軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

270話 途中参加できません

エリンギに教えてもらってメールの着信を一時的にオフにした後、すでに着信していたメールを確認してみる。気づいていなかったが、少し前から他のプレイヤーからも届いていたらしい。

「アシハナ、マルカ、ふーか、タゴサック、ウルスラか」

女性ばかりだな。そして内容もほぼ一緒だった。とりあえずお気に入りのモンスが可愛いという褒め言葉に始まり、なぜ生配信を教えてくれなかったのかという小言を挟んで、最後は自分も今から参加できないかというお願いで締められている。

どのメールも長文で、熱量がハンパなかった。あいつら、そんなにハーブティーが好きだったっけ? それともウサミのお菓子に釣られた?

「うーん、どうなんだろう?」

飛び入り参加も可能なら、途中での参加も問題ないとは思うけど……。

そんなことを考えていたら、今度はフレンドコールだ。相手はタゴサックである。

「あー、タゴサック?」

「よー、ユート。今朝ぶりだな。生配信見てるぜ?」

タゴサックとはほぼ毎日、挨拶をかわしている。畑仕事をしていれば絶対にすれ違うからな。だから、わざわざフレンドコールをしてくるのは珍しかった。

「メールを見てないみたいだから、直接かけちまったぜ。実は俺も是非品評会に参加したいんだが、無理か?」

メールの返信が待ちきれなかったらしい。タゴサックはハーブ作りも熱心だし、参加したい気持ちは分からなくもない。

「どうだ?」

「うーん、ちょっと待ってくれ」

アスカに相談してみよう。

「あのー、俺のフレンドが途中参加できないかって言ってきてるんだけど、どうだろう?」

「あー、白銀さんもですか」

「俺も? ってことは、他にも似たコールが来てるのか?」

「はい。相当な数の問い合わせが……。メールもコールも一時的にオフしました」

アスカが自分のウィンドウを見せてくれる。

「うげ」

ちょっとした恐怖映像だ。フレンドコールの着信履歴が、品評会開始数分の内にかかって来た物だけで埋まっていたのだ。スクロールしても同じだ。何も知らなければ嫌がらせを受けているのかと思っただろう。

「それで、申し訳ないんですが今回は飛び入り参加は無しの方向でお願いします。1人オーケーすると、きりが無くなりそうなんで」

「いや、これはしょうがない」

初参加の俺が我儘を言う訳にはいかない。

「すまん。無理だ」

「えー? まじかよー」

「他にも参加希望者がかなりいるみたいでさ。収拾がつかなくなりそうなんだよ」

「はぁー。そうか~……。まあ、仕方ねーなー」

「すまんな」

「いや、無理言って悪かったな。後でランタンカボチャについて少し話を聞かせてほしいんだが、いいか?」

「それはいいけど、タゴサックだって育ててるだろ?」

「俺が収穫できるようになったのはつい先日だからな。育つのに時間もかかるし、収穫量も全然だから情報がないんだよ」

トップファーマーのタゴサックでさえ、ランタンカボチャを育てるのに苦労しているらしい。うちはオルトがいてくれるからな。こういう話を聞くと、改めてモンス達の有難味が分かる。

「しかし、生配信なんてするなら、教えておいてくれればよかったのによ」

「いやー、俺も知らなかったんだよ」

「今頃、お前のフレンド連中は大騒ぎだぜ? アシハナなんか俺との話を切り上げて走って行ったからな。今頃会議室の前にいるかもしれないぜ?」

アシハナはクママ大好きだからなー。

「じゃあ、いきなり悪かったな! また明日な!」

「あ、ああ」

フレンドコールで話したのがサバサバタイプのタゴサックで良かった。他の奴らだったらもっと文句言われたかも……。

品評会が終わった後が怖いが、今は忘れてハーブティーを楽しもう。やや現実逃避気味にフレンドコールの設定も一時オフにしたところで、エリンギとブランシュが再び話しかけてきた。

さっきまでアメリアと何やら話していたはずなんだが、どうしたのだろうか?

「白銀さん」

「実はお願いがあるんですが……」

「お願い?」

「はい。南の地下墳墓のモフフ攻略用の食べ物を譲っていただけませんか?」

「もしかしたら白銀さんが持っているかもと、アメリアが」

アメリアと何を話しているのかと思ったら、南の地下墳墓の話か。色々な攻略情報を交換していたらしい。

「実は、南の地下墳墓の奥までは到達したんですが、モフフの空腹を回復できなかったんです」

「私もなのです」

「ああ~。あれは仕方ないと思うよ」

南の地下墳墓の奥にいたのは、ケダマンを可愛くしたような姿のモフフというNPCだった。まあ、小さな毛玉である。

そのモフフの好物は果物だった。しかも品質★8以上じゃなければいけないようなのだ。俺が偶然持っていた★8の緑桃を食べてくれたのだが、他の緑桃には見向きもしなかったので確実だと思われた。

「ただ、俺ももう持ってないんだよね」

「そうなんですか?」

「変異で1つだけ収穫できただけだったから」

薬草が微炎草に変わったり、白変種に変異したりと、畑の農作物の変異には幾つかパターンがある。その中で、品質が上昇するだけの品質変異というもので奇跡的に収穫できたのが、★8の緑桃であった。何度か経験したことはあるが、果物で★8以上の物は1回しか収穫できたことは無いのだ。

「それは残念です」

「悪い」

「いえ、仕方ないですよ」

本当はフレンドとは仲良くしておきたいんだけどね。さすがに今回は難しいのだ。

俺がエリンギやブランシュと話している最中、うちのモンス達は方々で可愛がられていた。オルトはアメリアにハチミツをもらい、ファウはアスカに野菜スティックを食べさせてもらっている。

ルフレやヒムカ、クママたちも、それぞれのファンが構ってくれているようだ。茶菓子とはぜんぜん関係ない好物をわざわざ出してもらってご満悦である。

サクラとファウが特に人気かな。入手が未だに困難な、樹精、妖精に興味が向くんだろう。特にテイマーたちがチヤホヤしている。

サクラの場合は飲み食いしないので、普通に会話しつつ褒められているだけだが。ナンパされているようにしか見えんな。

「有り難いね」

「何が?」

「いや、みんなうちの子たちを可愛がってくれてるからさ」

「何言ってるのよ! 逆にこっちがありがとうなんだよ!」

「そうですよ。むしろ金を取ってもいいかと」

「払いましょうか!」

アメリアとエリンギとブランシュに猛反論された。いや、さすがに金は取れんだろう。他のテイマーがモンスと遊ばせてお金を取っているなんて話聞いたことがないし。いくら何でも、お金を払ってまで遊びたいか?

「白銀さん……」

「さすが……」