軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

831話 天望樹上層

天望樹の上層は、通路のような太い枝が無数に交差することで、複雑な迷宮を作り出していた。2人が並んで歩ける程度の幅はある。

しかし、戦闘するにはちょっと狭いかな?

そんな場所で、無数の敵が襲い掛かってくるのは、かなり面倒だった。まだ15分くらいしか経っていないのに、もう4回目の接敵である。

「クッソ! ちっこいのが飛んでるの、マジでウザいな!」

「デビー!」

「リリス! ナイスだ!」

「デビ!」

トレント系の敵や、動く蔦のモンスターであるヴェノムアイヴィーなども厄介なんだが、一番ウザいのが空を飛ぶタイプの敵だ。

こっちは狭い足場で動きが制限されているのに、相手は好き放題だからな。空中をピョンピョン飛び回る突撃ドングリや、フワフワ浮かびながら魔術を放ってくるグリーンスプライトなど、飛行、浮遊系の敵が多いのである。

特に厄介なのが、スズメくらいのサイズのスパイクフラッフィーという敵だった。

動きは遅いんだが、上から静かに降ってくると見逃してしまうことが多い。そして、1度攻撃を喰らうと、継続ダメージを与える綿毛を張り付けてくるのだ。

そんな空中の敵に対し、無類の強さを発揮するのがリリスだった。同じように飛んでいるし、急所看破で弱点も探れる。それに、樹木殺しのスキルを持っているため、植物系の敵ばかりのこのフィールドでは無双状態だ。

多分、リリスがいなかったら今の半分も進めていないと思う。それに、俺も結構頑張ってるんだよ?

植物に囲まれた戦場で、敵が植物系。そんな戦場では、緑の達人が思った以上の効果を発揮してくれるのだ。

敵からのダメージは軽減され、魔術を使えばかなりのダメージを叩き出すことができた。俺が使用可能な魔術は水と樹属性で、対植物戦では威力半減だが、それでもこのダメージは驚きである。

また、緑の達人によって、サクラとオレアにかけるバフの効果が上乗せされている。

ヒムカの逆襲者も対植物では効果抜群だし、案外パーティが安定していた。

「いやー、戦闘も上手くいってるけど、もっとヤバいのが採取だな」

「キキュ!」

「ムム!」

1つの採取場所で普通よりも倍近く素材をゲットできている。これも緑の達人の効果だろう。レアっぽい素材も手に入って、リックやオルトに尊敬の眼差しを向けられているのだ。

特に面白いのが、天望苔・古株というアイテムだろう。

名称:天望苔

レア度:6 品質:★7

効果:満腹度を3%回復させる。服用者に猛毒効果、もしくは解毒効果。中間素材として利用可。

名称:天望苔・古株

レア度:7 品質:★6

効果:満腹度を5%回復させる。服用者に高位解毒効果。中間素材として利用可。

通常の天望苔の場合は、毒or解毒というロシアンルーレット状態だが、古株になると解毒素材になるらしい。

オルトもリックも入手できていないところを見ると、緑の達人の効果かな? この調子で、天望樹の実も発見したいところだ。

天望樹の上層を探索し始めて3時間。

俺たちはセーフティエリアに辿り着いていた。

無数の枝が絡み合うように床を形成し、直径10メートルほどの広場を作り上げている。

しかも、広場の所々に他とは少し色の違う枝が生え、採取ポイントが存在していた。天望樹からすれば末端の小枝なのだろうが、俺たちからするとちょっとした木立くらいあるのだ。

さらに広場を彩るのが、緑色に薄く光る可愛らしい花たちだ。天望樹の枝の上に堆積した土からスズランのような植物がたくさん生え、プレイヤーの目を楽しませてくれている。

さらにさらに、俺たちの目を奪うものがあった。

「おー、綺麗だな!」

「ララ!」

「キキュー!」

セーフティエリアの周囲は木々の壁に囲まれているが、一部分だけぽっかり穴が開いているのだ。

道中も、無数の枝葉が密集して視界を遮り、景色を楽しむような余裕もなかった。だが、セーフティエリアからは遠くまで見通すことができ、まるで展望台にでもいるかのようだ。

ようやく、超巨大な天望樹の上にいるって実感できたな。

天空の花園から見下ろす大森林には濃い霧がかかっており、一部は雲海のようだった。メッチャ高いんだが、ここまで高いと逆に恐くないって言うの? 現実感がなかった。

「デビー」

「ムムー!」

「ちょ、オルト! そんな端っこ立ったら危ないぞ!」

「ム?」

セーフティエリアの端ギリギリから眼下を見下ろすリリスとオルト。リリスはいいよ! 飛べるんだから! でも、オルトはヤバくない?

落ちたら一巻の終わりだぞ? しかし、オルトは俺の心配を余所に、全く怖れていない様子で景色を楽しんでいるようだった。

「トリー!」

「ヒム!」

オレアとヒムカはセーフティーエリアを見て回っているようだ。すると、セーフティーエリアの中央で立ち止まると、俺に向かって手招きをしている。

何か発見したらしい。

「どうした?」

「トリ!」

「お? これ、ただのオブジェクトじゃないな! ちょっと光ってるし!」

「ヒムー」

2人が見つけた、床から真上に突き出すように生えた黒っぽい枝。それに近づくと――。

ピッポーン。

『特殊プライベートエリアが解放されました。転移しますか?』

「おお?」