軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

111話 黒い柱

樹海の向こうから立ち上る黒い霧の様な物で出来た柱。

考えてみたら、さっき話に出てた黒い靄に包まれたモンスターが未だに出没するエリアって、あっちじゃなかったか? 嫌な予感しかしないよ!

「ガオォォォォ!」

「うわっ!」

「ムムー!」

「キュー!」

「クマー!」

何やら獣の唸り声の様な重低音が響き渡った。そのおどろおどろしい叫びを聞いて、うちの子たちは怯えているぞ。平気なのはしがみ付かれているサクラくらいだな。

「あの柱、なんか動いてるか……?」

しばらく見ていたら、柱がユラユラと蠢き出した。そして、次第に内から大きく盛り上がっていく。止まることなくモコモコと動き続ける柱。

「白銀さん! あれやばくない?」

「マルカか。何かしらのイベントだろうな」

「コクテンさんたちと相談して、ちょっと皆で様子を見てくることにしたの。白銀さんはどうする?」

「いやいや、さっきも言ったけど、俺には無理だって。任せるよ」

「ユートくんはやはり行かないかい?」

「ジークフリード。俺が行っても足手まといになるだけだって」

「そうかい? ユートくんは、単なる戦闘力以外の部分で何かやってくれそうな期待感があるから、ぜひ同行してくれたら有り難いんだけどね?」

「ムリムリ。無理だから」

「はは、分かった諦めるよ」

「ええ~」

「ほら、マルカくんも諦めたまえ」

「ちぇっ」

そんな話をしている時だった。

『イベント5日目の12:00になりました。中間結果を発表いたします』

おっと、中間発表の時間か。マルカもメールを開いているし、俺も早速メールを開いてみる。

「個人のランキングは……やっぱり少し下がったな」

昨日は46位だった順位が、66位に下がっていた。お婆さんの畑で100ポイントも稼げるとは言え、最前線で戦っている人たちの稼ぎ出すポイントには負けるってことだろう。

「白銀さんは何位?」

「俺は66位だな。マルカは?」

「私は22位!」

さすがに俺よりは上か。だが、俺は全く落ち込んではいなかった。だって、元々個人ランキングは捨てていたんだ。66位だって棚ボタ過ぎるだろう。

「白銀さん、相変わらず貢献度が1位だね~。すごい! 私なんて12位だよ」

「でも、なんで俺なんだろうな? コクテンたちもマルカたちもボスは倒してるし、もっと順位が上でも良いと思うんだが」

「これは多分、村の人との仲の良さが影響してるんじゃないかって言われてるね」

「そうなのか?」

「だって、10位以内はジークフリードさんとか、スケガワさんとか、NPCと交流があるプレイヤーばかりだから」

「スケガワも?」

「うん。村の鍛冶屋に泊まり込みで、色々作ってるって言ってた」

もしかしてこのサーバー貢献度って、俺が思ってたのとは違うのか? サーバーのイベント進行度や、サーバー順位に貢献した目安じゃなくて、サーバーの人や村に貢献した度合い? 一応、迷子のリッケたちを見つけたりしたし、畑を手伝ったりもしている。

「でも、他の人は村の人間との交流をしてないのか?」

「そうなんだよね。まあ、サーバー貢献度にNPCとの仲の良さが必要だって分かってから皆挨拶なんかはするようになったけど、戦闘職にはハードル高いんだよね」

生産系の技能が無いと、村の人々を手伝ったりも難しい。荷物持ち等の仕事はあるものの、それを積極的にこなすのは流石に面倒くさい様だった。

なので、ほとんどのプレイヤーはギルドでの依頼などでのポイント稼ぎに終始しているらしい。

「あ!」

「ど、どうした?」

「サーバー順位! 1位に上がってる!」

慌ててメールを進めてみると、マルカの言う通り、サーバー順位が念願の1位となっていた。貢献度1位も嬉しいが、こっちの方が嬉しいね。

「やったね!」

「ああ。イベントが一番進行してるってことだろうな」

「うん! この順位を守るためにも、次のイベントもしっかりこなさないとね!」

そう言って、マルカは黒い柱に目をやる。その眼にはやる気が満ちていた。

「じゃあ、行ってきます!」

「頑張れよ」

「クママちゃんバイバイ!」

「クックマー!」

「あ~ん! 可愛い! クママちゃんの応援があればあと100年闘えるわ!」

だんだんキャラが壊れて来たな。悶えるマルカは仲間に引きずられながら、偵察へと旅立っていった。

出来れば柱のふもとまで、無理なら出来るだけ近づいて情報を収集するらしい。無事戻って来てくれればいいけど……。

10分後。

黒い柱は未だに蠢き続けている。

クママとリックは足元でお昼寝中だ。丸くなっているクママの上で、リックがさらに丸くなっている。

「ガオオオオオオォォォォォォォッ!」

「おお?」

何度目か分からない唸り声。いやここまで大きいともう咆哮か? ただ、今回は特にデカかったな。ちょっと驚いたぞ。

「ムッムー!」

オルトも驚いた様で、俺の足にしがみ付いて怯えている。いつもは冷静なサクラも、俺のローブの裾をキュッと握っていた。さすがに今のは怖かったらしい。

その特大の咆哮の直後、黒い柱の動きが一段と激しくなった。遠目からでも、その表面が泡立つように蠢き、何やら突起の様な物が生えて来た。

生物の腕っぽいか? 上の方は何かの頭のようにも見える。いや、見間違いじゃない。黒い霧の柱は――もう柱とも言えないか。すでに黒い彫像のように見えるな。明らかに人型を模し始めていた。

さすがに遠すぎるので、鑑定は出来ないが、中ボスとして戦ったグラシャラボラスの使徒に似ている気がする。

「あれがグラシャラボラスなのか?」

いやいや、デカすぎるだろ。だって、樹海の木々の3倍近い高さだぞ? あんなのと戦う? 勝てるわけがない。

「考え過ぎだよな?」

だが、俺の想いも虚しく、事態はガンガン進行し続けていた。

さらに10分ほど経過すると、元黒い柱は完全に変態を終える。

「うーん、絶対に悪魔関連だよな~。グラシャラボラスの使徒が変身する前の姿にそっくりだもんな~」

コールタールの様な、真っ黒でマットな質感の肌のマッチョメンだ。角が羊の様な巻角ではなく、まるでドラゴンの様な、後方に張り出す左右2本ずつの4本角であることと、遥かに巨大であることを除けばグラシャラボラスの使徒と同じだ。まあ、その巨大さが一番の問題であるわけだが。

「……まあ、コクテンたちが何とかしてくれるよな?」

俺にできるのはみんなの活躍を祈るだけだった。だって、あんなのと戦えるわけないし。いや、補助できることがあればするけどね。