軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

703話 カルロの樹精

二度目の樹精戦は、思ったよりも順調に進んでいた。

一度戦闘を経験したおかげで、どう対処すればいいか分かっている攻撃ばかりなのだ。

ただ、今回の樹精は武器が短剣なので、そこは未見の攻撃や行動もあった。突然前に出てくることもあるため、気が抜けないのだ。

まあ、どれも近接攻撃なので、葉っぱダーツよりは対処しやすいけどね。

サクラは常に樹精の前に立ち塞がり、その攻撃を完封してくれていた。

もう1つ、判明したというか、思い出したことがあった。リリスの持つ、樹木殺しのスキルだ。

これを持っていることで、樹木系の相手に対してダメージが上昇するのである。普段あまり使わないので、完全に忘れていた。

魔術には効果が乗らないようなので、気づかなかったというのもある。ただ、接近してきた樹精にリリスが槍で攻撃したら、メッチャHPが減ったので思い出したのだった。

これによって樹精のHPを手早く削ることができたのである。というか、クリティカル出てたら一撃で倒しちゃってたかもしれない。

「カルロ! テイムチャンスだぞ!」

「はい! うおおぉぉぉ! 樹精ちゃんよ! 我がもとに! テイムッ!」

「……」

「……」

「――!」

「うぎゃぁぁ!」

ですよね! 一発で成功するわけないですよね!

樹精の攻撃をもろに食らい、カルロが悲鳴を上げた。

「もっと下がれ! カルロ!」

「モンスとの距離が近い方がテイム率が上がるっていう都市伝説があるんです!」

都市伝説かい! まあ、少しでも確率が上がりそうなことは全部試したいのは分かるけどさ!

結局、カルロが10回ほどテイムを試しても、樹精を仲間にすることはできない。でも、相手のHPは既に残り1だし、このままテイムを使い続けていれば――。

「――!」

「な、なんだ?」

敵の樹精が、何やら身構えた。そして、その体から緑色のオーラが立ち上り始める。もしかして、狂化か?

でも、ボスでもないのに、狂化するかね? それに、オーラの色も赤と緑で違うし……。

「――!」

「え?」

「は?」

俺もカルロも、変な声出しちゃったよ。短剣を構えて飛びかかってこようとしていた樹精が、急にポリゴンとなって砕けてしまったのだ。

何らかの理由で、ダメージが発生したらしい。

「何が起きたんだ?」

「……うぐぅ」

また泣いとる!

いや、もう少しでテイムできたかもしれないのに、これだからな……。ショックがでかいんだろう。

その後、何とかカルロを慰めてログを確認すると、樹精は『緑の守護者』というスキルを使用したらしい。

「あ、知ってます。確か、5秒毎にダメージを食らう代わりに、ステータスが上昇するスキルだったはずです」

「だからか」

いまいち使用条件は判らないが、自爆することになっても自動で使用するAI設定なのだろう。樹霊リスとはまた違う方向で、テイムしづらい設定だな。

「ほら、落ち込むなって。次こそはテイムできるように頑張ろうぜ。な?」

「はい……」

とは言ったものの、そこからはさらに苦難の道のりであった。

第2区画とも言える迷宮エリアは、想定以上に罠の密度が濃かったのだ。それらを解除しながら進んでいくと、今度は凶悪なモンスターが姿を現す。

樹霊リスや樹精の姿もあるのは嬉しいんだが、他のモンスターも一緒なのだ。しかも、最低でも4体以上で出現していた。

今も、樹海リス4体と樹霊リス1体の群れと出くわし、カルロのブルースが死に戻ったところだった。範囲攻撃を連打して何とか勝利したが、消耗が大きすぎる。

「テ、テイムする余裕が全然ない……」

「全力で戦わないと、ヤバいな」

「敵も強くなってきましたしね……」

出現する敵のレベルが上がっているということは、正しい道を進んでいる証でもあるんだが……。

「どうする? 先へ進むか? それとも、戻って敵のリポップを狙うか?」

「……戻りましょう」

まあ、そうだよな。普通に戦闘が厳しくなってきたし、さらに敵が強くなったら全滅もあり得る。

結局、俺たちは迷宮を引き返しつつ、地図を埋めながらも入り口を目指した。

リポップが遅いらしく、エネミーは中々出現しない。それでも1時間ほど歩き回っていると、ようやく敵が再出現し始めていた。

そして、ついにその時が訪れる。

「テイムッ!」

「――!」

カルロの渾身の叫びと共に、棍棒持ちの樹精が淡く輝いた。

あの光、見たことがあるぞ!

樹精の姿が、一瞬でかき消える。ホームか牧場へと送られたのだろう。

「や、やった! やりましたよ!」

「おう! よかったな!」

「よっしゃー!」

カルロがテイムに成功したのである。両手を突き上げて歓喜の雄叫びを上げるカルロを何とかなだめ、早速呼び出してもらう。

他の精霊系のモンスターとは違い、その姿に大きな変化はないようだった。

「生産系のスキルが全くないですね」

「へえ? そうなのか?」

「はい。農耕系も木工系もありません。その代わり、緑の守護者があります」

ここでテイムした樹精は、戦闘特化ってことらしい。うちのサクラとも、野生の個体とも違い、ダンジョン産のモンスだしな。その差なのかね?

「よーし、君の名前はエメリーヌだ!」

「――♪」