軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

534話 走鳥と枝鹿

見習い騎士の森を探索する俺たちの前に、1体のモンスターが現れていた。騎乗可能モンスターの1種、ダッシュバードだ。

「クッケー!」

「結構デカいな!」

そりゃあ、人が乗るんだから当然だが、思っていたよりも大きい。ダチョウほどではないが、エミューよりは大きいだろう。

色は胴体が真っ黒で、首から上が灰色だ。足は結構太い。ゴツゴツしていて、爪なども太くて、まるで恐竜のようである。

かなりリアル寄りの姿をしており、間近で見ると、迫力があった。

「クッケケー!」

「ムッムー!」

向こうの先制攻撃で戦いが始まる。ただ、思ったよりも苦戦はしなかった。やはり、レベルが低いんだろう。

ダッシュバードの攻撃はオルトやドリモに防がれ、俺やリリスの攻撃であっという間にポリゴンとなって散っていった。

「やっぱ、浅層は見習いとか初心者用のフィールドなんだろうな」

「デビ!」

「リリスはよくやったな。偉いぞ」

「デービ!」

頭を撫でてやると、リリスが嬉し気に目を細める。今の戦い、リリスが非常にいい働きをしてくれた。

精神が低いダッシュバードには幻術が効きやすく、小悪魔の視線と組み合わせると効果がバツグンだったのだ。戦闘中に後ろを向かせたり、攻撃を空振りさせたりしていた。

体勢が崩れればこちらの攻撃も当たりやすく、完封できたのはリリスのおかげである。

「素材は、胃石と肉と卵か」

卵はガルーダなどと同じで、孵化させるためのものではなくて食用のものだった。食用の部位をたくさん落としてくれるのは、俺としてはかなり嬉しい。

鶏肉は複数見つかっているけど、ダチョウ系の肉は初めてだしね。ちょっと味が気になるのだ。恐竜肉はダチョウっぽかったけど、あれと比べてどうだろうな?

後で料理してみよう。走鳥の胃石は、錬金系の素材っぽい。たくさん手に入ったら、これも色々試してみたいね。

新素材を見ていると、探索への意欲が高まるのだ。

そうしてさらに森を進んでいったのだが、結局目当てのモンスターを発見することはできないでいた。

そもそも、騎乗可能なモンスターとのエンカウント自体、非常に少ないのである。

今のところ、ブランチディアーに2回、ダッシュバードに2回遭遇しただけであった。目当てのキュートホースは現れない。

すでに夜だし、一度戻った方がいいかな? まあ、想像よりも敵が弱いお陰で、夜でも戦えそうではあるんだが……。キュートホースが夜行性の可能性もあるし、夜も少し戦ってみるか。

そう思って森の探索を続行したが、大きな収穫はなかった。花園や、沼地、森中にあるポツンと開けた広場など、いくつか気になる場所は発見できている。

だが、それらの場所でイベントなどは起きなかったし、キュートホースを見つけることもできなかった。

むしろ、騎乗モンスターは昼行性であるらしく、夜には一切姿を現さなくなってしまったのだ。成果は、森の浅層のマップが大分埋まったことくらいだろう。

「仕方ない。とりあえず今日は帰ろう」

「デビー」

明日は朝から早耳猫と一緒に緑都を目指すことになっているし、早朝から畑仕事を済ませなくてはならないのだ。

「じゃあ、ログアウト前に、軽く料理実験をしてみよう」

「フム」

「お? 気になるか?」

「フムム」

うちのお料理番でもあるルフレが、地下の生産室へと付いてきた。新食材に興味があるらしい。

「じゃあ、一緒に料理するか」

「フムー!」

「では助手のルフレさん。まずは食材の確認からやっていきましょう」

「フム」

「今日のメインはお肉! 走鳥の肉と枝鹿の肉です! さらに、走鳥の卵もありますよ!」

ブランチディアーからドロップしたのは、枝鹿の肉、皮、角であった。角は走鳥の胃石と同じで、生産系の素材になるようだ。

武器にも加工できるかもしれんが、うちだと使わないしね。鹿の角って、リアルだと漢方の素材になっているようだし、そっち方面で利用してみよう。

「最初は、シンプルに塩焼きにしてみるか。俺が鳥肉を焼くから、ルフレは鹿肉を頼む」

「フムム!」

できた料理はどちらも、特にバフも付かないレア度3の料理だった。満腹度の回復量が少し多いが、それだけだ。

フィールドの難易度的にもこんなものかな?

「じゃ、次は少し手の込んだ調理をしてみよう。俺は鹿肉をハーブでローストにしてみるよ。ルフレはどうする?」

「フム~」

ルフレは鳥肉を前にして、腕を組んで悩んでいる。その雰囲気は、まるで特上の食材を前にした匠のようであった。

ジッと考えるルフレ。数秒後、目をカッと開いたルフレは目の前の鳥肉をむんずと掴むと、頭上高々と掲げる。

「フムムー!」

勇ましい表情のルフレ。けど、どんな料理を作るつもりなのかは全く分からんな。まあ、でき上りを楽しみにしておこう。

それから10分後。俺たちは互いの料理を見せ合っていた。

俺の作った鹿肉のハーブローストは、HP微回復効果が付いたね。味も美味そうだし、これは成功だ。

ルフレが作ったのは、鳥肉のタタキであった。表面を炙った鳥肉の上に、ハーブとポン酢たれがかけられている。

「こっちもHP微回復効果か」

「フム!」

味見してみると、どちらも非常に美味しい。性能的にはどこにでもある料理だが、美味しければそれが正義だ。

今後、見習い騎士の森に出入りしていればお肉もたくさん手に入るだろうし、これは探索の楽しみが増えたな。