軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

27.転生王子、父王からお言葉をいただく

「こうして家族皆の顔を見るのは久しぶりだな。またアカデミーが始まると上の王子たちは旅立ってしまうから、つかの間の家族だんらんを楽しもう」

父様の言葉にみんな内心どう思っているのか分からないけど、父様に続けてグラスを持ち上げ乾杯の所作を取った。

ちなみにだけど、家族(笑)みんなが集まるとなると、新年祭と建国祭だ。

前にも言ったけど、ボクがまだ5才で式典には出られないから、皆があつまるのはこの二つの行事くらい。

でもって、建国祭の時はほら、ボクが死にかけてて欠席したから、全員集合は新年祭……半年前以来ってわけ。

そうなんだ、この“アカデミー休み終わりのお食事会”って毎回やってるんじゃないんだ。

どういう風の吹きまわしかな?と思ったけど、父様にも父様周りの大臣たちにも色々考えがあるんだろうね。

何せ奥様たちはみんな、政治的な思惑付きの輿入れだから、ご機嫌うかがいは大事だもんね。

母様は除く!

と言いたいところだけど、母様って言うか、母様の父様であるおじい様が軍部に大人気なもんだから、母様を通しておじい様ご機嫌もある程度とっておかなきゃいけないみたい。

つくづく、バカンス先で羽目なんて外すものじゃないよね~。

お食事会が始まり、まずは食事と歓談との事で楽団が会話のジャマにならない程度の演奏を始めた。楽器が出来る男っていうのもモテそうだよね。

楽器は貴族のたしなみの一つでもあるから、ボクももう少ししたらどれか選んで練習しなきゃいけない。夢の中の世界では縦の笛くらいしか記憶にないから、どれにしようかなぁ。

食事はまずはスープからという事で、毒見役たちがひとさじ飲んで確認したものが運ばれた。薄い茶色の透明のスープ。ボクはミルクの入ったトロトロ系が好きだけど、大人はこっちの方が好きらしい。5才の舌では繊細な味が分かんないや。

ちなみに各毒見役が匂いを嗅いだり食器を確認している中、ボクの大事な毒見役はパクっと口に含んでギョッとされていた。うん……おいおいね……。

でもってお話はアカデミーに戻る兄様たちへ父様からのお声がけから始まった。

一番はもちろん今年から最上級生になるフィレデルス兄様。

「フィレデルス、お前は今年で最高学年になるな。皆の手本になる様励む様に」

兄様も今年卒業か~。卒業後ってどうするんだろう?

て言うか、兄様って今年卒業なのに婚約者ってどうなっているんだろう?

大体アカデミーを卒業した後は婚約者として本格的に活動し始めるから、女の人は大体男の人の家の仕事を覚えたり顔見せをして回ったりするんだけど、聞いた事ない。

う~ん、でも王太子がまだ決まっていないから難しいのかな。

次期王とそれ以外じゃ、お相手もやる事が変わってくるもんね。

あ、て言うかフィレデルス兄様って、エステリバリ王族でもあるんだった!

あちらのお国の跡取り事情がどうなっているか知らないけど、第三王女の長男だから十分に王位継承権があるよね。

これはややこしい!

お家柄が良いって言うのも大変だなぁ。

その点ボクは!成人後は王室から出されるのは決定事項ですし、早めに婚約者を決めちゃっても問題ないですから!婚約話いつでもカモンだよ!

「はい」

な~んて、ボクがあれこれ考えている内に、兄様はそっけない返事を返していた。

父様にもそうなんだ。

そんで次は第二王子であるアルブレヒト兄様。

「アルブレヒトは騎士コースも取ったそうだな」

アルブレヒト兄様は今年十五だから、選択コースで騎士コースを選んだって。鍛えている感じだし、向いてそうだよね。

「はい、以前から希望しておりました」

アルブレヒト兄様はボクに対するヤンチャな感じとも、母親であるマルガレータ様に対する反抗期な感じでもない礼儀正しい少年!て感じで答えている。

「そうか、卒業後は騎士団入りも考えているのか?」

「! それは……今はまだ……」

父様は何気なく言った感じだけど、アルブレヒト兄様もマルガレータ様も驚いた顔をしてた。騎士コースから騎士団入りするのはよくある進路なんだけど……あ、あ~~~。

そうか、騎士団入りするって事は、王太子にはならないって事か~。

いや、別に王太子が騎士団に入っても良いんだけどさ、話の流れ的に、そんな感じじゃなかったよ……ね?

アルブレヒト兄様は暗い顔になっているし、マルガレータさまのお顔も険しい。

エアハルト兄様は気配を消す様にすんってなっている。

父様ったら無神経~~~。

と思って見ていたら、父様も何かに気付いたようで、話を逸らす様に「励みなさい」と言って次のオリヴィエーロ兄様に水を向けた。へたくそか。

「オリヴィエーロ、去年の成績はとても優秀なものだった様だな。良くやった」

「お褒めいただき、光栄です」

父様のお褒めの言葉にも、オリヴィエーロ兄様は嬉しそうにする訳でもなくどこかホッとした様子だ。

隣のツェツィーリアさまも特に嬉しげでもなく「当然」と言わんばかりの……ん?違うな。

何か口元が緩みそうになるのを扇で隠した?

一方のマルガレータさまやアンネさまは悔し気なご様子だ。

うんうん、ディートハルト兄様も優秀だから、アカデミーに入る年になったらきっと褒められるよ。

一方のエデルミラさま一家は余裕の表情。この後に続くだろうラウレンス兄様もだ。

「ラウレンスは……去年は何とか上位に食い込めたらしいな。もう少し頑張りなさい」

オリヴィエーロ兄様と比べると誰でも劣ってしまうから、ラウレンス兄様は厳しい立場だよなと思ったけど、ラウレンス兄様はそんな事でへこたれる人ではなかった。

「上位に入っていたらよくないですか? それよりも父様、俺アカデミー内を探検していて、すごいの見つけちゃったんですよ!」

いつもの調子で父様にも明るく元気に話しかける。

それを他の妃たちは眉を顰めているが、エデルミラ様は可笑しそうに見ている。いつもの事なのだろう。

一方の父様も、少し戸惑いながらもラウレンス兄様の話に耳を傾け、だんだん楽し気に会話し始めた。

「ああ、あそこの噴水は私が在学中にもそんな噂があったな」

「そうなんですね、父様の時は~」

うーん、やっぱり会話上手の愛嬌って大事だなぁ。

ラウレンス兄様の話が終わるまでに、サラダも食べ終わって、メインのお肉が来た。キタキター!

うん! ベディも少なめに取っているね!

ひとまずそこは合格!

やっぱり他の動作をしない分、ボクの所にお肉が出されるのが一番早くてちょっと気まずいけど。

「ディートハルトは最近ヤントゥネンの言葉も勉強しているらしいな。家庭教師たちが覚えが早いと言っていたぞ」

次はディートハルト兄様だ。

主塔の方々からかと思ったら、どうやら年の順にお声がけをしてくださるみたい。

ディートハルト兄様もちょっと予想外だったみたいで、父様に話しかけられてビンッって背筋が伸びた。

「は、はいっ。いつか、役に立つと思い近隣諸国の異国語は全てマスターしたいと思っております」

ヤントゥネンは前にディートハルト兄様に聞いてから地図で確認したら、結構遠いお国だったから、もうヴァルテの周辺国はマスター済みって事かな?

アカデミー入学する前に、すごすぎだよね!

ボクはとりあえずはアルダとエステリバリ語からがんばっていよう。いつもよりも柔らかくて美味しいお肉を口に含みながらボクは思った。

「そうか、頼もしいな」

父様に言われて、ディートハルト兄様もアンネさまも頬を染めて嬉しそうだ。

うんうん、良かったね~。母様睨んじゃダメだよ。

一方、先ほどのアルブレヒト兄様のターンでダメージを負ったマルガレータさま一家に戻る。

「エアハルトは、友人と仲良くしているらしいな」

エアハルト兄様もまだアカデミー入学前だけど、デビュタントは果たしているから既に交友関係を広げつつある。このあいだのボクをめちゃくちゃ舐めていた貴族子息とかと。

「はい、沢山お友達が出来ました。今度またバルテン子息のパーティにお呼ばれしています」

「ほう、バルテン伯爵家か」

エアハルト兄様は先ほどの気配を殺した様子と180°違う明るく社交的なかわいい笑顔で父様にアピールをしている。

バルテン伯爵家っていうのがどんなお家なのか知らないけど、仲良くしておくと良さそうなお家なんだろう、父様も笑顔になっている。お勉強もだけど、社交性って大事だね。

父様の笑顔に、マルガレータさまもにっこり。

アルブレヒト兄様だけまだむっつりしちゃっているけど。

アルブレヒト兄様もお肉を食べて元気出して。おいしいよ?

「ノエルは先日の建国祭でも立派に務めを果たしていたな」

ボクより2個上のノエル兄様は7才だから、式典に参加できるのだ。新年祭に次いで二回目の参加だったけど、父様が褒めるくらいご立派だったみたい。

まぁね?

ノエル兄様の天使と見紛うばかりの美少年ぶりだと、そりゃあ座っているだけで皆拍手喝采間違いないもんね。

「はい、ありがとうございます」

返す言葉も、鈴が鳴る様に軽やかで可憐である。

ボクも自分がどっかの貴族の子だったら、「さすが王子様は見目麗しくて神々しいな」と手を合わせたはずだ。中身を知らないからね。

ノエル兄様と同じく可憐にして麗しいナターリエさまは、ノエル兄様を見下ろして小さく微笑まれ、その微笑みを受け、ノエル兄様の頬がばら色に染まって、その一画だけまるで絵画の様で見惚れちゃった。

「リエトは―――……」

だから父様の声がボクには届かなくて、母様に脇をつつかれてハッとなってしまった。

父様からの直接のお声がけいただける機会なんてあんまり無いからね。母様も気が気でないのだろう。

「元気そうだな」

「はい、元気です!」

うん、まぁこんなもんだよね。

母様、お肉食べて元気を出して。