軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

470話 悪魔召喚発動

「おにぎり行きわたりましたかー?」

「私まだもらってなーい!」

「できればツナおにぎりの方がいいんだけど、誰か交換してくんない?」

「し、白銀さんのおにぎり……ゴクリ」

「来てよかった!」

うむ、きてくれたプレイヤーさんには配り終えたかな?

恐竜肉みそがMP上昇。怪魚ツナマヨがスキルの消費軽減なので、前衛後衛はあまり関係ないだろう。

あとはリンゴジュースなども一緒に配ったので、ボス戦前の腹ごしらえにはなっただろう。

「ミニ恐竜がコンプされとる! さすが白銀さん……」

「ていうかそこの水場!」

「ラッコちゃんと水精ちゃんが戯れとる!」

「後で頼んだら、ホーム見学させてもらえないかな?」

この畑にこれだけの人数が入るのは、花見の時以来だろう。いや、今回はそれ以上の人数だ。

しかも、その中にはホランドやヒューイ、サッキュンなどの上位プレイヤーたちの姿まであった。さすがアリッサさん。凄まじい人脈である。

「アリッサさん。スゲー人数集まったけど、どうなってるんですか?」

「まあ、一応参加者なんだけどね」

多分、50人を超えているだろう。70人くらいはいるかな? テイマーのモンスを併せれば確実に100を超える。

ただ、アリッサさんからは20人くらいしか紹介されなかった。炊き出しを配るのも、その人たちだけでいいと言われたんだが……。

ボス戦がどの規模になるか分からなかったので、とりあえず人数は揃えたらしい。

紹介してくれた20人は、早耳猫の構成員と、依頼をして来てもらったプレイヤー達だ。通常のレイドボス戦である6パーティ、30人制限の場合に彼らが参加する。

そして、それ以外の野次馬になっているプレイヤーは、それ以上に参加可能だった場合に参加することになっているのだ。

こちらは、報酬は参加した場合の後払いで、とりあえず来てもらっただけであるらしい。

「いや、後払いでとりあえずって……。そんな扱いでいいのか?」

「いいのいいの。むしろ、その条件でいいから参加させてくれって、向こうから言ってきてるんだから」

「そ、そうなのか?」

「うん。白銀さんの畑に入って、見学するチャンスだしね」

「見学? 俺の畑を? まあ、珍しい物がたくさんある自覚はあるが……」

ファーマー以外に、そこまで注目されるのか? いや、神聖樹とかを間近で見るだけでも、話のタネになるかもしれない。

まあ、それでいいっていうなら、いいや。参加してくれた場合は、参加賞的におにぎりを配ればいいしな。

「じゃあ、そろそろ神聖樹のところにいくか」

「待ってました!」

「悪魔か! ビフロンスみたいなの出てきたらヤバくね?」

「白銀さんだからな、何があってもおかしくはない」

俺とアリッサさんが動き出すと、他のプレイヤーたちも付いてきてくれる。ワイワイと楽しそうだ。

「どんな敵が出るんだろうな?」

「ムー」

今のパーティは、オルト、ドリモ、ルフレ、サクラ、ファウ、アイネになっている。レイドを見越して、補助重視の構成だ。

「よし、それじゃあ、リック頼んだぞ!」

「キュ!」

リックが両手を高々と突き上げると、ウィンドウが立ち上がる。

「ここに悪魔素材を全部つぎ込んで――悪魔召喚、発動だ!」

「キューキキュー!」

真剣な顔のリックが、神聖樹に向かって両手をバッと突き出した。緑の大魔王に対して、電子ジャー封印術を使う時のじっちゃんのような気合である。

「お? 樹が……!」

「なんか起きてる!」

誰かが叫んだように、神聖樹に変化が起きていた。

全高3メートルほどに成長していた全体から、黒い靄が発せられたのだ。その靄が枝葉を伝い、幹の中央部分に集まっていく。

一気にバランスボール大に膨れ上がった黒い靄の塊が、今度はギュッと圧縮されたようにその体積を減らす。いや、靄が集まって凝り固まり、実体を得たのだ。

まるで、真っ黒な瘤である。

ゴムにも似た黒い瘤の表面には、赤い血管のようなものが無数に走り、その全体が僅かに脈動を始める。呼吸でもしているのだろうか?

その姿はとにかく不気味だ。

ただ、悪魔が召喚されると考えれば、相応しいとも思える。

皆が息を呑んで黒い瘤を見守っていると、その姿が再び変化し始めた。

表面に、無数の細かいヒビが入り始めたのである。

「く、くるか?」

「キュ!」

リックが合図をするかのように鳴くと、瘤のヒビが一気に開いていく。その直後、内部から赤い光が溢れ出した。

派手なエフェクトだな!

そして、赤い光が急激に勢いを増すと、畑全体を包み込んだ。

「まぶし!」

「こういうとこだぞ運営!」

「目がぁ! 私の目がぁぁ!」

「大佐ごっこはもうこすられ過ぎて誰も相手にせんぞ」

「……くっ! 前ならみんなが乗ってくれたのに!」

プレイヤーたちが楽しげにギャアギャアと喚いていると、すぐに演出の光は収まっていく。

そうして皆の視界が回復する頃、神聖樹には大きすぎる変化が表れていた。

「でっかくなったなぁ……」

「キュー……」

リックと一緒に、見上げてしまったぜ。さっきまで目の前にあった小さい樹が消え、代わりに巨大な樹が出現していた。全高15メートルくらいはあるか? 幹回りは、俺1人が手を伸ばしたくらいでは全く足りないほどに太い。

節くれだった幹がいかにも古木って感じの、樫に似た巨樹である。イベントで見た神聖樹によく似ていた。

「一気に育ち過ぎじゃね?」

「キュー」

うちの畑だとたまにある現象だが、これほど一気に育つことは珍しい。

ただ、樹にばかりに気を取られているわけにもいかない。

「あれが悪魔、なのか?」

「キュ」

神聖樹の前に、黒い塊が浮かんでいたのだ。見た目は、宙に浮かびながらウネウネと動く、バスケットボールサイズの墨汁の塊り?

スライム型の悪魔とか?

俺がそんなことを考えていると、黒い塊がさらに激しく蠢き始めた。そうして、段々と姿を変えていく。

その形は、明らかに人型を模しているように見えた。悪魔に変身しようとしているとしか思えなかった。

「く、くるぞ!」

「キュー!」