軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

04.転生王子、護衛を叱る

ボクとメリエルはまずはベディをお風呂に連れて行った。

ボクと母様が住む棟は、下の階には使用人が住んでいて王族用のお風呂と使用人用のがあるんだけど、ボクと母様しか使っていないし空いているので上のお風呂にした。こっちの方が人がいないし、道具がそろってるしね。

「よ~し、キレイにするぞ~!」

「は!?え!?いや、水場で自分で洗ってくるんで……!」

「ダメダメ!お湯じゃないとベディの小汚さは取れないよ!」

濡れないように腕まくりをするボクとメリエルに、一人裸に剥かれたベディが焦っているが、チャチャっと済ませちゃおう。他にもやらなきゃいけない事いっぱいあるしね。

あ、一応腰布1枚だけは許してるよ。

「せめて自分で……っ!」

「あなたお一人でこの湯場を使う事は許されません。バレない内に終わらせたいので、大人しくしといてくださいませ」

そうそう、王族用のお風呂で使用人を洗ったなんてバレたら怒られちゃうんだから。

メリエルが容赦なくお湯をぶっかけたので、ボクは髪用の香油をベディの頭に付けてワシャワシャしてみる。しかし、ベディの髪は固くて太くて、ちっともしっとりしない。

「む~ダメかぁ……。そうだ!アレを使おう!」

「リエト様、それは奥様が海外から取り寄せた高級シャンプーですよ」

「うん!ちょっと位バレないよ。てゆーか、ベディに普通の香油じゃ無理だもん、ひつようけいひってやつだよ」

「や、やめてくださ……っ! ヒイッ!甘い匂いがする!!」

5才の王子と14才のメイドに全身を洗われた立派な体格の護衛兼毒見係は、すっかりピカピカで良い匂いがする様になっていた。

「鍛錬より疲れた……」

ぐったりするベディには構わず、棟付きの執事に新しいシャツと下着を用意してもらう。これで真新しい防具ともつり合いが取れるだろう。ちょっとあの防具も間に合わせ感すごかったから、そのうち変えたいけどね。

「ベディ、おヒゲは自分で剃れる?」

「……剃らなきゃいけないんスか」

「当たり前だよ。え?もしかして似合ってると思ってる?全然だよ?」

「メイドもだけど坊ちゃんも口悪くねぇですかい?」

悪くないよ。ボクはきちんと事実をお伝えしてるだけだもん。

「ベディの部族ではおヒゲは大事?」

そういう文化があるのかは確認は必要だよね。

「大事……と言うか、立派な髭は強さの象徴でもありやす……」

そうなんだ!聞いておいて良かった。でも……

「りっぱなおヒゲに意味があるなら、ベディのおヒゲは小汚いだけだから剃ろうね!」

「全くでございます。大事ならば整えれば良いでしょうに」

メリエルも呆れた様子を隠そうともせずに頷いた。

「ま、まだ生え始めなんです!」

おヒゲが大事な部族なので、ヒゲディスは結構傷ついた様子のベディ。

「ベディっていくつなの?」

「19です」

え!!

「ボク30歳くらいかと思ってた……」

「ええっ!?」

だって顔もほとんど見えない髪型だし、猫背だったし……。まさかメリエルと5つしか変わらないなんて。

「じゃあおヒゲを生やすのはもっと年を取ってからにしよ?今は身ぎれいさを優先して」

そんなわけで、ベディはおヒゲを泣く泣く剃って、髪も短くして前髪も上げてセットをし、何とそこそこイケメンな好青年へと変身したのだった。

◇◇◇

そんな変身後のベディにお父様とディートハルト兄様以外はとっても驚いていた。何なら他の使用人達も驚いていたので、ボクはドッキリ大成功!の看板を掲げたい気分だった。

母様も何度もベディを見て、それからボクを見たからボクはニッコリ笑っておいた。

姿勢と言葉使いには気を付ける様に言っただけの付け焼き刃だけど、なかなかの出来じゃない?と思っていたら、その後ボクは自分の甘さを知る事となった。

席に戻ったベディと他の毒見係の元に主人の食事が並べられた。

他の毒見係は、入念に色や匂いをチェックしているのに、何とベディは何の確認もせずにいきなりバグッと食べたのだ。

「!!??」

しかも一口が!大きい!!

ちょっと待って、半分くらいになってない!?ボクのお肉が!!!!

その後も各皿を大きな口でバグバグ食べたから、ボクの元にはすぐにお皿が来た。量がかなり減って…………。

あっけに取られている他の毒見係を尻目に、ベディはボクを見てやり遂げた顔をしている。

おバカ!!

食事会が終わり、お父様から退室する。

今日はまっすぐ自分のお部屋に帰られるみたい。期待していたらしい母様始め側室勢はがっかりしてる。母親の女の部分をあからさまに見るのって微妙な気分だね。

お父様とそのお付きの人達がいなくなったから、ボクもお部屋に帰ろうとしてたら、ノエルお兄様がボクの方にやって来た。

ボクの後ろに控えているベディをチラリと見る。

「別のを用意したのか……?」

ノエル兄様はベディの変身前の姿を見た事があるみたい。

「ううん、ちがいますよ。キレイに洗いました!」

「洗った……?」

訝し気にするノエル兄様と、話を聞いているらしいナターリア様とアンネ様にも聞こえる様にボクは得意気に頷いた。

「はい、ボクも手伝ったんですよ。髪の毛をワシャワシャ~って」

「は!?お前が洗ったのか!?」

「はい!キレイに洗えてるでしょう?」

母様の高級シャンプーを使ったのは秘密だけど、あの剛毛をふわっとするまで仕上げたのはなかなかの成果だと思う。ボクってばトリマーの才能あるかも!て胸を張ったら、すごい顔を顰められた。後ろからベディの「ぼっちゃ……やめて……」て消えそうな声も聞こえた。

「使用人を主人が洗うなんて、頭おかしいんじゃないのかお前」

まぁ王族ともなればお風呂も基本使用人任せだもんね。ボクはメリエルしかいないし、メリエルには自分で洗える様になってくださったら私が楽なんですけどって堂々と言われて、頭以外は自分で洗える様になったけど。

「使用人と風呂に入るなんて、さすが恥知らずの家系ですわね」

ええっ!?

5才の男の子が、19歳の男の使用人の頭を洗っただけで、そっちに持ってく!?アンネ様の言葉に、ボクはビックリした。それにボクは服着てましたけど。

と言うか、5才と7才と10才の子供がいる前で、そういう話もしちゃうんだ。そっちの方が大分はしたないと思うけど、アンネ様もナターリア様もとにかく母様の押しかけが気に食わないみたい。お二人とも、お父様が避暑地で羽目を外して母様に手を出してる時にすでに側室入りしてるからね。

それで言うと、奥様も側室も連れずにバカンスに行って現地で母様に手を出したお父様こそが……って感じだけどね!浮気する気満々な上に、当時39歳のお父様と15歳の母様。夢の中の世界で言うなら、クソロリコン淫行野郎だね!

ヒートアップしてきた側室バトルに巻き込まれると長くなるし、元の原因?はボクみたいだから、注目されないのを良い事に、メリエルとベディとこっそり退散した。

ベディにはお説教しなきゃいけないし。

「という訳で、どういう事なのベディ?」

ボクの部屋で、ボクはイスに座って精一杯えらそうに見える様にベディに詰問をする。何でも最初が肝心だからね。

「何か失礼がありましたか?」

姿勢と言葉使いの事を言われたと思ってるベディが気をつけの姿勢で不安そうな顔をしているが、そっちじゃないよ。

「毒見の方だよ!

何であんなすぐ食べるの!?毒見って何か知ってる!?危ないでしょ!あと一口が大きい!!」

せっかくのお父様との会食でいつもより良いお肉だったのに、全然足りなかったよ!

ボクが一生懸命怒っているのに、ベディはちょっと重そうな奥二重の目をパチパチさせてる。

「え?毒見って、先に食べて毒が入ってないか確認する事ですよね?」

何か違うのかって言いたげなベディに、ボクは呆れてしまう。

「そうだけど、その前に見るでしょ?匂いを嗅ぐでしょ?なんですぐ食べちゃうの!」

「え?何で?」

「毒見係は、毒に耐性が強いのもですが、毒に詳しい者が選ばれます。

なぜなら、食べる前に毒が入っているか見抜く事も大事だからです」

ボクが言いたい事が全く分かっていないベディに、メリエルが助け船を出してくれた。が、ベディはそれでも首を傾げている。

「いや、そんな事しなくても食べたら分かるだろ。

早く食べた方が、坊ちゃんもあたたかい内に食えて良いでしょ?」

おバカ!!

「それだとベディが毒に当たっちゃうでしょうが!」

あと会食の時にボクだけ早く料理が運ばれても、皆そろわないと食べられないし!

「いや、俺は大概の毒には耐性を持ってるから平気ですけど」

「そうじゃなくて~~~~!!」

もう!全然分かってない!ダメだこいつ!

ベディには他の毒見係をよく見て勉強するようにメリエルからも沢山言ってもらったけど、結局ベディがその日理解したのは「一口は小さめに」だけだった。も~~~!!

◇◇◇

このままじゃダメだとボクは翌日、王宮内の温室に向かった。

ベディは毒に耐性を持っている自分に絶対の自信があるのか、まったく毒に対する警戒心が無い。このままではボクはせっかく得た毒見係も護衛もすぐに失ってしまう。

ベディにいくら言っても無駄なら、ボクが詳しくなるしかない。

そんなわけで、まずは王宮内で毒を手に入れようとしたらここしかないって温室に向かったわけだ。

植物園と併設された温室には、色んな植物が育てられていて、日当たりも良いし温度も管理されていてポカポカだ。と言っても、主棟に近い所にあるので今まではあんまり行ってなかったけど。

ベディはお引越し、メリエルは色んな雑務で忙しいから、ボクは一人で温室に入った。

「わぁ……」

気温が管理されているせいで、外のお庭にあるのよりも色とりどりで変わった形をした植物が沢山あった。

未来のお嫁さんのために、お花にも詳しくなるべきかな。お花が嫌いな女の子なんていないもんね。

そう思いながら、まずは毒の把握だとペンと紙を取り出し、図鑑を見ながら毒草を確認していく。思いのほか沢山あるな~。

これは食べたらお腹を下しちゃう草。特徴は、青色の花とギザギザの葉っぱ。

「あ、そうだ」

毒に当たった時に効果の強い毒消しも調べとかないと!

ボクが持ってきた図鑑には、それは載ってなかったので、あとでもう一回図書室に行こう。

「誰かいるのか?」

さっきの独り言が聞こえたみたいで、どこかから声をかけられ、立ち上がる。

小さいボクが更にしゃがんでいたせいで、相手からはボクが見えなかったみたい。

でも周囲は背の高い植物も多く、立っても相手からはボクが見えないみたい。ボクからは見えているんだけどね。

ヴァルテ王国の人間は西洋人の様な白い肌が多く、ボクや母様みたいな西側の田舎の人間は少し黄みがかった肌になるが、それとも違う小麦色の滑らかな肌に、光が当たり蒼く輝く銀の長い髪に海の様に鮮やかな碧い目。

第一王子、フィレデルス兄様その人が、そこには立っていた。