軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

28.転生王子、異国の踊りを見る

さすがに主塔で、おまけに王室の食事会ってことで、出てくるご飯は全部おいしかった。

エビの入っているパイみたいなのとか、パンの中にりんごとチーズが入っていたのとか、 今度側室棟(あっち) でも作れないか、ジェフに聞いてみよう。

お話は主にお妃さまたちが話していて、たまに兄様たちに話を振る感じ。それも基本的に主塔の方々で、あとはナターリエさまとノエル兄様。

アンネ様はお話が上手なので何とか入っていっているけど、母様は入れなくてわたわたしている。がんばれ母様。

ボク?ボクはおいしくご飯を食べています。

メインのお肉も食べて、最後にデザートに色とりどりのフルーツが閉じ込められたきれいなケーキが出る頃、楽団が引っ込んで、派手な衣装の一団が入ってきた。

今回の催しはこの人たちみたい。

見た事がない楽器を持った男性が数人、この辺ではあんまり見ない、黒い帽子を被って襟に金色の刺繍をした変わった格好。

でもそんな事よりも、後ろに続く女性たちの華やかさにボクは釘付けだ。

皆白いベールを付けていて、前髪は全部上げていて、くっきりとした目鼻立ちをしていて、お化粧もそんな感じ。キラキラ光る長いスカートでとってもキレイな人たちなのだ。

「彼らは世界を巡る旅の一座ですが、各国の王族からも評価が高く、民衆からの人気も高いのです」

今回は家族の食事会って事で大臣たちは呼ばれていなかったんだけど、この一座を呼んだらしい大臣が自信満々に紹介をしてくれた。

髪の毛の先とおひげの先がくるんとなっている大臣に父様が「ご苦労だったな、シェルマン」と声を掛けていた。

声を掛けられたシェルマン大臣は、ちらりとツェツィーリアさまに視線を向けたので、多分正妃さま一派なんだろう。まぁあそこが一番勝ち馬だから支持者も多いよね。

シェルマン大臣が言うには、今回たまたまヴァルテに滞在していたのを呼び寄せたんだって。

通りで、一団の人達の格好や顔立ちがヴァルテっぽくないはずだ。

肌の色もヴァルテでは田舎の方……つまりボクの故郷……にしかいない黄みがかった色だもんね。

基本はヴァルテの北西の方の国の人達なんだって。

「北西……もしかして、ザハの方々ですか?」

ディートハルト兄様が思わずといった風に質問すると、一番大きな楽器を抱えたからだの大きな男性が、嬉しそうに頷いた。一度シェルマンに目配せをし、頷かれたので口を開く。

「ハイ、我々の多くの出身はザハデス。よくご存じで」

少しカタコトぎみの喋り方で返され、ディートハルト兄様の目が輝く。

「ザハはほとんどが砂漠に覆われた国だと本で読みました」

「ハイ。我々の国は砂漠が多いデス。ですが泉や緑のある土地もあり、美しいところデス」

そうなんだ~初めて知った。

ディートハルト兄様は滅多にない外国人との対面に、もっと話したそうにしていたけど、大臣の咳払いに我に返って椅子に座り直していた。

余計な口出しをしたと縮こまっていたけど、その様子に父様が話しかけた。

「ディートハルトは本当によく勉強しているな」

「い、いえ、はいっ」

褒められて嬉しそうに返事をするディートハルト兄様と、アンネ様。

良かったね、兄様……と思っていたら、ノエル兄様がフンと年齢に合わない鼻で笑う仕草をした。

「勉強ばかりで側室棟の図書室を独占するので困っています」

「な……別に独占はしていない。使いたいなら君も使えばいいだろう」

ディートハルト兄様の答えにも、ノエル兄様はつんとそっぽを向いた。

「僕は静かに本を読みたいのです。他人がいると落ち着かない」

ディートハルト兄様も仮にも弟に向かって『君』って呼び方どうなんだろうと思ったけど、ノエル兄様にいたってはドストレートに『他人』って言っちゃっているからどっちもどっちだね。

「君よりも小さいリエトは、人がいてもしっかり本を読めているがね」

観客席にいたら急に指名されたよ。

ノエル兄様もそれを聞いてボクを睨むのやめよ?図書室で会った事あるじゃん。

しかし思わぬ人物から助け舟が出た。

「ほぅ。リエトも図書室によく通っているのか」

このお食事会で一番えらい父様からの質問だ。

「はいっ、よく行っています!」

「そうか。お前の学習に関しては聞いていなかったので知らなかった」

マチェイ先生~~~。

いくらボクがみそっかす王子でも、ちゃんと学習進度は上に報告しないと~~~。そういうとこだぞ!

「どんな本を読むのだ?」

「うーんと、今は色んな事が知りたくて、生き物のご本や外国のご本なんかを読む事が多いです。あ、ボクもアルダやエステリバリの言葉もお勉強してます」

ボクの言葉に、エデルミラ様が「ほう」といったお顔でこちらを見て、フィレデルス兄様もちょっと驚いたお顔をしてこっちを見た。そう言えば兄様とは温室で植物のお話ばかりしていて、エステリバリの話はした事がなかったかも。

どうしても優先順位がそちらが上になっちゃってたけど、何度かエステリバリにも行っているフィレデルス兄様からエステリバリのお話を聞くのも良いよね。今度頼んでみよ。

一方、アルダ国陣営はと言うと、ノエル兄様は疑わしそうな顔だけどほっぺたをピンクにしてボクを見てる。何でさ。アルダのご本持っている時会ったじゃん。

そんでもって、ナターリエ様はと言うと……わぁ不愉快そう!

お綺麗なお顔の眉間に、くっきり皺が出来ちゃっている。

ナターリエ様は本当にボクの事がお嫌いである。

そんなこんなで少し話が弾んじゃって旅の一座を放置してしまっていた。

「さあ、それでは各国の王族も魅了した踊りをご覧ください」

気を取り直した様に、シェルマン大臣が大きな声を上げた。

それを合図に、楽器を持っていた男の人たちは少し下がって床に座り楽器を構える。

そして女性たちは前に進み出る。皆青いスカートなのに一人だけ赤いスカートの女の人が一番前で真ん中だ。

楽しみだな~とワクワクして見ていたら、音が鳴り始めたと同時に、踊り子さんたちがバッと上着を脱いだ。

「わお」

スカートと同じくキラキラした素材を付けたとってもセクシーな衣装。おへそなんか見えちゃっててドキドキするね!と思ってたら視界を遮られた。

「わっ?」

見ると顔を真っ赤にした母様に手で覆われていた。

「母様、見えません」

「あ、あなたは子供だから見なくてよろしいです!」

いや、大臣が連れてきた催しにそうもいかないよ。

母様は田舎のお嬢様だから、異文化の免疫が少ないんだよね。

「母様母様、父様たちがお許しになって連れてきた人たちです。失礼があってはいけません」

そう言ったら、何とか手は退いてくれた。

でも母様は自分が見るのは恥ずかしいみたいで視線を逸らしている。

皆の様子を見ると、ナターリエ様も眉をひそめてらっしゃる。

ナターリエ様もね……お姫様だし、アルダ以外の文化がお嫌いな方だから仕方ないね。

肝心の父様は釘付けになっていたけどね!

ちょっと日焼けした肌も何だかセクシーな踊り子さんは、スカートを翻しながら、指に付けたアレは楽器なのかな?それを鳴らして腰から下だけを動かす独特の動きで踊る。

その度、スカートにもお胸にも沢山付いている装飾品がシャラシャラと音を立てていてカッコいい。

そう、とってもセクシーなんだけど、それ以上にカッコいい!

どんどん音楽のリズムが早くなって、スカートが広がったり舞い上がったり、まるで生きているみたいだ!

これがザハの踊りなのかとボクはまた新しい文化に触れて、色々知りたくなった。

やっぱり主塔の方々とのイベントは派手で楽しいな!

これで終われば、ボクも「楽しかった~」といい夢見れたんだけどね。