軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

189話 花見の始まり

色々な人をお花見に誘ったはいいが、想定を大きく上回る人数が集まってしまった。まさか50人を超えてしまうとは……。

「暇人ばっかなのか?」

俺の呟きを聞いたアリッサさんが、何故か呆れた様な顔をしている。

「本気で言ってるわねー。それよりも、この人数が飲み食いできる?」

「きついですね」

納屋の前と、畑4面を開けてあるんだが、足りないかもしれない。いや、待てよ、遮光畑の上のスペースは使えるな。あそこは何も植わってないし。後はもう、なんとか上手く収まってもらうしかないな。ゴザは敷いたし、座椅子もある。何とかなるだろう。

「よう、花見の場所はここか?」

「あ、待ってましたよ。どうぞこちらへ」

最後にやってきたのはスコップ、ライバ、ピスコらNPCさんたちである。時間ピッタリに来る当たり、さすがAIだな。

ただ、見たことが無い女性と男性を1人ずつ伴っている。

「そちらの方々は?」

尋ねると、スコップが2人を紹介してくれた。

「こっちが俺の娘でバルゴ。こっちがライバの息子でリオンだ」

「よろしくお願いします」

「こんにちは」

まあ、今更1人2人増えたところで大してかわりはない。俺は2人と握手をしつつ、桜の前の一番いい場所に案内した。何せ今日の主賓だからな。

「ゴザとテーブルがありますがどっちがいいですか?」

「こういう時は、地べたに直接座るに限るだろう」

「そうだぜ」

「ゴザがいいな」

スコップたちが口々に言う。皆さん分かってるね。俺は彼らを桜の樹の目の前に案内すると、プレイヤーたちに声をかけた。

「えーと、皆さん! お客さんも到着されましたので、お花見を始めたいと思います!」

俺の言葉を聞いたプレイヤーたちが、一斉に納屋の前に集まって来た。乾杯のために飲み物を確保しておくように言っておいたおかげで、全員手にコップを持っているな。

50人以上もいるから壮観だ。というか、よくうちの畑に入ったな。まずはアリッサさんからの注意事項だ。アリッサさんが、最初に注意をしっかりしておく方が良いと言って、その役を買って出てくれたのである。

皆の視線がアリッサさんに集中するが、堂々とした態度を崩さない。大きなクランのサブマスをやっているだけあるな。こういった事に慣れているのかもしれない。

「最初に注意事項を。スクショを撮るのは構いませんが、許可を得ずに掲示板にアップしたりしないように! こんなことでGMコールされるのは嫌でしょう? 特にモンスのスクショに関しては、主の許可を忘れないこと」

「「「はーい」」」

「場所を提供してくれたユートくんに感謝する事! 畑への悪戯は厳禁です!」

「「「はーい」」」

「あと、酒の席だと言っても当然セクハラは禁止よ。何人か危なそうなのがいるけど――」

何人かと言いつつ、アリッサさんの視線はスケガワとオイレンに向いていた。

「失敬な! セクハラなんかするか!」

「そうだそうだ!」

2人も自分たちが注意されたと分かったのか、抗議の声を上げる。だが、アリッサは冷静だった。

「言っておくけど、直接触ったりしなくても、嫌がる相手に下ネタを言ったりするのもセクハラだから? エロについて熱く語るとか。女性型モンスの造形について意見を求めるとかも、人によってはアウトよ?」

「……はい」

「わかりました……」

こいつら分かってなかったか。最初に注意できてよかった。

「では、ユート君、後はよろしく」

「はい。わかりました。えー、本日は――」

「おいおい、お約束はいいんだよ!」

「そうそう。早く乾杯しましょうよ!」

「むう」

くそ。一応、きっちりやった方が良いかと思って、挨拶を考えておいたのに! まあ、俺も待つ側にいたら、皆と同じこと考えただろうけどね。そもそも、皆が目の前の料理に目が釘付けだった。早く喰いたいんだろう。

「お日柄も良く乾杯!」

「「「「「乾杯!」」」」」

俺の乾杯の言葉に続いて、皆が同時に叫ぶ。コップを打ち鳴らし合うコチンという音が響き、続いて「くはー!」という歓声が聞こえた。

「うめー! なんだこの酒!」

「ジュースも最高!」

「ええ? この世界のジュースってこんなにおいしいの?」

「し、知らなかった……」

「この酒うまー!」

続いて全員の手が料理に延びる。

「おいおい、この串焼き、醤油味じゃねーか!」

「こ、このキャベツに味噌を付けただけのつまみが最高!」

「このクッキーなんなの! 携帯食と全然違う!」

「ピ、ピザだ! 噂のピザがある!」

おおむね好評な様だ。半分ほどを作ったふーかたちも、嬉しそうに見ている。ただ確保しないと自分たちの食べる分が無くなっちゃうよ?

「ああ、皆さん。こちらをどうぞ」

「お、美味そうだな」

「いやー、いい宴だな」

煩く思っていないかと心配だったが、NPCにもこの宴会は好評だったらしい。渡した焼き鳥を美味しそうに食べてくれている。

「美味い酒に、美味い飯! そして美しい桜! これ以上の花見はないぞ!」

「そうそう」

スコップの叫び声が聞こえたのだろう。飯に夢中だった皆が、改めて満開の桜の木を見上げた。そして、一瞬の静寂とともに、「ほ~っ」という感嘆のため息が漏れる。

「いやー、ゲームの中の桜も乙な物だよな」

「確かに綺麗だわ」

「俺、来年の春はリアルで花見しよう」

やっぱみんな日本人だよな。まあ、この先プレイヤーが増えて外人プレイヤーが参入して来たら、また違う感動があるのかもしれないけど。

ただ、静かに桜を眺めていたのもほんの数分のことであった。やはり人が集まって宴会をしていれば、静かになどしていられないのだろう。

酒を飲みながら真面目な攻略論を交わし合う者たち。モンスを熱い目で見つめる集団。料理についてふーかたちに質問する者たちなど、どこもかしこも仲が良くて、主催者としては嬉しい限りだよ。

「さて、俺もどっかにまざろうかね?」