軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

569話 酔いどれコクテン

「でぇぇっりゃぁぁぁぁ!」

「ガルルルオォォ!」

す、すげーコクテン! フォレストウルフチーフの巨体を、正面から受け止めてるよ! さすが戦闘メインプレイヤー!

コクテンたちと一緒に再度フォレストウルフチーフに挑んだ俺だったが、その巨体に正直ビビっていた。

俺なんか一口で美味しく頂かれてしまうほどに、巨大なのだ。しかも、1度殺されかけて逃げている。

やっぱりその時の印象が強いんだよね。広場に誘導する間も、怖すぎて何度も悲鳴を上げてしまったのである。

だが、集めたメンバーは俺の想定以上に強かった。

前回、俺たちが手も足も出なかった巨大狼と、正面から互角以上に戦っているのだ。

タンクを引き受けてくれたコクテンに、トップ魔術師のセキショウ。そして、騎乗攻撃で確実にフォレストウルフチーフのHPを削っていくジークフリードたち。

戦いを後ろで見ながら「俺たちいる?」って思ったけど、一応俺がみんなを集めたわけだからね。ヘイトを集めない程度に攻撃しつつ、バフとデバフで援護する。

今のパーティは、攻撃役の俺とキャロに、守りのオルト。回復役のルフレ。バッファーのファウに、魔術によるデバフを撒けるオレアとリリスという編成だ。

前衛はコクテンたちに任せればいいので、結構役には立てていると思う。特に凶悪なのが、相手の精神を下げることが可能なリリスの悪魔の視線。そこからの樹魔術や、オレアの鎌だろう。

精神が下がった結果、俺とオレアが使いまくるハルシネイトマッシュが、時折チーフに混乱の状態異常を与えるのだ。数秒で自然回復してしまうが、一瞬でも足止めできるのは大きかった。

鎌は直接的な攻撃力は低いのだが、クリティカル率が高い傾向があるらしい。そして、器用と精神は、クリティカル率に影響してくる。

精神が下がった相手に対し、オレアの鎌は非常に高いクリティカル率を誇っていた。多分、オレアの装備する樹精の鎌が、元々クリティカル率高めなのだろう。

「トリリ!」

「ガウゥ!」

「トリ!」

元々、忍耐スキルによって吹き飛ばし耐性もある。オレアはチーフの攻撃を鎌で受け止めつつ、反撃をしていた。その反撃が、10回に1回はクリティカルとなるのである。

小柄なオレアが大鎌をぶん回しながら、巨大な狼と戦う姿はメチャクチャ格好良かった。

まあ、オレアの攻撃力ではそれでも大したダメージにはならないが。ただ、怯みを与えられるのが大きいのである。

混乱やクリティカルで一瞬でも動きが止まれば、ジークフリードたちのランスチャージが容赦なく叩き込まれるのだ。

時折現れる雑魚フォレストウルフたちの処理をしつつ、俺たちはフォレストウルフチーフと戦い続けた。すると、巨狼の姿に変化が訪れる。

「HPゲージが赤になった! みんな、もう少しだ!」

「赤いオーラ……どうみても狂化状態でござるなぁ。コクテン殿、援護は必要でござるか?」

「はっはっは! 大丈夫です! それよりも、ヘイトに注意してください!」

赤いオーラを纏ったチーフの全身の筋肉が肥大化し、1回りほど大きく見える。歯をむき出しにしたその顔はより凶悪になり、滴り落ちる涎が恐怖を煽った。

もうね、超怖いんですけど? 俺たちだけだったら絶対に半泣きだったね。だが、トッププレイヤーたちが頼もし過ぎた。

彼らは全く怯むことなく、狂化したチーフと正面から激突する。コクテンなんか、笑っているね。

凶悪なボスと戦うことが楽しくてしょうがないらしい。戦いの前の雑談で教えてもらったが、敵がどんな攻撃をしてくるか妄想するのが好きであるそうだ。

そんな彼にとって、未見ボスの未知の行動なんて、大好物でしかないのだろう。

「滾ってきましたよぉ!」

コクテンは嬉しそうに叫ぶと、剣を腰に戻しつつ何かを取り出した。ポーションの類かと思ったが、どうも違う。瓶ではなく、ツルッとしたヒョウタン型だったのだ。なんらかのバフ用アイテム?

俺が鑑定するよりも早く、コクテンはそのヒョウタンを呷った。中に飲み物が入っていたらしい。コクテンのHPが僅かに回復するのが見える。ボスの攻撃力が上昇したのを見越して、回復系の飲料を使用したのか?

だが、その予想も違っていた。なんと、コクテンが酩酊状態になってしまったのだ。

しかし、俺の不安を余所に、コクテンはそのままチーフに向かって足を踏み出した。当然ながら千鳥足だ。え? マジで大丈夫?

「ウオオオオォォォン!」

「させませんよっ!」

「ウガッ?」

大きく跳んで後衛のセキショウを攻撃しようとしたチーフだったが、即座に対応したコクテンによって叩き落されていた。

今のなんだ? 宙にいる巨狼に蹴りを叩き込んだのだが、サマーソルトやオーバーヘッドではなかった。トリッキーなスコーピオンキックだったのだ。

さらに、地面に落ちたチーフに対して、体をユラリユラリと揺らしながら、左右の掌底を叩き込む。

酔拳だ! まるでジャッ〇ーを彷彿とさせるような流麗な動きであった。酔拳が活躍するところ、初めて見た!

「セキショウ! 頼みます!」

「了解だ! エアロショック!」

「ガッ!」

そこにセキショウの範囲攻撃が炸裂する。大型の敵の体の下で風を炸裂させることで、その体勢を崩すことができるらしい。

上体を大きく反らしながら、腹這いに倒れるチーフ。

「一斉攻撃だ!」

「「「おう!」」」

コクテンの指示に従い、俺たちは持てる全てを出し尽くす。

俺もモンスたちを入れ替えながら、連続で攻撃を叩き込み続けたのだ。

「はぁぁぁ! カオリャンチュゥ!!」

「うおおお! コクテンすげー!」

「はぁぁっ! せいっ! せや! ちぇぇぇぇい!」

コクテンが、酔拳のアーツを使用したらしい。カオリャンチュウって、中国のお酒だったかな? さすが酔拳。独特なアーツ名だ。

コクテンの体が真っ赤なオーラに包まれ、加速する。緩急をつけた動きで近づくと、親指と人差し指を輪っかにした独特な拳で、連撃を叩き込んだ。

本来であれば技後硬直で動けなくなるのだが、格闘系のアーツには他にはない特徴があった。技同士を上手く連携させることで、アーツを連続で放つことができるのだ。

かなりタイミングがシビアなため、4つ以上は非常に難しいらしい。

その後、軽く跳んで左肘を振り下ろし、掌による右アッパー、体を海老反りさせながらの爪先蹴り、後ろに反った体を戻す反動を利用しての頭突きと繋ぐ。

ここまででアーツは5つ。すでに超高難易度の連携だが、コクテンはまだ止まらなかった。

「ちょおおおぉぉぉぉいやぁ!」

最後は、全身を使った渾身の双掌が、チーフの頭部に炸裂していた。

右足を思い切り踏み出しながら両掌を突き出した状態で硬直するその姿は、非常に隙だらけだった。倒せていなければ、反撃を食らっていただろう。

「グオォォ……」

チーフの全身から力が抜け、ポリゴンとなって砕け散っていく。

「酔拳が活躍するところ、初めて見たよ。やっぱ格好いいな!」

「はは、元々は白銀さんのお陰で取得したスキルですから。楽しんでもらえたならよかった」

俺のことまで考えて、魅せる戦いをしてくれていたらしい。気が遣える男だね! さすがコクテンだよ!