軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

244話 オバケの好物

グギュルルル~!

「バ、バケケ~……」

部屋の中央で、白い布風のオバケが空腹で行き倒れていた。その目は、縋りつくように俺を見上げている。

NPCだし、敵ではないだろう。あと、妖怪でもないらしい。妖怪探知に反応がない。

「バケ……」

助けてやりたい気持ちはあるが、どうすりゃいいんだ? そもそもオバケって食事をするのだろうか? 霊体なのに?

「精気でも吸わせりゃいいのか?」

「バケ……」

違うらしい。微かに首を振ったのが分かった。顔が胴体みたいなものだから、全身を左右に揺する感じだが。

「じゃあ、普通に食事をするのか?」

「バケ……」

今度は明らかにうなずいた。まじか、食事をするのか。いや、幽霊ではなくオバケ。ここは別物として考えなくてはいけないだろう。

「オバケの好物って何だ……?」

Qちゃんは白米好きだったっけ? いやチョコレートだったか? どちらにせよ所持していないが。

「ルフレは分からないよな?」

「フムー?」

俺の質問に首をかしげるルフレ。だよねー。

考えても分からないので、手持ちの食べ物を片っ端から並べることにした。

肉料理や魚料理、飲み物や甘味。それだけではなく、素材を好むことも考えて生肉に鮮魚、野菜にハーブ等、食用にできそうなものを片っ端だ。

自分で思っていた以上にインベントリに色々入っていたな。オバケの周囲を囲むように、何十種類もの食べ物が置かれている。なにか儀式でも始まりそうだ。

「どうだ? 食べたいものがあるか?」

「バ、バケケ……」

首を横に振るオバケ。なに? これでもダメなの? まてよ、他に何かなかったっけ?

こうなったら、そのままでは食べられない物も全部出してしまおう。食用草や雑草扱いのハーブたち。さらに薬草や水なども全部だ。

すると、オバケがそのちっちゃい手をそっと伸ばす。なにか気を引くものがあったらしい。そして手に取ったのは、真っ白な毒茸であった。

「あ、やべ!」

赤テング茸・白変種だ。他のアイテムに混じって、間違えて置いてしまったらしい。だが、俺が取り上げる間もなく、オバケはその真っ白な傘に青い斑点の付いた毒々しいキノコを口に入れてしまったのだった。

「ちょ、それ毒キノコ!」

「バケ?」

オバケは毒など意に介することなく、赤テング茸・白変種をモグモグと咀嚼している。

「お、おい。大丈夫なのか?」

「バケ!」

問題なかったらしい。茸を食べたオバケは途端に元気を取り戻し、体を起こした。そしてオバケは素早い動きで立ち上がる――のではなく宙にフワーッと浮かび上がる。

上下左右にフワフワ動きながら手をバタバタさせているな。どうも喜んでいるようだ。

「バケバケ!」

オバケはダンスする様にクルクルと回転しながら、フワフワと俺の周りを飛んでいる。楽しそうだ。その雰囲気に当てられたのか、ファウやオルト達まで踊り始めたな。

「ラランラ~♪」

「ムムー!」

「フムー!」

「クマー!」

「バケケ~!」

さて、これからどうなるか。友好的に接触できたし、戦闘にはならないと思うが……。

次にどうすればいいのか分からず踊るうちの子たちとオバケを見ていたら、ある程度で満足したらしい。オバケが俺の前でその動きを止めた。まあ、上下にフワフワと揺れているけど。

オバケは何やら手を布の下に突っ込んでゴソゴソし始めた。そして、取り出した何かを俺に差し出してくる。

「バケ!」

「うーん……なんだこれ?」

ヒビの入った小汚いビー玉だ。その名前もひび割れたビー玉。譲渡売却不可となっているので、イベント関係のアイテムであるようだ。

「えーっと、これをくれるのか?」

「バケ!」

俺の問いにオバケは大きく頷く。これが助けた報酬ってことらしい。

「これの使い道は――」

「バケー!」

これをどうすればいいのか聞こうと思ったんだが、オバケはこちらに軽く手を振ると、ポンと言う音を残して姿を消してしまう。え? これでイベント終了ってこと?

「えーっと、これどういうことだ?」

手元に残った謎のアイテムを見つめるが、使い道は分からない。

「ちょっと調べてみようかな」

軽く掲示板などを検索してみるが、普通のビー玉の情報しか出てこない。レッサー・ゴーストのドロップであるビー玉なら、俺もそこそこ所持している。ただ、イベントアイテムであるひび割れたビー玉の情報は見つけられなかった。

他にもオバケなどについても検索するが、こちらも特に有用な情報はない。しかし、1つだけ興味を惹かれる情報があった。

「東の町でも隠し通路が発見されてたのか。発見者は浜風……。へえ、この人スネコスリも発見してるのか! 凄いな!」

今俺たちがいる西の町ではなく、東の町でも地下通路が発見されたらしい。ただそこにいたのはオバケではなく、コガッパという妖怪がいたらしい。ここと同じ様に行き倒れていたと書き込まれている。

しかしコガッパに食べさせられるようなアイテムは所持しておらず、イベントが進められなかったと書いてあった。

「隠し通路に入る方法も書いてあるな」

一度確認しに行ってみるのもいいかもしれない。それに、西と東に隠し通路があったということは、北と南にも何かあるんじゃないか?

「これは、探してみる価値があるかもしれないぞ」

もともと第3エリアの町を歩く予定だったわけだし、一石二鳥と思っておこう。

明日はどこかの精霊の試練の攻略をするつもりだったが、第3エリアの探索を優先することにした。お金や経験値を稼ぐにはダンジョンに潜る方がいいんだが、やはり新しい発見の魅力にはかなわないのだ。それに、どうせ俺たちの戦力じゃダンジョンを完全攻略するのはまだ無理だしな。

「よーし! みんな、一旦上に戻るぞー」

「ムム!」

因みに、降りる時は滑り降りたドリモだったけど、登る時はメチャクチャ大変でした。皆で引っ張りつつ下から持ち上げて、ようやく梯子を登れていた。

まあ、いつも格好つけてるドリモの格好悪いところが見れて、ホッコリしたけどね!