が埋まってしまっているのだ。

ただ、壁に存在する丸い窓と、低い天井が逆に船室っぽさを醸し出している。なんか、秘密基地っぽくてわくわくする感じ?

浜風に連れられてロクロネックの部屋も見せてもらったが、廊下側なので窓がない。その代わり、壁に魚の入った小さい水槽が埋め込まれている。これはこれで綺麗だね。

「じゃあ、次は白銀さんの部屋いこうよ!」

「そうだな。ぜひ驚いてくれ。ロクロネックも興味あるならどうだ?」

「いきますいきます!」

ふふふ。特別船室に驚くがいい!