作品タイトル不明
479話 和装入手!
レッドタウンの中心部に向かうと、大きな広場でバザーのようなことが行われていた。
プレイヤーの出店もかなり多い。様々な商品が並べられていて、面白かった。中には手に巻くバンテージの専門店とか、儲かっているのか怪しい店もあったけどね。
ヒムカは刀が気になるらしく、武器屋の前で足を止めては眺めている。他の子たちは、和風の雑貨などが気になっているようだ。
そうして広場を歩いていると、時々声を掛けられる。イベントでうちの子たちを見てファンになった人などが、手を振ったりしてくれるのだ。
ちょっとした芸能マネージャー気分である。まあ、「はいはい、アイドルには手を触れないでくださいね~」って言わずとも、お行儀のよいプレイヤーさんばかりだけどね。
うちの子たちが手を振り返す姿を見て、嬉しそうに歓声を上げるだけなのだ。
「あれー、白銀さんじゃーん」
「シュエラ? 今日はこの町だったか」
声をかけてきたのは、あざとロリ裁縫士のシュエラだった。相変わらずフリフリのあざとコスチュームである。水色地に白の水玉模様のロリータドレスなんて、自分で作ったのか?
セキ曰くアラフォーだそうだが、本当かは分からん。アバターじゃリアル年齢は分からんし。
ただ、あの時のシュエラの怒り様を見ていると、本当だったっぽいんだよね。
「あれ? 今日はセキはいないのか?」
地味なあの顔がないと、むしろ目立つ。それに、ストッパー役のセキがいないと、誰がシュエラの暴走を止めるんだ?
「あいつは、昨日から小学校の林間学校行ってる。一泊二日だから、ゲーム内だとあと数日は戻ってこないね」
「……リアル情報言うなよ」
「あはは、ゴメンゴメン。忘れて」
「まあ、言いふらす気はないけどさ」
しかし、セキって小学生だったのか? 全然見えんぞ。話し方も落ち着いていて、20歳は超えてると思っていたのだ。
いよいよセキとシュエラの関係が分からんな。親子っぽくはないし、姉弟にしては年が離れている。親戚とか?
セキの予定を把握しているってことは、それなりに近しい関係だと思うが……。
メッチャ気になるけど、リアルを聞くのはマナー違反だ。ここはスルーが吉だろう。
「それで、何かお探し?」
「何を探してるって訳じゃないんだが、掘り出し物がないかと思ってさ。あと、和装でいいのがあったら、買おうと思ってる。装備は更新予定だし」
「イベント素材使った防具、どっかに頼んだんだ? ちぇー、うちに来てくれればよかったのに!」
「はは。イベント直後にルインに会ったから、そこで頼んじゃったんだよ。明日受け取り予定なんだ」
「だったら、せめて何か買ってってよ~。ね? おねが~い」
うむ。本性がばれてるのに、しっかりとあざとい仕草でおねだりをするそのプロぶりっ子根性、嫌いじゃないぞ。
「甚平とか作務衣あるか?」
「えー? 甚平もいいけどさ、やっぱこれじゃない?」
「浴衣か?」
シュエラが取り出したのは、一着の浴衣であった。基本は黒だが、合わせた時に前にくる側に白の縦縞の模様が入っている。帯は白だ。
「いやー、結構派手だな。それに、俺に浴衣なんて似合わんだろ?」
「そりゃあ、現実の白銀さんはそうかもしれないけど、今のあなたは美形のアバター! 身長低めの合法ショタ属性!」
「え? 嘘。俺ってショタ枠?」
衝撃の事実を知ってしまった! そりゃあ、身長低いけどさ!
「まあ、大まかに分けるとって感じだけどね。イケメンというよりは、可愛い系だし。そんなあなたに、これが似合わないなんてことがあるかしら!」
ま、まあ、アバターが美形なのは確かなんだ。ちょっと派手目の浴衣を着ても、似合うかもしれない。
「ね? ね? ぜひ着てみてよ!」
「わ、分かったよ。試着モードで……こんな感じか?」
「いいじゃないいいじゃない! ぐふふふ、眼福眼福」
「拝むな! まあ、結構いい感じだけど。髪の色にも合ってるし、カッコイイじゃん俺」
リアルでこんなこと言ったらとんだナルシー野郎だが、今は美形アバターだからね。シュエラが言う通り、似合っている。
「でしょー? これくらいでどう?」
「え? 安すぎないか? これじゃ、材料費くらいだろ」
「もし私のお願いをきいてくれるなら、タダでもいいわ。それだけじゃないわよ? これ見て」
「ほー、従魔用の和装か!」
シュエラが見せてきたウィンドウには、従魔に着せる為の着物や浴衣、甚平が表示されていた。
防御力がない代わりに、装備制限などを無視して装備可能であるらしい。実質、アバターに被せるアクセサリー枠ってことだろう。
男性用に女性用、動物用に不定形用など、様々なタイプが取り揃えられている。さらに、マスコットや妖怪でも装備可能であるらしい。
「これいいな!」
「でしょう? なんなら、白銀さんちの従魔ちゃん、マスコットちゃん、妖怪ちゃん用に、全部タダで用意してもいいわよ? しかも、1人につき3着!」
「……ぜ、全部? 3着? まじで?」
「まじまじ」
「うち、かなりの大所帯だけど?」
「もーまんたい! 気にしないで、ドーンと任せてよ! ぜーんぶタダにしとくからさ!」
「ふ、太っ腹過ぎてお願いっていうのがなんなのか、超怖いんだけど」
合法的なお願いだよな? 犯罪じゃないよな?
「あの白銀さんたちも着てる浴衣って、宣伝したいのよ!」
「……それだけ?」
「白銀さん、自分の影響力を考えて! 白銀さんのモンスちゃんのファンが、どれだけいると思ってるのよ! 白銀さん愛用ってだけで、バカ売れ間違いなしなんだから!」
「あー、まあ、そういう需要か」
好きな芸能人と同じ服を着たいと考えるファンは少なからずいるだろう。それと同じで、うちのモンスと同じ浴衣を着たい。もしくは、自分のモンスに着せたいっていう人はいるだろう。
俺だってね、学習したのだ。うちの子たちは超可愛い。即ち、ファンがいてもおかしくはない!
「宣伝のためなら服をタダで提供するくらい安い安い! いくらでも持っていってよ!」
ほほう? これは、俺に対する挑戦だな? 多分、せいぜい20体くらいだと思っているんだろう。
よかろう! その挑戦受けて立つ!
「それで構わん!」
「やた! じゃあ、好きなの選んで!」
「本当に、全員分×3着選んじゃうからな?」
「あはは、遠慮なしでいいから! いい女は約束を守るものなんだよ!」
「わかった」
なんか、シュエラの店にチラホラお客さんが集まり始めたから、邪魔にならないようにパパッと選んじゃおう。
まずは、今一緒にいるクママ、ルフレ、ヒムカ、アイネ、リック、ドリモの分だろ?
それに、オルト、サクラ、ファウ、リリス、ペルカ、オレアの分。妖怪のスネコスリ、チャガマ。ああ、ハナミアラシの分も一応貰っておくか。
マスコットは、ナッツ、ダンゴ、マモリ、リンネ、タロウ、ホワン、オチヨ。
最近加入した子たちの分も必要だ。
ミニ恐竜に、ラッコさん親子。
「……あれ? 思ったよりも多い?」
ふふん、ようやく異常に気付いたらしい。だが、もう遅いのだ!
「なあ、大きなマスコットも、浴衣とか着れると思うか?」
「そ、それなら巨大モンスター用ってのがあるから、大丈夫だよ」
「なら、恐竜たちもいけるな!」
恐竜に浴衣を着せて可愛いかという問題はあるが、貰えるもんは貰っておこう。いつか着せる機会があるかもしれん。ティラノさんにスピノさんなどの大型恐竜はコンプしているし、ラプトルやパキケファロの群れもいる。
子グマ、子ウシ、子ブタ、子ヒツジの分も必要だ。ホオジロさんやシーラカンスさん、ダンクレオステウスさんの分も一応貰っておくかな。
魚が着られるかどうかさすがに分からんけどね。何事もチャレンジだ。
「うーん、これで全員分かな? 200着超えたんだけど」
「……い、いつの間にそんな大所帯に?」
「え? こないだのイベントだけど。やっぱ多すぎるよな。ちょっと減らすよ」
シュエラの驚いた顔が見られて満足だし、1人1着に減らそう。もともとそのつもりだったし。しかし、シュエラはそんな俺に待ったをかけた。
「ううん! 問題ないから! 一度約束したんだから、本当に遠慮しないで!」
「え? でも――」
「いいの! それに、白銀さんを騙そうとしたとか思われても困るし! だから、貰って行って! お願い!」
「じゃあ、本当に貰っていくよ?」
「どーぞどーぞ! その代わり、宣伝に使わせてもらうから! 早速ね!」
まあ、シュエラが納得してるならそれでいいや。いつの間にかメチャクチャ人だかりができてるし、邪魔にならないように帰ろう。
ホームに戻って、早速和服パーティーしたいしね!
「さあさあ! 白銀さんの従魔ちゃんたちも着てる、シュエラ印の和服だよ~! 今なら、好きなあの子と同じ浴衣でお揃いも夢じゃない!」
「「「うおおおぉぉぉ!」」」
な、なんだ? シュエラの店の方から、凄い叫び声が……。思わずみんなでビクッとしてしまったぞ。
ま、まあ、トラブルって訳でもなさそうだから、気にしないで大丈夫かな? きっと、シュエラのあざとポーズに、男どもが歓声を上げたんだろう。