軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

536話 カルロと雪の森

「付き合ってもらって悪いな、カルロ」

「いえいえ、俺もこの辺でレベリングするつもりだったんで。ついでですよ」

ハイウッドやルインと解散した後、俺はカルロとチームを組んで、緑都の周囲を探索していた。

俺のお目当ては、このフィールドで採取可能な雪下茸という食材である。これは第10エリアの緑都の周辺に広がる、北の大雪森でごくまれに発見される、レア食材だ。

味も非常に良い上に、出汁も取れ、さらには耐寒効果まであるらしい。これを育ててみたいので、探索中なのだ。

カルロは口では「ついで」と言ってくれているが、明らかに俺を護衛してくれるつもりだろう。まあ、どう見ても危なっかしいし、放っておけないのかもしれない。

雪下茸をたくさんゲットできたら、茸鍋でも御馳走しよう。

「茸は見つけたけど、また白雪茸か」

「食えませんねぇ」

雪下茸は、白い傘に薄い青色のグラデーション模様が入った美しい茸だ。対する白雪茸はその名前とは裏腹の、白地に毒々しい赤の斑点が付いた毒キノコである。

白雪姫から名前を取っているんだろう。睡眠毒が含まれており、毒薬などの原料になる。9割が白雪茸で、雪下茸はたまにしか見つからない。

ただでさえ雪が積もっていて、採取は難しいというのに……。

因みに、4つの第10エリアの環境は、それぞれがかなり厳しいものとなっている。今いる、北の大雪森。寒いうえに雪で身動きがとりづらい。たまに吹雪くこともあり、かなり動きが制限される地形であった。

しかも、モンスターたちはこの環境に適応しているので、素早く動けるのだ。雪ウサギに、スノウゴリラ。一番危険な雪オオカミと、カルロがいなければとっくに死に戻っている、凶悪なモンスターばかりだった。

赤都があるのが、東の大山地。溶岩の流れる川などがあるが、それ以外は普通のなだらかな山地となっており、体力さえあればここが一番活動しやすい。

ただ、奥地に行くほどモンスターのレベルが跳ね上がるそうで、俺は赤都周辺でコソコソと採取するのがお似合いだろう。

青都の周囲は南の大雨林。巨大な湿地と熱帯雨林が合体したような場所で、毒虫や水中から襲ってくる爬虫類など、かなり気が抜けないフィールドである。

休憩する場所も少なく、プレイヤーから一番嫌われているそうだ。

そして、まだ見ぬ黄都を囲んでいるのが、西の大荒原。荒原と言っても半分は砂漠、半分は岩石地帯という感じで、寒暖差が激しいのが特徴らしい。

ここも比較的動きやすいが、昼夜で敵やフィールドギミックが大きく変わるため、あまり探索は進んでいないという。

どこも、一筋縄ではいかないってことだね。

「キキュ!」

「お、さすがだリック! これで3本目だな」

「キュー!」

雪の下とはいえ、採取系スキルがあれば採取ポイントが表示されるので、茸を発見することはできる。

ただ、リックと俺では見えている採取ポイントに差があるようだった。リックの方が明らかに採取回数も、量も上なのだ。

高レベルの採取スキル持ちにしか見えない、特殊なポイントがあるのだろう。この辺のフィールドになってくると、採取や伐採でさえ、一筋縄でいかないらしかった。

そのまま緑都の周囲を歩き回り、モンスターと激戦を繰り広げながら雪下茸をなんとか集めていく。

いや、正確には、カルロたちが激闘を繰り広げるのを応援しつつ、その横で採取に励んだ、だろう。そりゃあ、戦闘時には頑張って手を貸したが、メインはカルロたちであったのだ。

今のカルロのパーティは昨日からお馴染みのリリパット、ナイトバット、ブラウンベアに加え、レッサーカーバンクル、スノウゴリラというパーティだ。

レッサーカーバンクルの額の宝石は緑で、木目リスからの進化なのだろう。実際、樹魔術を使いこなし、かなり強い。

スノウゴリラはこのフィールドにいる、白い体毛のゴリラだ。氷魔術まで使う、凶悪なアタッカーである。仲間にしたばかりで、レベリングの最中だそうだ。

「こういうカッコいい系のモンスもありだよなぁ」

「ウホ!」

敵だと恐ろしいだけだが、仲間になると理知的で、森の賢者感が強いのである。こいつが前衛にいてくれたら、頼もしいだろう。

だが、カルロは微妙そうな顔をしている。

「どうした?」

「いや、なんというか、白銀さんのパーティにスノウゴリラはあまり合わないんじゃないかと思うんですよ」

「え? なんで?」

「あー、その、あれです。生産ができないんですよ」

「別に、リリスだってそうだぞ?」

「そ、そうですねぇ。あとはそう! まだ発見されたばかりなんで、もう少し情報が出回ってからの方がいいんじゃないですかね? ほら、進化先とか」

「確かに、それはあるか」

カルロが育てているということは、いずれ早耳猫が情報を公開するということだ。別に今すぐにゴリラさんが欲しいわけじゃないし、少し待つのはありだろう。

「情報が出揃ってからの方がいいか」

「ほっ」

なんか、胸を撫でおろしてる?

「いや、何でもないっすよ? ほ、本当っす」

妙に挙動不審だが……。もしかして、あれか? 自分がお気に入りのモンスを、他のプレイヤーにテイムしてほしくない的な?

俺はあまり気にしないけど、嫌がるテイマーがいるってことは理解している。カルロはそのタイプなのかな? ゴリラ好きだとは知らなかった。

カルロには世話になってるし、しばらくゴリラは我慢しよう。

「お、あそこにセーフティエリアがあるみたいだ。あそこで休憩しよう。雪下茸の味見もしたいし」

「本当に僕もいただいちゃっていいんですか?」

「鍋なんて、みんなで食べる方が美味しいからな。カルロの従魔で、鍋が食べれる子はいるか?」

「でしたら、ゴリさんと、パディにもらえます?」

ゴリさんはスノウゴリラ。パディはブラウンベアのことだ。著作権ギリギリの名前だね! 最初、クママの名前候補にアカカブトって考えてた俺が言うなって感じだが。

雪下茸と雪ウサギの肉に、緑都で買った大根などを鍋に突っ込んでいく。火加減以外は簡単でいい。

五分もすれば、美味しそうな匂いがセーフティゾーンに漂い出す。雪のない円形の広場なんだが、他のプレイヤーがこっちをガン見していた。

こんな匂いをさせておいてすまんが、分ける量はないのだ。

俺はサクラの作ってくれた炬燵を取り出し、それを2つ繋げて皆で入れるように調整した。少し詰めて炬燵に入る。

「それでは、探索の成功を祝して、乾杯!」

「乾杯!」

酒ではなく、ぶどうジュースで乾杯だ。祝すほどの大冒険はしてないけど、こういうのは気分の問題だからな。

「雪に囲まれた場所で炬燵に入って鍋! 最高だな!」

「こんな役得があるんなら、いつでも探索付き合いますよ」

「おー、それは有難い! そのうちお願いするかも」

「ぜひぜひ!」