軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

171話 楽園への鍵

俺が土霊門から外に出ると、複数のパーティから一斉に注目された。

「おい、白銀さんだ」

「やっぱ白銀さんだったか」

「そりゃあ、白銀さんだからな」

「なあ、土結晶余ってないか、聞いてみようぜ?」

どうやらアリッサさんから情報を買ったパーティらしい。土霊門に入らないところを見ると、土結晶を持っていないんだろう。場所だけでも確認に来たのかね?

そう思っていると、複数のプレイヤーにあっと言う間に囲まれてしまった。ただ、悪意や怒りの様な物は感じられない。むしろ全員がメチャクチャ腰が低かった。

「あのー、白銀さんですよね?」

「え? はいそうですけど」

「土結晶をお持ちじゃないですか?」

やはり土霊門の情報を買ったプレイヤーたちだった。ただ、土結晶はもうアメリアに渡す約束だ。なので彼らには知人に譲る約束をしていると言って断るしかなかった。それ以上は粘ることもなく、肩を落として散っていくプレイヤーたち。

可哀想そうだけど、仕方ないよね。俺は悪くないのに妙な居心地の悪さを感じていると、遠くから呼びかけてくる声が聞こえた。

「白銀さーん!」

「おお、アメリア! よく来てくれた!」

「ええ? 何故かメチャクチャ歓迎された!」

ちょうどアメリアが到着したのだ。思わず手を握ってブンブン振ってしまったぜ。アメリアはその手の事を気にしない奴だから良かったが、他の女性プレイヤーにこれをやったら通報されるかもしれん。気を付けないと。

「お待たせしました?」

「いや、今出てきたところだから」

「良かった!」

「彼らは一緒に入るメンバーなのか?」

「はい。テイマー仲間なんです」

今日はモンスは一緒ではなく、プレイヤー3人と共に4人パーティを組んでいる。その内の1人には見覚えがあった。

「久しぶりだなイワン」

「お久しぶりです」

「イワンとアメリアは知り合いだったのか?」

「テイマー界は狭いもん」

「掲示板でもお互いに知ってますし、テイマー同士の情報交換会とかもありますから」

なるほど。テイムスキル取得者は結構いるが、純粋な職業テイマーは少ないからな。横のつながりがあるってことなのだろう。俺は情報交換会とやらには誘われてないけどね!

いや、俺は掲示板とかあまり見ないし、そもそもテイマーの知り合いも少ない。それにテイマーだけど、テイマーっぽくないし、誘ってもらえないのも当然か? ちょっと拗ねていたら、イワンが心を読んだのかと思うほど、タイミングよく口を開いた。

「次回はぜひ白銀さんも参加してみません?」

「いいのか?」

「勿論です。前回の情報交換会の時は、白銀さんの連絡先を知ってるテイマーがいなかったのでお誘いできませんでしたからね」

「今度は連絡するから!」

どうやら誘ってもらえなかったのではなく、単純に俺に連絡を取る手段が無かったかららしい。うんうん、絶対に参加しますとも。

次に、妙齢の女性がペコリと頭を下げる。黒髪の美人系テイマーだ。

「初めまして、ウルスラと言いま~す」

結構際どめの、へそや体のラインがハッキリと見える装備を身に着けている。悪の組織の女幹部風ボンテージファッションだ。しかも装備は鞭である。ある意味、魔物使いとしてはデフォルトのファッションなのかもしれないな。ただ、ちょっと目のやり場に困る。マントを付けていてくれて助かった。

しかもメチャクチャ明るい。軽いと言ってもいいかもしれない。ニパッと笑い、俺にヒラヒラと手を振って来た。「おーほほほほ」的な高飛車笑いが似合いそうなウルスラにそんな態度を取られると戸惑ってしまう。ギャップが凄まじいのだ。

「お、おう。ユートだ」

「おいおい。ウルスラちゃん。白銀さんが戸惑ってるぜ? その恰好はやっぱり刺激が強すぎるんだよ」

「格好いいでしょ? 魔物使いっぽいし」

「まあ、本人が構わないんならいいけどさ。こっちは迷惑かけられてる訳じゃないし……。むしろ眼福だし。さて、こんにちは。俺はオイレンシュピーゲルって言います。気軽にオイレンて呼んでくれると嬉しいっす」

オイレンシュピーゲルは、青い髪の青年だった。種族はハーフエルフだ。こいつも美形なんだが、その王子さまっぽい恰好とは裏腹に、妙に仕草が軽くてチャラい。

「はー。白銀さん。まじ羨ましいっすね」

「何が?」

「樹精ちゃんにウンディーネちゃんにピクシーちゃん! 可愛いモンスばかりじゃないっすか! 俺も女の子型のモンスが欲しい!」

欲望に忠実な奴だと言うのは分かった。ただ、その口調に嫌らしいところは感じさせない。アイドルとか可愛いキャラクターに対する憧れみたいなものなのかもしれないな。

「ここは土霊門だから、中でテイムできるのはノームだけど、いいのか?」

「はい。樹精ちゃんを手に入れるためには、ノームの力が必要ですから!」

欲望に忠実かつ、そのための努力を惜しまない男であるらしい。まあ、嫌いではないよ?

俺はウルスラ、オイレンシュピーゲルともフレンドコードを交換することにした。いやー、テイマー仲間が増えたね。

「じゃあ、早速例のブツを売ってもらっていいですか?」

アメリアがそう言ってニヤリと笑う。こういうノリは嫌いじゃないよ?

「ふふふ。これの事かね?」

「そうそう! 良い色してますね~」

「末端価格10万Gは下らない純度100パーセントの土結晶だからな」

「こ、これさえあれば……。はぁはぁ」

「そ、それが楽園への鍵なのね……はぁはぁ」

オイレンとイワンの視線が冷たい。まあ、ちょっとアメリアとウルスラの目が本気っぽいのは確かだけど。息の荒さも演技じゃなさそうだし。

そんなやり取りの後、俺が土結晶をアメリアに送る。それを確認すると、アメリアたちからそれぞれ3万Gが送られて来た。また大金が手に入ってしまった。

「これで中に入れるのね……うふふふふ」

「ついに来たわね! くふふ! ノーム捜索隊の悲願がついに達成されるわ!」

アメリアとウルスラのテンションはマックスだ。それにしてもノーム捜索隊? そんな物があるのか? イワンたちに尋ねてみる。

「なあ、ノーム捜索隊って何だ?」

「ああ、その名の通り、ノームを探すための集まりですよ」

「白銀さんのノームの可愛さに魅せられた女性テイマーが中心ですね」

「え? うちのオルトが切っ掛け?」

「それはそうですよ。どんだけファンがいると思ってるんですか」

そんな呆れた目で見るなよオイレン。彼が言うには、人型のモンスはノーム、ウンディーネ、樹精、ピクシー以外にはあまり可愛くないゴブリンなど数種類しか見つかっておらず、うちの子たちはかなり注目されているんだとか。

ただ、今後は精霊門が順次開かれて、ノーム、ウンディーネが増えるだろう。どうやら火霊も男性型のモンスであるらしいし、この流れなら風霊は女性型のモンスだと思われる。

今はともかく、1週間もすればそこまで目立たなくなるだろう。テイマーだけではなく、テイムスキル持ちの生産職などもテイムしに来るだろうしね。

「じゃあ、行くわよ皆!」

「ええ!」

テンションマックスのアメリアとウルスラによって、土霊門が開かれる。周囲のプレイヤーにもそのエフェクトは見えているらしい。どよめいている。

「おお! これが解放演出か! すげー!」

「ああ! スクショ忘れた!」

オイレンもイワンも目を輝かせて土霊門を見つめている。さて、折角知り合ったんだし、中を案内でもしてやるかね。