軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

562話 お孫さん発見

「……あんなん勝てるか!」

フォレストウルフのボスと遭遇してから15分後。俺たちは肩を落としながら、トボトボと浅層を歩いていた。

もうね、散々だったよ。一撃でうちのモンスたちが死にかけるし、こっちの攻撃が当たっても怯みやしない。

フォレストウルフチーフが強すぎて、逃げることしかできなかった。不幸中の幸いは、ボスフィールドでの戦闘ではないため、退却が可能であったことだろう。

脇目も振らずにひたすら逃げ続けた結果、なんとか死に戻りを出さずに撤退することができていた。

「はぁぁぁ……。まさかあんな強いとは……。イベント、詰んでね?」

頭を抱えていると、リックが俺の方に上ってきた。慰めてくれるのかと思ったら、どうもそんな感じではない。

「キキュ!」

「え? あれ、人か?」

なんと、先に見えている広場に、誰かが倒れている。もしかして、もしかするのか?

俺たちは慌てて人影に駆け寄る。

うん、お孫さんでした。つまり、あの狼たちは全然イベントとは関係なかったのだ。浅層全部回ってから、中層にいくべきだった!

あと、お孫さん、長時間放置してごめんね? ゲームだし、この状態でずっと倒れてたわけじゃないだろうけどさ……。なんとなく罪悪感があって、メチャクチャ優しく接してしまったぜ。

そのおかげなのか、お孫さんとも仲良くなれて、結果オーライだけどさ。あと、お孫さん、普通に大人だった。

子供だと勘違いしていたけど、20歳の騎士見習いである。そもそも、子供がこの森には入らんよな。

「それじゃあ、キュートホースを見つけるために、手を貸せばいいんですか?」

「ああ、頼めないだろうか?」

この人、この森にきたのはキュートホースを手に入れるためであったらしい。しかし、食事を持ってくるのを忘れて、途中で行き倒れてしまったそうだ。

塩おにぎりを両手に持って齧りつつ、自分の目的を語ってくれた。そして、自分がキュートホースをテイムするのを手伝って欲しいと言ってきたのである。

「発見してくれれば、後は私が自分で戦おう」

「わかりました。手伝いましょう」

「おお! ありがたい!」

お孫さん――シュバールの戦闘力はあまり高くはないようだが、浅層なら俺たちが護衛すれば問題ないだろう。

不安は、キュートホースが出現するのかということだ。すでにキュートホースと遊んだ後である。

一度この森から出て、出現テーブルをリセットしなくてもいいのだろうか? でも、森を出たら依頼失敗になるかもしれない。

そんな不安を抱えながら歩いていると、シュバールがキュートホースの発見の仕方を教えてくれた。

日中にしか出現しないこと。ユラユラと揺れる不思議な幻影を生み出して隠れているということ。戦闘力は低いので、発見してしまえば苦労はしないということ。

だいたい知っている情報だった。新しく知ったのは、昼間にしか出現しないってのくらいかな?

多分だけど、これが正規のルートなのかもね。第5エリアで宿に泊まって、元騎士のお爺さんの依頼を受けて、見習い騎士の森でシュバールと共にキュートホースを探す。チュートリアルっぽい感じなのだ。

シュバールの説明を聞き終わってすぐのことだった。

「デビ!」

「お、リリス。何か見つけたか?」

「デビー!」

リリスがもう見慣れた感のある幻影を発見していた。木立の一部が陽炎のようにユラユラと揺れている。

「おお! あれこそまさしくキュートホースの幻術だ! 発見してくれて、感謝する!」

「え? ちょっと! いきなり突っ込んじゃうの?」

シュバールは歓声を上げると、剣を抜き放って突撃していってしまった。一緒に戦うべきかと思ったが、見えない壁に阻まれて近づくことができない。

どうやら、イベント戦闘を見守ることしかできないようだった。

「ぬおりゃああ!」

「ヒヒーン!」

シュバールの剣が幻影を切り裂き、キュートホースとの戦闘が始まる。一進一退の攻防だ。ただ、傍から見ると剣を持ってハッスルしちゃった男性が、仔馬をいじめているようにしか見えなかった。

俺たちが見守る中、両者のHPがどんどん減っていく。そうして、どっちのHPバーもレッドゾーンに突入した時、シュバールが必殺技のごとく叫び声を上げた。

「テイ~ムッ!」

「ヒヒーン!」

成功だ! シュバールは見事にキュートホースをテイムしていた。イベントだし、失敗することはないと分かっていても、結構ドキドキしたね。

「やったぞぉぉぉ!」

満身創痍の状態で、両拳を突き上げて喜びの声を上げるシュバール。なんだろう、凄く微笑ましい。

戦闘メインのプレイヤーたちが俺の戦闘を見たら、同じ気持ちになるのかもしれない。とりあえず、これで依頼達成かな?

それから30分後。

俺たちは屋敷へと戻ってきていた。

「おかげで助かった」

「これは孫を助けてくれた礼だ。受け取ってくれ」

孫を連れ帰ったことで、老人の依頼も無事成功扱いだ。

渡された報酬は5000Gと、ボーナスポイント1点である。多くはないけど、エリア5のクエストだと思えばこんなものかな? それに通常だと、見習い騎士の森に入れるようになることが大きなメリットである。報酬はおまけみたいなものなのだろう。

老人たちに見送られながらお屋敷を出ると、もうすぐで夕方だ。キュートホース周回に時間をかけ過ぎたね。

「アリッサさんはログアウト中か」

情報を売りに行くの明日になるかな?

この後何をしようかと考えて、俺は始まりの町に戻ることにした。まだ、始まりの町での骨董品探しを完了していないことを思い出したのだ。

畑に戻ってメンバーを入れ替えると、始まりの町を巡ってみる。

ただ、めぼしい発見はなかった。高価なものはドゥーベ工房の作品くらいで、他は安物ばかりだ。モンスたちは各々が気に入った骨董品を手に入れて喜んでいるし、そこは良かったけどさ。

一応、裏道の道具屋なども見てみようと歩き回っていると、俺たちは不思議な光景に出くわす。

始まりの町にたくさんある小広場の1つに、プレイヤーが大量に集まっていたのだ。たくさんの露店が集まっているが、NPCが全くおらず、出品側も客側もプレイヤーばかりだ。

一見するとバザーのように見えるが、雰囲気が全く違っていた。様々な音楽が広場に流れ、売り手も買い手も、楽器を身に着けている者が多いのだ。

多分、演奏系のプレイヤーたちなのだろう。

「えーっと、どんな集まりなんだ?」

「ヤヤ?」