軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

442話 樹霊リスの情報

「あ、いたいた。アリッサさん!」

「あれ? ユート君? ど、どうしたの? またまた何か大発見? そうなの?」

クルミたちと一緒にイベントスピノを撃破した後、俺はアリッサさんの元を訪ねていた。

いくつか買いたい情報があるのだ。それに、売れそうな情報も少しあるし。というか、称号系は絶対に早めに売った方がいいと、3人娘に勧められたのだ。

スピノを倒せたのは彼女らのおかげでもある。情報料を一部渡すと伝えたんだが、称号の入手情報を教えてもらっただけで充分だと、断られてしまった。

その代りに、琥珀餌と余っているメガネウラを渡しておいたけどね。頑張ってほしい。

にしても、忙しい時に来ちゃったのか? 俺の顔を見た時のアリッサさん、凄い顔をしてたけど。

「とりあえず、情報を売ってほしいですね」

「……ほっ。分かったわ、こっちで話しましょう」

喫茶店の個室に移動して、改めて欲しい情報を告げる。

「それで、買いたい情報って?」

「まずは、リスの進化先の情報についてなんですけど」

「ああ、なるほど。そろそろ進化なのかしら?」

今、リックは連れてきていない。ここに来る前に簡易ホームに寄って、みんなを置いてきたのだ。

スピノとの戦いは激戦だったし、休ませてあげないとね。

「木目リスの進化先って、レッサーカーバンクル、庭師リス、樹海リスの3種類でしたよね?」

「なんだ、もう知ってるんじゃん」

「それで、これを見てほしいんです」

「……ちょっと待って」

「はい?」

俺はステータスウィンドウを見せようとしたんだが、何故かアリッサさんが画面から目を逸らしていた。

そして、何故か変な呼吸をしていた。

「ひっひっふー、ひっひっふー」

なんでラマーズ法?

「あ、深呼吸と間違えた!」

「だ、大丈夫ですか?」

いや、アリッサさんジョークだったのかもしれん。笑うべきだったか? 迫真過ぎて、思わず心配しちゃったのだ。

「うん。何とか落ち着いたわ。で? 何を見ろって?」

「進化したリックのステータスなんですけど」

「つまり、すでに進化済みであると。そして、情報のない新種族だと」

「そうです」

「うん。どうせこうなるだろうなって思ってた! それじゃ、見せてもらおうかしら!」

アリッサさんに促されて、俺はリックのステータスをアリッサさんの前に表示した。

「樹霊リス?」

「そうなんです。木目リスから進化しました」

「……なるほどね。ユート君は確か、大樹の精霊の加護の称号を持ってたわよね?」

「はい。え? もしかしてそれが関係してるんですか?」

「実は、他のプレイヤーでこれによく似たリスに進化した人がいるのよ」

アリッサさんにその情報も教えてもらう。

そのプレイヤーのリスが進化した先は、土霊リス。元は木目リスではなかったそうだ。

「それで、そのプレイヤーが土精霊の加護っていう称号を持っていたのね」

「なるほど。となると、称号をくれた精霊によって、進化先が変わると?」

「多分。ユート君のおかげでその可能性がグンと高まったわね」

土精霊の加護は、なんと土霊の試練をクリアするとゲットできる称号であるそうだ。

「え? クリアされてたんですか?」

「うん。土霊門だけね。他もそれなりに攻略が進んでるから、イベント明けには全部攻略されるんじゃないかな?」

攻略情報も売っているそうなので、もし挑戦する時にはお世話になろう。

「で、ここからが本当に知りたいことなんですけど。スキルを見てください。精神魔術と樹呪術。これの情報が知りたいんですね」

「へえ、精神魔術なんだ」

「土霊リスは違うんですか?」

「うん。あっちは精霊魔術だったね」

なんだろう。精霊魔術の方が強そうなんだけど。実際、相性の良い精霊を召喚して攻撃が可能という、かなりレアで強い魔術であるそうだ。

ただ、精神魔術も負けないくらいレアであるという。能力に関しては、ほとんど掲示板と変わらない情報しかなかった。

ただ、精神魔術を使わないとコミュニケーションを取れない特殊NPCの場所を教えてもらったので、行ってみてもいいかもしれない。普通だと、精神魔術や念話の使えるNPCと仲良くなって、協力してもらわないといけないイベントなんだとか。

まあ、武術系スキルの特殊進化イベントのNPCって話だから、俺には意味がないと思うけどね。

「樹呪術の方は?」

「こっちは完全に初見ねぇ。土霊リスが土呪術を覚えていたから、多少推測はできるけどね」

土呪術の場合、ホームの土系施設の効果上昇。戦闘時に、土魔術耐性。仲間の土魔術の効果上昇といった能力があるようだった。

「じゃあ、樹呪術も似た効果があるかもしれないってことか」

「多分ね。詳しく分かったら、情報売りにきてね」

まあ、色々と試してみよう。

「他に買いたい情報はない?」

「これの使い道って、どうですかね?」

「ああ、怪魚の切り身ね。それ、食べても美味しいけど、モサを釣り上げるのに使えるから、高値で買い取ってるよ?」

古代魚の琥珀身を使えば、古代魚そのものを使わなくても、モサを陸にあげられるらしい。なるほどね。

「買いたい情報は、そんなところですかねぇ」

「ふーん。じゃあさ、何か売れそうな情報はないの?」

「ありますよ」

「あ、あるの? リスの情報だけじゃないの?」

「はい」

「さ、さすがユート君……。配信から数時間しか経ってないのに……。そ、それで、どんな情報なのかしら?」

「これ、見てください」

「え、ええ」

アリッサさんがゴキュリと喉を鳴らしながら、険しい表情でウィンドウを覗き込む。

そんな、深淵を覗き込もうとしているかのような決意の表情を浮かべられると、俺まで緊張するんですけど。

ただ、称号関係は毎回高く売れるし、今回は3つもあるからな。結構自信があるんだ。

「ふふん。どうですか?」

俺はログを一部だけ表示させつつ、ゆっくりとスクロールさせていく。我ながら、いい演出だね。アリッサさんが、かぶりつくようにウィンドウを覗き込んでいる。

まずは、最初に獲得した『恐竜を倒す者』の称号を見せた。すると、アリッサさんの肩から力が抜けるのが分かった。しかも、あっさりと言い放つ。

「ああ、この称号」

「え? もしかして既出でした?」

「そうよ。もしかして、称号の情報、これだけじゃないんじゃない?」

「そっちもご存知でしたか」

こんなに溜めて、もったいぶってみせたのに、もう知られている情報だったとは! か、顔が熱い! 凄いなLJO! こんなところまで再現してるのか!

俺は恥ずかしくなって、ログを全表示にした。

「そりゃあ、みんながボスを倒してるんだし、称号をゲットしてるのは俺だけじゃないですよね」

「え?」

「もうご存知みたいですけど、俺が売りたかったのは『恐竜を倒す者』、『恐竜を討滅する者』、『恐竜を観察する者』の3つの情報です」

もう今後は調子に乗るの止めよう。こんな恥ずかしい想いを二度としないように。

今回のイベントだと、古代の島を最初に開放したりもしたし、トップグループにいるつもりでいたんだけどね。

考えてみたら、島にはもうたくさんのプレイヤーが来ているんだし、1日で全種類のボスを撃破するようなプレイヤーがいてもおかしくはなかった。ブラキオ、スピノを倒した後で、モサを初撃破したと考えれば、すでに称号時の情報をゲットして売りに来ててもおかしくはないのだ。

そもそも、俺が調子に乗って上手くいったことなどあっただろうか? いや、ない。つまり、慎ましく生きていくのが俺にはお似合いってことなんだろう。

「アリッサさん、調子乗ってすみませ――」

赤面する顔で俺が頭を下げようとしたら、アリッサさんの叫び声がそれを遮った。

「うみゃー!」

「うわー!」

耳がキーンとした!

「ユート君が来た時点で、絶対にこうなるって分かってたのに! どうして油断したのよ私!」

アリッサさんがいきなり頭を抱えて叫んだ。

「え、ええと……」

「何よ! 恐竜を討滅する者って! 恐竜を観察する者って何なのよ! 海賊の恩人じゃないの~!?」

「海賊の恩人?」

「沈没船で手に入る海賊旗を、廃村の墓地に持っていくと手に入る称号よ! 配信で沈没船を攻略したみたいだから絶対にそっちだと思ってたのにぃぃぃぃぃ!」

どうやら俺の入手していない称号があるらしい。あとで取りに行こう。それよりも、今は俺の所持している称号の情報だ。

「えーっと、つまり、この2つの称号の情報は売れると?」

「高く買い取らせていただきますっ!」

結局、情報料は差し引きで全部で14万イベトにもなった。討滅する者はある程度取得条件も分かっているしね。これが高いんだろう。

ボス戦で得たイベトなんかも併せると、30万イベトを優に超えている。

これでもっとたくさん、飼育ケースが買えるぞ。香水とかもたくさん買っておこう。

「い、今から情報を売りまくらないと、イベント順位が……。ポリシーには反するけど、少し高く……。いえ、ダメよアリッサ。悪魔に魂を売り渡してはダメ! いつも通り、足が出ない程度の値段で売らないと……。でも、それだと順位が……!」