軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

281話 マヨヒガの鍵

「えーっと、玄関で靴は脱いだ方がいいのか?」

「ヒム?」

「クマ?」

あー、お前らそんな土足で……。いや、そもそも、モンス達は靴なんか脱げんし、仕方ないか。よく見たら座敷童も下駄を履いたままだ。

「えーっと、こんにちは?」

「あい」

俺が座敷童に声をかけると、少女が可愛らしい返事をしつつ、ペコリとお辞儀をしてくれる。そしてそれに合わせるように、アナウンスが響き渡った。

『座敷童がオモチャを欲しがっているようです』

座敷童が「ちょうだい」とでも言うように、両手を俺に向かって差し出している。

は? オモチャ? 急に言われても……。いや、待てよ。オモチャ持ってるじゃないか。

「あれって、座敷童にあげるためのアイテムだったってことか? でも、壊れてるんだけど大丈夫かな?」

そう思いつつ、俺はインベントリを開いたんだが……。

「アイテムが変化してるな」

ひび割れたビー玉は綺麗なビー玉に。潰れたベーゴマは硬いベーゴマに。破れたメンコが格好いいメンコに。欠けたおはじきは可愛いおはじきというアイテムに変化していた。さらに破けたお手玉も、美しいお手玉という名前に変わっている。

「知らん間にイベントが進行していたって事ね。まあ、とりあえずオモチャを座敷童に上げちゃおうかな」

やはりここは特別感のあるお手玉だろう。どう考えても、女の子にはお手玉だしな。俺はお手玉を取り出して、両手を差し出している座敷童に渡してやった。

すると座敷童がお手玉を懐に仕舞うと、ニコリと微笑む。だが、その両手は差し出されたままだった。おや、まだ欲しがっとるのかな?

「もっと欲しいのか?」

「あい」

コクコクと頷く座敷童。

「……じゃあ、これも」

なんてやり取りを繰り返すこと4回。結局全てのおもちゃをあげてしまったのであった。

「あい!」

「えーっと、くれるのか?」

「あい!」

そして、座敷童が俺に差し出したのは、古びた鍵である。鑑定してみると「マヨヒガの鍵」となっていた。

さっきエリンギが教えてくれた話を思い出す。マヨヒガというのは、欲がないと宝がもらえて、欲が深いと罰が当たる、雀のお宿とか花さか爺さん的な内容の伝承であるらしい。

「この鍵……。どう考えても、この扉の鍵だよな。えっと……。ここを開けろってことか?」

「あい!」

俺は観音開きの木製扉の鍵穴に、手に入れたばかりのマヨヒガの鍵を差し込んでみた。すると、案の定扉のロックが解除される。

その先には、長い廊下が伸びている。その左右には襖が並び、不気味さと神秘さを感じさせた。

「なんか、雰囲気あるな」

和風ファンタジーRPGにこんなダンジョンがあった気がするな。

「あーい!」

「あ、ちょっと!」

俺が通路を観察していたら、座敷童がタタタッと通路に駆け出していった。そのまま、途中にあった曲道を曲がって行ってしまった。

いや、頭だけ出してこっちを見ているな。そして、アナウンスが響き渡った。

『座敷童が遊びたがっているようです』

「あい!」

なるほど、オモチャだけじゃダメってことか。

「よし、みんな行くぞ! ただし危険そうだったら即行逃げるからな?」

「ヤー!」

「キキュ!」

マヨヒガは、欲のない人間に富をもたらし、欲深い人間には罰を与えると言っていた。つまり、何か悪いことが起こる可能性も十分あるのだ。何をもって欲深いと言われるか分からないが、俺は自分を無欲だとは到底思えんしね。

俺たちが通路に踏み込むと同時に、再び駆けて行ってしまった座敷童を追って通路を曲がる。その先は、何とも言えない場所であった。

基本は日本家屋。しかし、その入り組み方は半端ない。エッシャーのだまし絵? アスレチック? そんな感じだ。しかもメチャクチャ広いし。

上り下りの階段に、梯子が無数に存在し、吹き抜けになった場所に通路がかかっているのも見える。

「おーい、座敷童さーん?」

「……」

ダメだ反応がない。まずはここから探し出さないといけないらしかった。

「よし、みんな! 頼んだぞ!」

「ヒム!」

さて、俺も探そう。複雑に入り組んだ立体迷路のような場所を探索していく。しかし見つからない。そうやって座敷童を探している内に理解した。

「つまり、もう遊びは始まっているって事ね」

隠れんぼなのか、鬼ごっこなのか。まあ、隠れんぼだろうな。

そうやって15分程座敷童を探している内に、ふと気づいた。

「そういえば、こっちに曲がってきたけど、通路はまっすぐ続いてたよな?」

これが隠れんぼなら座敷童は動かないが、鬼ごっこなら逃げている最中だろう。可能性は低いと思うが、あっちの通路も一応確認しておこうかな。

「ドリモ、クママ! 俺と一緒に来い!」

とりあえず、探索にはあまり役に立っていそうのないドリモとクママを引き連れて、俺は来た道を引き返した。

相変わらず襖が左右に並んだ、ちょっと不思議な雰囲気の通路が続いているな。

「襖は――開かないか。そっちはどうだ?」

「モグ」

「壁代わりってことか? まあ、一応全部確かめながら進もう」

「モグ!」

一見壁っぽく見えつつ、実は1ヶ所だけ開くとかあり得そうだ。なんて思ってたんだけどね。全く無駄でした。押しても引いても、全ての襖はビクともしなかったのだ。

そのまま突き当りの扉の前にたどり着いてしまう。

「さて、この向こうは何だろうな。ドリモ、クママ、前衛頼むぞ」

「クマ!」

「モグモ!」

そして、ゆっくりと慎重に扉を開けたのだが、その先には何もいなかった。

「えーっと、普通の小部屋っぽいな」

畳が敷かれた、4畳半の小さい部屋だったのだ。窓などは一切なく、部屋の四隅に置かれた行灯が淡い光を放ち、ゆらゆらと部屋を照らしていた。

その部屋の中央に、机が一つ置いてある。

「なんだ? アイテム?」

机に近づいてみると、ウィンドウが表示される。

「この部屋にあるアイテムを1つ手にお取り下さい?」