軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

7話「兄上、協力依頼を出しました」

拝啓 兄上

今年も恒例の 地竜(ジリュウ) を狩りに行きました。辺境大森林の地竜はとても大きく、今年は特に大物が採れたのでよかったです。これだけの大きさを運ぶのは大変なので、若手の冒険者に協力依頼を出しました。

とても素直で元気な子たちだったので、また手伝ってもらおうと思っています。

*──*──*──*──*

今日、俺は依頼用紙を書いている。毎年この時期には 地竜(ジリュウ) という大きなミミズの運搬依頼を出している。こいつを粉末に加工したものは鎮痛薬の原料の一つ。冒険者によく売れるため減りが早い。ちなみにバカでかいだけで別に魔獣ではない。辺境大森林の神秘の一つである。

今年は誰が手伝ってくれるかなとワクワクしながら用紙を書き進めていく。

「出来た!この依頼でよろしく」

「はい、承ります。依頼を受ける方が来るまでどうしますか?」

受付にいるこのお姉さんもだいぶ冒険者ギルドに慣れてきた様子だ。

「報酬高めにしてるしなー……ちょっとあの辺で待ってるから、決まったら呼んでもらえる?」

と、端のほうにある椅子で座ってギルド内で待つことにした。いつもより早めに来たから、冒険者たちも今から続々とやって来るはず。

ちなみに俺が出した依頼はこれ。

◆ーー【運搬】ーー◆ ★☆☆☆☆

「地竜の運搬」

依頼主:Bランク冒険者・リシアン

目的:地竜討伐後の運搬の協力

報酬:銀貨十五枚+別途謝礼の品あり

場所: 浅層部川付近から麓の解体場まで

内容: 討伐済み個体の運搬。特殊な装備は不要、運搬に必要な物資はこちらで準備しています

募集対象:ランク不問。運搬系に自信がある方(特に筋力に自信のある方)

危険性:現地で依頼主が討伐します。安全確保のため、離れて待機していただくので危険性は高くありません

注意事項:………………

今年は誰が来るかなーと思いながら、顔馴染みの冒険者と挨拶を交わしながら待つ。一昨年まではミレア姉さんの名前で依頼を出していたから、わりとすぐ決まっていたんだけどな。

ミレア姉さんにいいところを見せようと……そして貴重な話せる機会だとランク問わず人気の依頼だったのに。まぁ、依頼主名だけがミレア姉さんで対応は師匠か俺がするんだけど。

前から辺境にいる冒険者たちは「またこの季節が来たのか……」「銀貨十五枚とは相変わらず破格だな、おい」などと言いながらスルーしていく。経験者だろ、受けてくれてもいいのにと思いながら待つことしばし。

「運搬依頼で銀貨十五枚ってマジかよ!」

「これで折れた剣の修理もできるじゃん?」

「筋力に自信のある方って俺ら、余裕じゃね?」

出た。例の三馬鹿だ。何か最近よくこいつらに会うな。よし、そのまま受付に持って行け。

「リシアンさん、この方たちが依頼を受けてくれた冒険者です」

新人さんが冒険者を連れて来た。

「おう、今日はよろしく頼むわ」

「「「チェンジで!!」」」

いきなり断られた。

「チェンジ出来るのは依頼者の方だよ。依頼放棄の場合のペナルティも書いてるけどそれでいいの?」

「ペナルティって何?」

「どこに書いてんだよ?」

と言いながら依頼書を眺める彼ら。

「ほら、注意事項のとこ。依頼中の予期せぬ事故の場合を除き、依頼を途中で放棄した際は銀貨十五枚をお支払いいただきますって書いてるだろ?」

注意事項としてちゃんと書いてある。字が小さいだけだ。ちゃんと最後まで読め。

「詐欺だ……」

「何で……何で……」

はいはい、行くぞ。

「なぁ、そこの三馬鹿。何て呼べばいいか分かんないけど名前は?」

「誰が三馬鹿だよ!俺はホウ。あんたの馬に剣を折られたのがレンでこないだ捻挫したのがソウな!」

ホウ、レン、ソウか……。

『社会人にもなって報連相も出来ないなんて常識がないやつだな。馬鹿なのか!』

ちらっと過ぎった前世の記憶を頭を振って散らす。あぁ『ほうれん草』って野菜もあったよな。

「おっけ。じゃあ今度からお前らのことはスピナシアって呼ぶわ。俺のことはリシアンでいいから」

「何で野菜の名前で呼ぶんだよ?!」

スピナシアはこの世界にあるほうれん草によく似た野菜だ。とりあえず無視して進む。

川辺の地竜の出没スポットを目指しているが、スピナシアの動きが悪い。何でもう息切れしてんだよ。

「おい……お前ら、遅い」

「あんたが馬に乗ってるからだろ?!」

「そのスピードについて来いって方がおかしいんだよ!」

一応、ゆっくりめにはしてんだけどな。ゴルディに地竜運搬用の荷車を曳かせてるし。

「そのデカい荷車、空なんだし乗せてくれたっていいだろ?」

「え、マジで……?いや別に乗りたいなら乗ってもいいけど」

「よっしゃあぁぁぁぁ!」と言いながら荷車に乗る三馬鹿。秒で降りてきた。

「ちょっ、土臭っ!うぇぇぇぇぇ」

「土臭さと……は?!マジで何の臭いだよ……ゲロ出そう」

あーあ、マジでだらしねぇな。行きでこのペースなら確実に日が暮れる、仕方がないな。

「ちょっとお前ら、ジャンケンしろ」

「ジャンケンって何だよ?」

おっと?この世界にジャンケンの文化はなかったのか……。簡単にルールを説明して、二人が勝つまでやらせた。

「勝った二人はゴルディに乗ってもいいぞ」

「やった!」と言いながらゴルディに跨がるホウとレン。

「あの……俺は?」

まだ青い顔をしたソウが尋ねてくる。

「あぁ、置いて行かないから安心しろ。悪いな、ゴルディは三人乗りなんだわ」

ゴルディがソウの襟首をパクっと咥えた。そしてそのまま川付近まで駆けて行く。荷車がゴルディのスピードに耐えきれず揺れまくるから、風の精霊に頼んで途中から浮かせてもらった。

川辺に着いたところで三人は撃沈している。

「……おい、俺は地竜を狩ってくるからお前らはここで休んどけ。あとこれを飲めば吐き気は治まるからやるよ」

三人に 鎮暈(ちんうん) の丸薬を渡す。大丈夫、苦いだけで酔った後に飲んでも吐き気は治まる。それにしても、こんなに酔うなら先に渡して飲ませとけばよかったな。それならあんま苦くないやつもあったのに……。丸薬を飲むとすっかり大人しくなった。よしよし、このまま大人しくこの場で待ってろよ。

「この辺かな……ゴルディ、お願い」

「ブルルルルァァァァァ!!」

後ろ足で立ち上がったゴルディが「ドォォン!」と地面を踏み鳴らす。

それに驚いた地竜が巣穴から地上に飛び出してきた。

「お、今年のめっちゃデカいじゃん!」

俺は魔法で地竜の首を刎ね、土魔法で断面を塞ぐ。落ちた首だけ、土の精霊に頼んでしっかり埋めてもらう。

埋めといたらまたここで新しい地竜が誕生するしな。マジ生命の神秘。

地竜は相変わらずぬめぬめと体液で濡れ、土臭い……だけではない何とも言い表せない悪臭がして顔を 顰(しか) める。

「スピナシア、具合はどうだ?吐き気は治ったか?」

「はい、治ったっす」

「めっちゃ効くんすね、あと色々すごいんすね……」

「ありがとうございました、リシアンさん」

何かすげぇ大人しくなってんだけど。鎮暈薬の鎮静作用が強く出た?ぼーっとしている感じではなさそうだけれど。一通り彼らに異常がないか診たけど、問題はなさそうだからいっか。

「じゃあ、あとは解体場まで運搬を頼むわ!俺とゴルディは先に帰るから。ゴルディは鼻がいいからかわいそうだし」

「了解っす!」

「任せてください」

と、元気に返事をする彼らに運搬用の装備品を手渡してさっさと帰宅する。

風の精霊に頼んでこちらに臭いが来ないようにしてもらっていたのにそれでも、さっきからゴルディがフレーメン反応をしているからな。

夕方。解体場から地竜が届いたとの知らせが来たので確認に行く。

「おう、お前ら。お疲れー」

「ピニャー」

風の精霊が魔法で彼らに染み付いた地竜の臭いがこちらに来ないようにしてくれている。汗だくになった彼らにも涼しい風が吹き抜けていく。

「……こんな過酷だって聞いてないっすよ」

「ちゃんと鎮暈薬も飲ませてやったじゃん?あれがないとまだ吐き気もしてきつかったと思うけど」

「明日マジで筋肉痛になる。絶対動けねぇ……」

初めてにしては早く持って帰ってきてくれたしよかった。あのサイズだったしもっと時間がかかるかと思ったけれど、こいつらはけっこう使えそうだな。

「依頼完了の手続きはこっちでしとくから。マジで今回は助かったわ。あとこれが追加報酬のフェレティマの軟膏。筋肉痛にめっちゃ効くよ」

それぞれに一つずつ手渡してやる。

「あとこの依頼を受けてくれたやつには薬店でフェレティマの軟膏を一年間、割引のサービスもしてるから。この紙にサインしてくれる?」

「マジっすか!」

とか言いながら大人しくサインをしてくれたので、サービス券を渡して彼らには改めてお礼を言った。

☆──☆──☆──☆──☆

「きっつ……!マジで今日の依頼ヤバすぎ」

「ハンパねぇよ、リシアンさんマジやべぇ」

「てか、あのサイズの地竜を一撃で仕留めるとかおかしくね?」

騒がしい声が聞こえるのはスピナシアの面々がいる宿屋の一室。報酬も手に入り懐に余裕が出来たので打ち上げ飲みに行こうとしたが、居酒屋からは染み付いた地竜の臭いで入店を拒否された。そのため、こうして部屋飲みをしている。

「あれで薬師ってマジで詐欺だって」

「でもあの薬の効果ヤバかったよな!」

「それな。一瞬で吐き気が治まったもん」

ひたすらヤバい、相変わらず馬もだいぶおかしいなどと盛り上がっている。

「そういや、リシアンさんに筋肉痛に効くって薬もらったよな?」

「この感じだと明日絶対くるよなぁー……」

「吐き気止めもすごかったし、塗っとく?あのフェレ何とかってやつの」

「そうしよ!何か薬草っぽい名前のやつだったよなー」

蓋を開けた三人は固まった。嫌になるほど嗅いだ、今も染み付いて取れないその土臭い悪臭は……

「「「地竜じゃねぇか!!」」」

それでも明日が筋肉痛で動けないよりかマシだと塗った。翌日の彼らは、筋肉痛がないどころかいつもより身体は軽かった。こうしてリシアンの薬店に新たなリピーターが生まれた。

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追伸

今日、協力してくれた冒険者たちは俺の研究を手伝ってくれる契約までしてくれました。新しい薬が出来たら、まずは彼らが試しに使ってみてくれます。協力関係って本当にいいですね。

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「あ、契約書は忘れないうちに綴じとかなきゃ」

鍵棚から、背表紙のない一冊を抜き出す。

新たに三枚増えたその紙を……「新薬における安全性の研究〜新薬試用依頼契約書〜」と書かれた冊子の一番下に追加した。

表紙の文字を指先で軽くつつきながら、俺はにやにやと笑った。

「ちゃーんとよく読まないからこうなるんだよ。バッカじゃねぇの」