軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

112話 撮影会

「さて、この後どうしよう……」

このままずっと黒い柱を見ててもな……。そもそも今後どうなるかもわからない。グラシャラボラス(仮)の変態が、あと何時間もかかる可能性だってあるのだ。

どうせいろんな人があれを監視してるだろうし、大きな変化があれば分かるだろう。とは言え、釣りのために村の外に出るのは怖い。どんな異変が起きているかもわからないし。

と言う事で、村の中で何かできないかと考え、畑にまく水などを溜めている池に向かう事にした。25メートルプールくらいの大きさはあるし、周囲には色々な水草や植物なども生えている。人工の池とは言え、魚が居てもおかしくはないだろう。

まあ魚を目撃したという訳ではないから、釣れるかどうかは分からないが。だが、広場で釣りスキルを持っていると言うプレイヤーに教えてもらったんだが、魚が釣れなくても水に向かって釣り糸を垂れているだけでも熟練度が上がるらしい。なので、釣れずとも釣りスキルのレベリングにはなるのだ。

上手く魚が手に入ったら、また豚汁が作れるし、ボス戦の一助にはなる。

そう思ってため池に向かおうとした俺だったが、急に8人の女性プレイヤーに取り囲まれていた。

「白銀さん!」

「は、はい?」

メチャクチャ怖い顔をしてるから少し身構えてしまったが、別に文句を言いに来たとかではなかった様だ。

「約束を果たしてもらうわよ!」

「え? 約束?」

「ボスクマと戦って死んだら、スクショ撮らせてもらう約束だったじゃない!」

「そうそう! 私達、盛大に死に戻ったんだからね!」

彼女たちはジークフリードと一緒にガーディアン・ベアに挑んで、死に戻ったパーティらしかった。怖い顔をしていたのは、うちの子たちのスクショが撮れることに興奮していたせいだったらしい。

「なるほど……」

「イベントも終盤だし」

「そうそう。イベントが終わっちゃう前に、スクショを撮らせてもらわないと」

このイベントが終わったら、元居た場所に戻される。始まりの町周辺に居れば俺に会いに来ることは難しくないだろうが、離れていると面倒だよな。

「なるほど。いいぞ」

「ありがとう!」

女性プレイヤーたちから歓声が上がる。興奮のあまり、小躍りをしている者までいた。その光景にちょっと引いちゃったよ。

「で、どの子をご指名なんだ? うちの子はみんな可愛いぞ?」

何か今の言い方、ちょっといかがわしかったか? いやいや、気のせいだろう。

女性プレイヤーたちの顔がエロ親父みたいにニヤケているが、気にしたら負けだ。

「私はノームちゃんで!」

「ク、クママたん!」

「う、うちはリックちゃんで!」

「オルトちゃんハァハァ……」

ま、まあ、サクラ以外はまんべんなくって感じか。

「わ、分かったから、息を荒らげるなって!」

「はぁはぁ、ごめんなさい。ちょっと興奮しちゃって」

最初はオルトが良いって言ってたプレイヤーだな。彼女は既にどんなスクショを撮るか決めているらしい。

「こっちきてね~」

「ム?」

オルトがついて行っていいか、聞くかのように俺を見上げる。

「ああ、少し付き合ってやってくれ」

「ムム!」

「ささ、こっちこっち」

うーん。デレデレした顔で手招きしながらオルトを呼ぶ女性プレイヤーは、かなり怪しいな。ちょっと変質者チックですらある。オルトが不安になるのも分かるぜ。

女性はそのまま村の一角にある花畑にオルトを案内すると、そこで体育座りをさせる。その後も、手の位置やら首の角度やらを色々調整し、20分ほどかけてようやくスクショを撮ったのだった。

「きゃぁ! 最高の一枚よ!」

見せてもらうと、物憂げな表情で体育座りをしながら、膝に頬を乗せてカメラ目線のオルトという、妙に色気のあるスクショだ。バックでは花畑の花弁が風で舞い上がり、まるで写真集の様な一枚だな。

まあ、一枚っていう約束だから、その一枚に全身全霊を込めているんだろう。思った通りの絵が撮れてニヤニヤしっぱなしだ。

「ねえ白銀さん、このスクショ、掲示板に上げてもいい?」

「いや、それは勘弁してくれ。うちの子たちのファンとやらがどれくらい居るかは分からんが、押しかけられても困るし」

何百人も来るようなことはさすがにないだろうが、20人くらいでもう面倒だ。

「ちぇ~、皆に自慢したかったのに~」

「知人に見せたりするのは良いけど、俺のところに押しかけない様にきっちり言っておいてくれよ?」

「そこは任せて! オルトちゃんの迷惑になるような真似は絶対にしないから!」

ならいいけど。むしろ人気があるなら、1枚1000Gくらいでスクショを撮らせてあげたらかなり儲かるんじゃ……。お金に困った時にまた考えよう。

「次はわたしですね!」

「え~と、クママがいいんだっけ?」

「そうよ! さあクママたん、こっちいきまちょうね~」

「うわ~」

思わず声が出ちゃった。いや、クママはまるでヌイグルミみたいだし、赤ちゃん言葉になっちゃうのも分からなくもないけどさ……。

大勢の前で恥ずかしげもなく赤ちゃん言葉を使うくらい、クママの魔力が凄まじいってことなんだろうか?

というか、俺以外の女性たちはその赤ちゃん言葉をおかしいとは思っていないみたいだった。むしろ推奨? そんな雰囲気だ。

「はい、しょこでしゃがんでくだしゃ~い」

もしこの後も赤ちゃん言葉のプレイヤーが続いたら、俺の精神が持たないかもしれん。

その後、俺の嫌な予感は的中し、半数以上が赤ちゃん言葉であった。全員のスクショを撮り終わり、ようやくため池に向かう頃には俺もモンスたちも、もうぐったりだ。

「疲れたな……」

「ム……」

「クマー……」

「キュ~……」

珍しく、1人だけ元気なサクラが俺たちを先導して歩いている。