軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

859話 情報過剰なアリッサさん

アリッサさんにコールすると、中々出ない。ログインしているのは確実だから、もしかして戦闘中だったりするか?

仕方ないのであとで掛けなおそうかと考えたその瞬間、コールが繋がる。なんか怒鳴り声が混じった、すんごい喧騒が聞こえるんだが!

「も、もしもし? すぐ出られなくてごめんなさい!」

アリッサさんの声も、どこか焦っているように聞こえる。

「いえ、なんか人の声聞こえますけど、大丈夫ですか? 忙しいんじゃ?」

「あっと、ごめん! これでどう?」

周辺の音を拾わない設定に変えたらしく、ウィンドウの向こうから響いていた大勢の人間の怒号のような騒めきはすぐに消えた。

戦闘中じゃなかったようだが、大丈夫なんだろうか? アリッサさんがいる場所が大勢の人間に攻め込まれていると言われたら、信じてしまいそうな大騒ぎだったが。

まあ、このゲームにPvPは実装されてないから、人同士の争いではないはずなんだけどさ。それとも、NPCを相手にしたなんかのクエストか?

「それで、コールしてきたってことは何か用事があったんでしょ?」

「あ、そうなんですよ。実は、セカンドジョブに関して追加の情報がありまして」

「え? つ、追加? な、何か新しい発見したって事?」

「はい。どうも、アリッサさんと会話しててアナウンス聞き逃しちゃったみたいで」

「ああ、コール中はアナウンスが聞こえなくなる消音モードって――ちょ、もう少し待ちなさい! 今大事な話してるんだから! 話し相手誰だと思ってんの! そうよ! それでもまだ騒ぐって言うの?」

急にデカい声! 受話器とかあるわけじゃないのに、顔をそむけちゃう不思議! 意味ないんだけどさ!

でも、アリッサさんまじで大丈夫なの?

「アリッサさん?」

「ああああ! ごめんなさい! つい! 早くしろってうるさいから! でも黙らせたから大丈夫よ。その追加情報っていうのを聞かせてもらっていい?」

だ、黙らせた? どうやらアリッサさんが取り込み中であるのは間違いないようだ。

それでも俺の話を聞いてくれるんだから、いい人だよね。ここはパパッと情報を売ってしまおう。

「気づいたら、新しいスキルを入手してまして。ユニゾンスキルっていうやつなんですが、知ってます?」

「ユニ、ゾン?」

「ええ。ファーストジョブとセカンドジョブの力が合わさって生まれるスキルってことらしいです」

「……」

「俺の場合は万能従魔術という名前でしたが、組み合わせる職業で色々変化するんだと思います。万能従魔術の内容は――」

無言のアリッサさんに、万能従魔術の効果を説明していく。

「――なので、そっちでも色々検証してください」

「うみゃぁぁぁぁぁ! やっぱこうなるんだぁぁぁぁ!」

さっきの怒鳴り声よりももっとデッカイ声! 耳キーンとなったぁぁぁぁ! でも、雄叫びが聞けて嬉しいです!

「はぁはぁ……え? アナウンス? メールも同時に? ちょっと待ってね!」

あちら側でピロンという音が鳴ったかと思ったら、アリッサさんが黙ってしまった。コール中にアナウンスが来たら知らせてもらう設定にしているらしい。

それが一番いいよな。俺がそう思って設定を弄っている間も、アリッサさんの声は聞こえない。

「どうしまし――」

「うみゃああぁぁぁぁぁぁ! なんでこのタイミングなのぉぉぉ! ユート君もアミミンもKTKもなんでぇぇ! 足りない! 人手が足りなぁぁぁい!」

またぁ! 本日3度目の耳キーン!

え? 俺なんもしてないよ? よほど凄いアナウンスがあったってことだよな。俺とコール繋いだままだから、ロールプレイしてくれているんだろう。

いやー、こんなところでも手を抜かずに楽しませてくれるアリッサさん、プロだぜ。

「アリッサさん? マジ大丈夫ですか?」

「はぁはぁ……。だいじょうぶ。だいじょうぶなのよ。そう、だいじょうぶ」

全然大丈夫そうじゃない! 涙交じりの声の後に、グシグシという何かを擦る音が聞こえたんだけど!

「そ、それよりも、ユート君にもアナウンス届いてるはずだから、そっちでも確認してみて」

「え?」

俺にも? コールを繋いだまま、ログを開く。すると、本当にアナウンスがきていた。なんと、船が完成したという報告だ。

北の島で作っていた船が完成し、出港準備が完了したらしい。

確か、準備の進捗度は100%になったという報告が昨日のうちにされていた。でも、その後はさらに準備が必要だとかで、大工の親方たちの作業完了待ちだったのだ。

さらに、俺の耳元でコールの音が何度も鳴り響く。大勢から一斉にコールがかかってきているようだった。多分、船完成までに関わったプレイヤーに告知が届いて、その人たちが俺に連絡を取ろうとしているんだろう。

「ど、どうしよう……」

「コールきてるんでしょ? とりあえずメール返したら?」

「あー、そうっすね」

一斉メールでとりあえず待ってほしいと伝えた方がいいだろう。でも、その後どうしよう。コールしてきてない人もいるだろうし、そもそも誰が造船クエストの参加者なのかも把握しきれてないんだが……。

「参加者の名簿はうちにあるから、連絡とかは任せて」

「いいんですか?」

「ええ! 任せて! 店番とか、もうハイウッドとかカルロにやらせるから!」

ハイウッドやカルロって、戦闘部門なんじゃなかった? ま、まあ、アリッサさんがやらせるって言ってるなら致し方なかろう。俺としては助かるし。

「浮遊島の探索をしてるところ悪いんだけど、北の島にいってイベントを確認してきてくれない? うちのルインも向かわせるから」

「それはもちろんですよ」

なんせ待ちに待った船の完成だからな! すぐに行きますとも!