軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

502話 みんなの作品

ヒムカが、運んできた木箱を開け放つ。まあ、木箱と言ったが、トランクケースのようになっているけど。表面はしっかりと磨かれているし、これだけでも売り物になりそうだ。

「ヒムー!」

「おお、綺麗だな!」

「ヒム」

トランクの中には白い布が敷かれており、色々な物が収められていた。

木箱や木枠はサクラ。布はアイネに作ってもらったのかな?

並んでいるのは、マジックシルバー製のカトラリーセットとベネチアンガラス風のワイングラスだ。

トランクの右側には、美しい炎の彫刻が施されたスプーン、ナイフ、フォーク、小匙が6本ずつ入っている。柄には品質が低い翡翠などが嵌め込まれ、まるで芸術品のようだ。

しかも、特殊効果が付与されているらしく、消毒の能力があると表示されていた。これは、触れた料理に毒があるかどうか判別し、さらにその効果を弱めるというものだ。

プレイヤーに使い道があるとは思えないけど、全く効果がない物よりは高値が付くだろう。そのせいで落札されないってこともあるかもしれんが。

6つ入っているベネチアンワイングラスは、赤と黄色の縦縞が非常に美しい。こちらには特殊効果はないようだが、どうみても普段使いではなかった。これで水は飲めんな。

ともかく、ヒムカが最高の素材で最高のアイテムを作ってくれたことは間違いなかった。

「すげーもんを作ったな、ヒムカ」

「ヒームー!」

次に作品を見せてくれたのはサクラだ。

「――!」

「おおぉぉ? で、デカいけど、なんだそれ? テーブル?」

「――♪」

サクラが持ってきたのは、正方形の板の四隅に4本の足が付いた、一見するとちゃぶ台のように見える物だった。いや、板の裏に、何か赤いものが付いているな。

サクラがそれを工房の床に置くと、やはりタダのテーブルではなかった。

まず、板の表側。そこには、非常に細かい彫刻が彫り込まれている。うちのモンスたちが、果樹園で追いかけっこをする図柄だ。

左端にオルトの顔のアップと、その肩の上にリックが描かれており、それを他の子たちが追いかけている。ちゃんと、最後尾にはリリスの姿もあった。

しかも、くっついているのかと思っていたら、彫刻の施された板が取り外し可能だった。さらに、板の裏には赤い金属の板が埋め込まれ、そこに炎の彫刻が彫られている。これが熱を発するらしい。

そうなのだ、これはただのテーブルではなく、炬燵であった。

発熱する部分はヒムカやファウ。天板に嵌め込まれた、彫刻を保護するための一枚ガラスはヒムカ作かな?

サクラがさらに正方形の布団を持ってきて、天板の下に敷く。炬燵の完成だ。これはアイネに作ってもらったのだろう。

非常にいいできだった。タダの炬燵ではなく、工芸品的な価値もあるだろう。

「いい出来なんだけど……。これって、売れるか?」

「――!」

サクラは自信満々だけどさ、追いかけっこをしているモンスの天板とか、高値でほしがる人いるかね?

俺は欲しいから、その内似たのを作ってもらうつもりだけどさ……。それは、俺だからだろう。オークションに出すなら、もっと普遍的な彫刻がよかったんじゃないか? 水臨大樹とかさ。

いや、前にアシハナがうちの子たちをモデルにした彫刻を売ったりしてたから、需要はあるのかな?

「しかもこの炬燵、ただ暖かいだけじゃないな? ファウの錬金術か?」

「――!」

一定時間の耐寒効果付与に、以前アシハナが持っていたゴザと同じ、簡易セーフティーゾーンを生み出す効果も付いている。なんと、この炬燵を使えば、フィールドで休憩できるらしい。

「いや、フィールドで炬燵って……」

耐寒効果があるから、寒い場所では非常に有用だろうけどさ。

「――?」

「まあ、いいや。売れるといいな」

「――♪」

正直、売れるかどうかは分からないけど、サクラの頑張りは伝わってきたぞ。

「うーむ。これは、他の子たちの出品物もすごそうだ」

そう思っていたら、案の定であった。

しばらくして俺を呼びにきたルフレに付いていくと、出品するものと同じ料理が用意されていた。

俺に試食をして欲しいってことだろう。

「ほほー、天ぷら蕎麦か」

「フム」

見た目はどこにでもある、普通の蕎麦である。もり蕎麦と天ぷらの盛り合わせ、天つゆ、漬物、薬味がお盆の上に載っている。名前は『天麩羅もり蕎麦膳』となっていた。

このお盆や器は、他の子たちの作品だろうな。どうやら、別々の料理ではなく、お膳1つで1つの料理と認識されているようだった。

「いただきます。ずずずー……。うむ、美味い」

「フム!」

肝心の蕎麦は、俺が買ってきたやつだ。ツルツルで香りもいい。めんつゆはルフレが自作したやつだろう。非常に俺好みだ。

天ぷらはメチャクチャ豪華で、海老、魚、茸、野菜数種、かき揚げが付いている。

多分、出汁なども考えれば食材を30種類以上は使っているだろう。その甲斐あって、非常に美味しかった。リアルで食べる立ち食いソバよりは確実に上だ。

しかも、その効果が凄かった。食後1時間、戦闘中全ステータス上昇。ただし、死亡した場合はデスペナ倍増というヤバイ副作用付きである。ハイリスクハイリターン過ぎない?

ルフレはこの天麩羅もり蕎麦膳を1パーティ6人分セットで出品するらしいが……。これもどうだろう? 多分、食材の使い過ぎで凄まじい値段になると思う。

いくら有用な効果があっても、料理1つに高いお金を払うか? 他の補助アイテムを使った方が安く上がるだろう。やはり、売れない気がする。まあ、その場合は俺が使えばいいや。

最後に現れたアイネは、巨大な何かを抱えていた。

「デッカ! 超デカいな!」

「フマー」

「う、ウサギのヌイグルミか?」

「フマ!」

俺よりも遥かに巨大な、ドデカウサギさんである。抱いているだけでHPMPの自然回復速度が上昇するという効果付きだ。

人間よりも巨大なせいで、可愛いはずのウサちゃんがどこか不気味に見える。ヒムカが作ったと思しき大きなガラスの目玉も、不思議な空虚さを醸し出していた。

抱きしめた瞬間、抱きしめ返されたらどうしようとか考えてしまった。

しかも、自然回復速度を上昇させるというのであれば、一番使うのはフィールドやセーフティゾーンだ。

そこでこの巨大ヌイグルミを抱きしめるのは、色々な意味で勇気がいるだろう。

「売れるか……?」

「フマ!」

「自信満々だな」

どれも素晴らしい品物なんだが……。みんな、ちょっと特殊過ぎない?