軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

255話 スキルのおかげ?

俺が早耳猫のクランハウスに戻ると、アリッサさんが首を傾げつつ出迎えてくれた。

「あら? もう戻って来たの? もしかしてさっそく聞きつけた?」

「え? 何がです?」

「あら? うちがこれを仕入れたって、聞いたんじゃないの?」

アリッサさんが見せてくれたのは、加重石というアイテムだった。これは鉱石として使うだけではなく、薬の材料にもなるアイテムだ。第6エリアなどに行かなくては手に入らないはずだが、ようやく始まりの町にも出回り始めたらしい。実は、俺もずっと欲しかったのだ。

「欲しいです!」

まさかここで手に入るとは思わなかった。ホクホク顔でお金を払うと、アリッサさんが俺が来た目的を尋ねてくる。

「その様子だと、他に用事があるみたいね」

おっと、そうだった。

「実はちょっと聞きたいことがありまして」

「へえ? 何が聞きたいの?」

「スネコスリって知ってますよね?」

「そりゃあ、当然よ」

「あの妖怪って仲間にした後どうなります?」

「どうなりますって……。図鑑に登録されて、スキルが解放されて、陰陽師なら召喚できるようになるけど……」

「それだけですか?」

俺が再度聞くと、アリッサさんの目が光った気がした。

「つまり、それ以外の何かを発見したってことなのね?」

「これ、見てください」

俺は、うちの畑で茶釜たちと遊ぶスネコスリの映像をアリッサさんに見せた。するとアリッサさんが目を丸くして驚いている。

「……え? ユート君、陰陽師に転職したの?」

「いやいや、テイマーのままですよ。見れば分かるでしょ」

「だよねー」

近くで相手を鑑定すると、職業が分かる。俺の職業はコマンダーテイマーのままである。

「つまり、どういうこと?」

「ついさっき、スネコスリの試練をクリアして仲良くなったんですよ。で、その場では姿が消えて、図鑑に登録っていう、普通の終わり方だったんですね」

そう。何度思い返してみても、あの場で特別なことは起きなかったはずだ。

「でも、畑に帰るとスネコスリが出迎えてくれたというわけです」

「本当に何もしてないの?」

「それがそうなんですよねー」

むしろ俺が聞きたい。俺は草むらでの激闘と、その後の様子を思い出せる限り詳細に語る。

「そっちは関係なさそうね……。となると、畑に何かあるのかしら?」

「でも、畑自体は本当に普通の畑ですよ? 納屋があるだけで。他のファーマーも使ってるでしょ?」

「そうなのよね。可能性としてはホームオブジェクトや、植えている作物に特別な物がある可能性だけど、これは幾つか候補があるわね」

俺の畑にしかないもの? 水臨樹に霊桜の小社、桜もまだ俺しか持ってないかもしれない。

「でも、明確にスネコスリに関係ありそうな物はないわよね~。あえて言うなら霊桜の小社かしら?」

「まあ、妖怪関係のものですから」

とは言え、決め手に欠ける。ホームに妖怪関係のホームオブジェクトやアイテムがあるというのが条件の可能性もあるだろうが。

「あとはスキルという可能性もあるわよ? 妖怪関係のスキルをいくつか持ってるじゃない?」

妖怪知識、妖怪察知、妖怪探索、妖怪懐柔あたりだな。

アリッサさんは何やらステータスウィンドウを開いて目を走らせている。集計データを確認しているようだ。

「妖怪懐柔スキルはユート君しか所持してないわね。怪しいのは妖怪懐柔かしら? 確か、妖怪と仲良くなりやすいっていうスキルだったわよね?」

「そうです。好感度が上昇しやすくなるそうですよ」

「つまり、好感度によってはスネコスリなんかをホームにお招きできる可能性があるわね。ユート君の場合は妖怪懐柔のおかげで初期好感度が高いのかもしれないわ」

なるほど。それは確かに可能性がありそうだ。スキルに好感度と明記してある以上、それが存在しているのは確かなわけだしな。

「妖怪懐柔は多分、ハナミアラシのイベントがキーなのよねぇ。だとするとそっちを狙うよりは、妖怪の好感度上昇を試すべきかしら……。でも早急に検証したいわね。この情報と引き換えに陰陽師たちに協力させれば……。そもそもスネコスリの試練を何度も周回すれば好感度が上がる? これはくすぐられのための生贄を……。それとも、クエストをやりきることが必要なのかしら?」

アリッサさんは検証の仕方を考えているようだ。結局、妖怪懐柔が怪しいって事しかわからなかった。

「役に立たなくてごめんなさいね」

「いえ、色々とためになりましたから」

「ただ、この情報は売れるわよ。だって、テイマーでも陰陽師でもないプレイヤーが、可愛いペットを手に入れるチャンスだもの。だからきっと売れるわ……。はぁ、資金が……」

売れると言いつつ、アリッサさんは何故か溜息をついている。支払われた情報料は5万Gだった。

「5万Gか……」

スネコスリをホームに招く方法が判明していないにもかかわらず、5万Gというのが高額なのは分かる。でも、やっぱり精霊門や地下ダンジョンの情報を売った時の記憶が残っているのだ。どうしてもその程度と感じてしまう。

その呟きをアリッサさんに聞かれたらしい。涙目で睨まれた。

俺、今すっごい嫌な奴じゃないか? そもそも、初期は3000Gでも「大金だ~」って喜んでたのに……。いかん。いかんぞ。初心に戻らないと。もっと謙虚にいこう。なに調子に乗っているんだよ、俺!

「あの、すいませんでした!」

「え? なんで謝ってるの?」

「いえ俺が悪かったです!」

「あ、ちょ――」

俺はアリッサさんに謝ると、店を飛び出した。ここで頭を下げ続けていたって迷惑なだけだ。お詫びの気持ちは、何かいい情報を持ってくることで示そう!

俺は取りあえず畑に戻って来た。情報をゲットと考えた時に、まだスネコスリに試していないことがあると思い出したからだ。

「スネー」

「スネコスリ、お前は何か食事が必要か?」

「スネ?」

妖怪にも好感度があるというのなら、上げる方法があるはずだ。ハナミアラシやチャガマはお供え物を毎日しているが、スネコスリの場合はどうなんだろう?

「それともお供えか?」

「スネ?」

うむ、可愛い。いや、違う。やはりこの手のことは本人に聞いても分からないか。

俺はオバケの好物を探した時と同じように、所持しているありったけの食べ物をその場に並べることにした。

大量の料理などが並ぶ中からスネコスリが選んだのは浄化水だった。コップに入った水に顔面を突っ込んでチューチュー飲んでいる。猫っぽいが、水の飲み方は全然違うらしい。

「スーネー♪」

井戸水ではなく浄化水を選んだってことは、ランクが高い水が好きってことなんだろう。さて、チャガマやハナミアラシはお返しがあるんだが、スネコスリはどうだろう?

「スネ?」

見ていると、スネコスリと目が合う。円らな瞳で見上げてくるスネコスリ。そのまま数秒間見つめ合っていたが、すぐにスネコスリは飽きてどこかに行ってしまった。

「お返しはなしか」

水くらいならいくらでもあるし、いいんだけどさ。それとも好感度を上げて行けば、何か変化があるのだろうか?

「まあ、地道に検証して行こう。ステータスの回復にはもう少しかかるし、残りは生産をして過ごすぞー」

その後俺は、料理やポーション類を色々と作ることにした。一番の収穫は、新たな品種改良の作物を作れたことだろう。

花見の時にファーマーからその作り方を仕入れてはいたんだが、ようやく作れたのだ。毒薬、麻痺薬、睡眠薬、加重薬の4種類が必要なんだが、さっきようやく加重石から加重薬を作ることが出来た。

4種類の薬を混ぜ合わせると、謎の種が生み出される。まだこれを育て切った人はいないそうだ。今からどんな作物に育つのか、楽しみだね。