軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

527話 大炎獣の剣牙

「ガァァァ……」

「ふぅぅぅ。勝ったか……」

激戦だったぜ。大炎獣、怖すぎだろ。象よりもでかい迫力の巨体に、常にこちらのHPを削ってくる火炎攻撃。そして、時折放つ、全体攻撃。

何度死にかけたか分からない。本当に、強敵であった。

「オルトたちも頑張ったな」

「ム!」

途中でレベル上げのために、モンスたちは入れ替えている。そのため、顔触れが開戦時とは全く違っていた。

いないのは、サクラとオレアだけだ。さすがに樹精を火炎攻撃を連発するボス戦には出せないのである。

俺がオルトたちと勝利を喜びあっていると、アリッサさんたちの会話が耳に入った。

「楽勝だったね!」

「うむ。パターンも分かってきたし、楽に戦えるのう」

「こんだけアイテムつぎ込んでますから、苦戦するわけないっすよ」

あっれー?

え? 死ぬ思いしてないの? 楽勝?

「お疲れ様ユート君。ま、疲れるような相手じゃなかったけどね!」

「あ、あははは。そうっすね! 楽勝でしたね! お、俺はアイテム使わせてもらってただけですけど!」

「いい投擲だったよ!」

あの戦いを楽勝って言えなければ、前線で活躍なんてできないってことか……。

と、とりあえずもう勝ったんだし、リザルトのチェックをしよう。

みんなレベルは上がったけど、進化などはない。ただ、ヒムカとドリモが40レベルになったことで、新スキルを得たようだ。

ヒムカが、自分が作った生産物を分解し、素材に戻す作品分解。まあ、素材のランクが下がるうえ、量も減るみたいだけど。練習をしやすくなるってことか?

ドリモは、地面の下の情報を得られる、地中探査。採掘や、地中の敵を発見するのに使えそうだった。

リリスもレベルアップして現在22レベルなので、あと3つで進化かね?

次はドロップの確認だ。

実は、ボス戦の前にアリッサさんからある頼まれごとをしていた。それが、ボスのレアドロップの譲渡である。

このボスは、レアドロップが2種類あるらしい。普通レアの火炎油と、激レアの火炎骨の2種類である。

早耳猫は火炎骨を集めているらしく、かなり高額で買い取りをしてくれるらしい。そもそも、俺だけじゃここまでこられないんだから、全く問題なかった。

そのために、レアドロップが出やすくなる、『幸福な落とし物』という超高価なアイテムも使わせてもらっている。

これは、ボス戦でのレアドロップ取得率が上昇するというアイテムだった。高品質の物はメチャクチャ高いらしく、狙っていたレアドロよりもこのアイテムの方が高いなんていう笑い話も生まれるほどだ。

「えーっと、大炎獣の毛皮と大炎獣の爪。それと……あー、ダメだったか」

「火炎骨、出なかった?」

「はい。毛皮と爪。あとは、剣牙っすねぇ」

「……剣牙? 牙じゃなくて?」

アリッサさんの様子が変だ。どうしたんだ? もしかして、これもレアなのか?

「剣牙です」

「うみゃぁぁー! まさか、こんなところで不意打ちをくらうなんてぇぇ!」

アリッサさんが頭を抱えて叫んだ。あ、これ、いつものやつだ。

「えっと……珍しいんですか?」

「珍しい? ええ、珍しいわねっ! なにせ、初めて聞いたから!」

「ええ?」

アリッサさんが初めて聞いたって……。げ、激レアどころの話じゃないじゃないか!

俺が驚いていると、アリッサさんがすぐに冷静な顔に戻った。残念アリッサさんではなく、切れ者アリッサさんだ。

「いくらドロップ率が低いとはいえ、周回するパーティもいるし、これまで何千回も倒されているのよ? それで、たった1回しか落ちないなんてこと、ありえる?」

「うむ。そうじゃな。何かの要因が絡んでいることは間違いないじゃろう。手に入れた全部のパーティが秘匿しているというのも、あり得ぬだろうしな」

「私、これと似た事態に心当たりがあるの」

「奇遇じゃな。儂もじゃ。泡沫の紋章の時じゃろう?」

「ええ」

言われてみると、あの時と似てるかな? アイテムでレアドロップの取得確率を上昇させていて、俺だけが超レアを手に入れた。

「うーん。何が影響してるんでしょうかねぇ?」

「普通に考えたら、スキルか装備だと思うけど。ドロップに影響してそうなスキルか装備品はない? 隠しておきたければ、無理にとは言わないけど」

「はは、気にしないでいいですよ。隠すような情報ないですし。でも、何かな……。俺のスキルでドロップに影響しそうなのは、招福スキルくらいです」

「あのスキル! 確かに、有り得そうね!」

このスキルを取得するときに、アリッサさんも一緒にいたからな。覚えているんだろう。

「あとは、オルトの幸運と、マモリの幸運ですね。同じ幸運っていう名前ですけど、同じかも分からないし」

「座敷童ちゃんの幸運かぁ。盲点だったけど、可能性はありそう」

「どれか一つではなく、全ての相互作用という可能性もあるがのう」

なるほど。確率上昇系のスキルが重なって、この結果を生んでいるってことか。それが一番あり得るかもしれない。

「とはいえ、検証がほぼ不可能なのよね」

「ユートに手伝ってもらうことが最低条件じゃからのう」

「ねぇ、ユート君?」

「な、なんですか?」

アリッサさんの猫なで声には、逆らえない迫力があった。猫なで声っていうか、猛獣の威嚇である。

「検証、付き合ってくれないかしら?」

「えーっと、西、南、北の第9エリアのフィールドボス戦で、幸運な落とし物を使って戦うってことですか?」

「その通りよ! 今回と同じように、攻略に必要なアイテムは全部こっちで出すし、ユート君の手に入れたドロップは、全部ユート君の物だから! というか、他のドロップもあげるから!」

ただボスと戦うだけではなく、きっちり第10エリアの町まで連れて行ってくれるという。

「なおさら断る理由がないっすね。俺には得しかないですから」

むしろ「いいんですか?」って感じだ。

「では、決定じゃのう」

「ありがとうユート君!」

「しばらくは御一緒できそうですね。マルコちゃんも喜んでますよ」

「ヤー」

「それ、本当に喜んでる?」

リリパットのマルコちゃん。相変わらず半目でテンション低いんだけど。しかし、カルロにはしっかりと分かっているらしい。

「ほら、ほんのちょっとだけ口の端が上がってるでしょ? メチャクチャ笑ってますよ!」

「ヤー」

うむ、分からん。だが、マルコちゃんはファウを掌に乗せて「ヤー」「ヤー!」とコミュニケーションをとっている。

ファウの楽し気な感じからいって、マルコちゃんも楽しんでいるのだろう。

「ならいいけど。数日の間、頼むな」

「はい。任せてください。俺たちが責任をもって、第10エリアの町に送り届けますから!」

まだ赤都にもたどり着いていないのに、他の都に行くことが決定してしまったな。