軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

871話 野衾

「いた! あれか!」

「キョ!」

野衾を捜すために平原を彷徨っていた俺は、ついにその姿を捉えていた。いやー、マジで大変だった。

野衾は平原の上を流れてくる白い雲の中に住んでいるらしいんだが、当然ながら雲に包まれると周囲がほとんど見えない。

しかも、クラウドスピリットが巣くっている場合も多く、毎回邪魔されるのだ。妖怪察知で近くにいることは分かっているのに、戦闘の余波で逃がしてしまうことも何度かあった。

戦闘を上手くこなしたとしても、探すのに手間取っている内に野衾が逃げてしまう。

5回ほど失敗を繰り返すうちに、ようやく雲外鏡を使えばいいのだと気づいた。真実看破は戦闘中に使うだけではなく、隠れた相手を見つけ出すのにも役立ってくれたのだ。

鏡の放つ光が雲の内部を照らすと、雲壁を使って隠れていた野衾が姿を現していた。フワフワと浮きながら、こっちを見ている。

「ブシュ?」

「よくやったぞ雲外鏡!」

「キョキョ!」

雲外鏡が自らアピールしてくれなきゃ、しばらく気付けなかっただろうな。

「で、こっからどうすりゃいいんだろう?」

「ブシュー?」

「キョ?」

発見するだけで友誼が結べる相手ではないみたいだが、戦闘が始まる様子もない。

「……これ、食べる?」

「ブシュ?」

これはもう、餌付けのタイミングとしか思えない。妖怪は食事をする子としない子がいるから、正解かどうかわからんが……。浜風にもう少し情報を聞いておけばよかった!

「ブーシュー?」

俺が手に盛って差し出したナッツ類をクンクンする野衾。思わずリス系ならナッツだろって思っちゃったけど、妖怪だから違ってたか?

そもそもこの辺にナッツ類なんてないし。もっと妖怪っぽいものじゃなきゃダメだった?

ちょっとドキドキしながら待っていたら、野衾が俺の手に近寄ってきてナッツの匂いを嗅ぎ始めた。そして、数度ヒクヒクと鼻を動かした後、パクッとナッツを咥えたではないか。

「お、おいしい?」

「ブシュ!」

どうやらお気に召したらしい。鼻を大きく鳴らすと、ナッツをさらに食べ始めたのだ。俺の掌に載せていた豆がすべてなくなった直後、アナウンスが聞こえた。

『野衾と友誼を結びました。一部スキルが解放されます』

よしよし。これで野衾も手に入ったぞ。解放されたスキルは『雲呼び』と『雲壁』スキルだった。

雲呼びは雲を呼び出すだけの煙幕系スキルである。この雲を雲壁スキルで固めて使用しろってことなんだろう。

因みに、雲外鏡の場合は『魔法反射』『物理反射』が解放されていたのだ。一見凄そうだが、どちらにもデメリットがあった。

魔法反射を使うと、物理防御半減。物理反射を使うと、魔法防御が半減してしまうのである。しかも、全てを反射できるわけではなく、スキルレベルに応じた一定のダメージの攻撃に限るらしい。

魔法攻撃のみ、物理攻撃のみというボスがいるなら使えるかもしれんが、そうそうそんな敵いないし。雑魚相手なら使うまでもないし。まあ、難しいよね。

やっぱ妖怪のスキルって、クセが強くて使いづらいスキルが多いのだ。もっと強い妖怪なら、凄いスキルがあるのだろうか?

「ブシュ?」

「おっと、とりあえずホームに戻るかね。みんなに野衾を紹介せにゃならんし」

「ブシュー!」

村へ戻る途中で野衾の戦闘を見せてもらったけど、なかなか面白い戦闘スタイルだった。アイネのように浮かんでいる状態から、雲糸を投げつけて攻撃するのだ。

敵を引き寄せて味方の援護をするスタイルである。

ただ、レベルが高い相手だと、逆に引き寄せられてピンチになるらしい。レベルが上がれば上空に持ち上げて、落下ダメージを与えることも可能になるんだろう。

その後は野衾には俺に掴まっていてもらって、全速力でヒバリ草原を駆け抜けることにした。もう夜なので、敵が強くなっちゃってるからね。

夜の堕天使系エネミーと何度か戦闘しながら、俺たちはなんとかヒバリ草原の村へと戻ってきた。俺の背にしがみ付いていた野衾が、背後からの奇襲で死にかけた時は本気で焦ったのだ!

「戻ってきたぞ」

「ブシュ」

「まだプレイヤーが大勢いるな」

浜風たちはライチョウ草原に向かったと思うんだが、後からやってきたプレイヤーたちか? ただ、ハイウッドやカルロもいるんだよな。

ずっと村の調査をしていたのだろうか? それにしては、険しい表情のやつらも多いか?

「あ、白銀さん。今お戻りですか?」

「カルロ、まだここの村にいたんだな」

「まだいるというか、今戻ってきたと言いますか……。死に戻ったんですけどね」

「え? この面子が?」

「そうなんです」

浜風たちは別行動をしているようだが、早耳猫と検証班の精鋭に加え、明らかに強そうなプレイヤーがたくさんいるんだぞ? その全員が死に戻った?

「何があったんだ?」

「プレデターに遭遇したんです」

プレデターは、徘徊型のボスのことだ。ヒバリ草原にもしっかりプレデターがおり、しかもレイド扱いの激強ボスだったらしい。

「奇襲を受けて、3分でこの有様ですよ。最初にヒーラーを落とされたのが痛かったですね」

「蘇生、間に合わなかったのか?」

「それが、蘇生不可の攻撃を使うみたいでして」

「うわ、それは酷い」

「マジでそうなんですよ! 奇襲ヒーラー狙いからの蘇生封じって、えぐ過ぎますよね! プレデターがそれやっちゃいけないでしょう! 運営、性格悪すぎなんですよ!」

カルロがドンと地面を叩いて運営に呪いの言葉を吐いていると、ハイウッドが近づいてきた。

「やーやー、白銀さん。やられちゃいましたよ」

「聞いた。どんな相手だったんだ?」

「天使、ですね」