軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

471話 凶相の悪魔

宙に漂う黒い液体が膨張を続け、その姿を変えていく。

その形は、完全に人型に変化していた。

黒いゴムで作った、人形とでも言えばいいのか? 以前戦った下級悪魔に、雰囲気は似ている。

ただ、妙に小さい。というか、子供体型だ。意外と弱そう。

誰も声を発さないのは、生配信したり、スクショを撮っているからだろう。一番前で、マモリと並んで撮影している人、見覚えがあるけど誰だっけ……?

あ、そうだ。以前ハナミアラシ戦でやらかしてた人だ。今回はバトルフィールドから締め出されたりしないように、最前列に陣取っているのだろう。

いつ戦闘が始まるかと身構える俺たちの前で、さらに変化は続く。

「え? 色が……」

「キュ!」

黒い表面がボロボロと崩れ落ちて行くと、その中から人の肌が現れた。それだけではなく、髪の毛や衣服まで見え始める。

数秒後。

俺たちの前に、変な生物が姿を現していた。

「悪魔のヌイグルミ……? すげー、デフォルメされてるな」

髪は、バイオレットカラーのツインテールだ。額からは短く丸い角が2本伸び、背中からはデフォルメされた蝙蝠の翅が生えている。先端がハート形をした悪魔尻尾が、自己主張するようにクネクネと蠢いていた。

多分、悪魔だろうと思われたが……。

人型ではあっても、人間と同じ体ではない。どちらかと言えばクママに近いだろう。指のない手に、ハニワ体型の胴体。アイネよりもさらに寸胴だ。

三頭身のミニキャラとか、そんな感じだろう。顔も、かなりデフォルメされている。

鮫のようなギザギザの歯が並ぶ大きい口に、かまぼこを逆にしたような形のつり目。配管工のおじさんが活躍するゲームの、顔つき砲弾みたいな顔と言えばいいか?

ギザギザの歯が覗く口は三日月形の笑みを浮かべており、かなり凶悪な印象がある。

眼球は、幼児の落書きみたいなグルグルの渦巻きだ。ただ、その整っていない歪な線が、むしろ迫力を醸し出している。

アイネくらいのサイズのデフォルメキャラなのに、なかなかの面構えだった。

服装もかなり攻めている。いや、この寸胴ハニワキャラに服なんか必要あるのかと思ったが、一応女の子型のようだし、コンプライアンスやらなにやらあるんだろう。

黒いレザー製のミニプリーツスカートに、黒いレザーのニーハイブーツ。まあ、先っぽが尖がった短い脚に、黒い革が張りついているような姿だけど。

上は、黒レザー製のビスチェだ。胸元が大きく開き、ヘソ出しの状態である。まあ、胸の膨らみも腰のくびれもないけど。

尖った耳には円柱状のイヤーカフが輝き、ツインテールの根元には髑髏をあしらったバレッタを装着していた。

右手に持った巨大なプラスチック製のフォークは武器だろうか?

衣装は非常に煽情的なはずなのに、色気が一切なかった。ほぼぬいぐるみなので当然だが。

これと戦うのか? 多少の迫力はあるけど、強そうではない。というか弱そうだ。

皆の戦意が急速に萎えるのが分かった。だって、明らかに大悪魔じゃないのだ。

いや、外見に騙されてはいけない。何せ悪魔だ。油断できん。

「デビー」

「……かわいいな」

その口から出た鳴き声も、臨戦態勢とは思えないほどに緊張感に欠けている。

どうすればいいのか、俺以外の全員も戸惑っているのが分かった。

すると、その直後であった。

ピッポーン。

『悪魔が召喚されました。戦闘を行いますか? 戦闘を行わず、テイムすることも可能です』

「は? テイム?」

『特殊召喚されたモンスターであるため、無条件でのテイムが可能です』

なんと、戦闘せずともテイムできるらしい。卵から孵ったときに似ているのか?

しかし、どうしようか……。チラッと後ろを振り返ると、大勢のプレイヤーが固唾を呑んで悪魔を見つめている。

テイムしたら、わざわざきてもらったこの人たちに無駄足を踏ませることになるよな? でも、戦って倒しちゃうのもな……。せっかくのレアなモンスなのに。

「あ、あのー、アリッサさん。ちょっといいですか? これ見てください」

俺はアリッサさんにログを見せて、相談することにした。

「どうしたの? もしかして、レイド戦の条件が表示された?」

「それが……」

「なになに……? え? えぇぇぇ!」

ログを見たアリッサさんが、驚愕の悲鳴を上げる。

「ど、どうしましょう?」

「そ、そりゃあ、テイムするしかないんじゃない?」

「で、でも……」

「ああ、他の人たちのことは気にしないでいいわよ。おにぎりをただでもらって、珍しい光景を見れたんですもの。文句は言わないわよ」

「な、なら、テイムさせてもらいますよ?」

「勿論よ」

俺はアリッサさんの言葉に甘えさせてもらい、テイムを選択することにした。

ウィンドウに浮かんだ選択肢から、テイムを選択する。

『悪魔をテイムしました』

「デービー!」

「おっとぉ」

「デビ!」

デフォルメ悪魔が胸に飛び込んできた。目付きは相変わらず鋭いけど、その声には俺に対して甘えるような雰囲気がある。

ちゃんとテイムされたようだ。ステータスを確認してみる。

名前:リリス 種族:リトデビ 基礎Lv1

契約者:ユート

HP:20/20 MP:34/34

腕力7 体力7 敏捷12

器用4 知力12 精神7

スキル:吸収、幻術、小悪魔の視線、樹木殺し、精神耐性、槍術、飛行、闇魔術、夜目

装備:子悪魔の三叉槍、子悪魔の装束、子悪魔の髪飾り

「名前はリリスか。ユニーク個体なんだな」

「デビ!」

リリスはドヤ顔で胸を張り、オモチャのような見た目の三叉槍を突き上げる。

「え? なにあれ?」

「超かわいいんだけど!」

「また白銀さんがやらかした!」

「生サスシロきたー!」

「わ、私も欲しい……」

「何が起きたんだー!」

プレイヤーたちが騒ぎ始めたことで、俺もようやく我に返った。メッチャ見られてる。

怒っている感じはしないけど……。

「あ、あはは。テイム、できちゃいました~」