軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

982.世界を維持する者

「「「行け行けー!」」」

掛け声とともに、地下遺跡を突き進むプレイヤーたち。

トップ組や掲示板組と手を振り合い、分かれ道を分担して進む。

メイたちが選んだのは、中央にして紋様ブロックが並ぶ直線の通路。

高さも広さもそこそこある、通路としては大きなものだ。

残る緑は、壁面に張り付くようにして生えている。

「枝葉が斬られてるよ」

進んだ先に見えたのは、切れ落ちた木々と葉。

「ドアが、開いています」

紋様の壁面に張り付いた枝葉は、今さっき切られたばかりかのような散らばり方だ。

「誰かが、先に進んでるの……?」

念のため、注意しながら先に進む。

ある程度の広さが確保された空間には、変わらず紋様の刻まれた壁と天井が続き、紋様の立方体ブロックが点々としている。

各所に緑が入り込んだ大きな部屋を、進む四人。

やがてたどり着いた奥部。

その男は、壁に描かれた紋様を眺めていた。

「……管理者、だったわね」

黒の外套をまとい、手投げのダガーを脚などに巻いた、アサシンたちのリーダー。

世界維持機構との衝突は、『ルート』を通ってきたメイたちにしか起きない展開だ。

「我ら世界維持機構は長きに渡って、旧文明の過ちを繰り返さないための活動を、歴史の裏側で続けてきた」

壁を見上げていた管理者は、その視線を降ろす。

「かつて異世界に手を伸ばし、得た素材で兵器を生み出した有力都市は、自然を破壊しながら世界の覇を競った。その蛮行は自然界の王たちとの対立を生みだした。始まった戦いはやがて異世界の大物の目につき、そして……旧文明は滅ぼされた。貴様らは知らぬだろう。旧文明を崩壊に追い込んだ異世界の魔物は……敵対していた旧文明の有力都市と、自然界の王たちが一時的に共闘してようやく封じたほどの化物。だがそれだけの強さを誇りながらも、異世界では――――10指にも入らぬ力の持ち主とされている」

「あの北極の魔物は、旧文明と自然界の王たちが一緒に戦ってようやく封印したほどの強さを誇るにもかかわらず、異世界では10位以下ってこと?」

「そうなんだぁ……」

「驚きました」

「お、恐ろしいですね……っ」

ドキドキとワクワクの入り混じる感覚に、思わず尻尾を振るうメイ。

「旧帝国の残党共は異世界兵器の力と、それを使う自分たちの力を過信し、酔っている。これまで以上に強く恐ろしい、異世界の化物に襲われる可能性があるとも知らずに。それは旧文明の自惚れた為政者たちと同じだ」

管理者は振り返る。

「旧文明の過ちを繰り返させはしない。ゼティアは開かせぬ――――もう二度と」

管理者がそう言って片手を上げると、そこには一つの転移宝珠。

足元に生まれる魔法陣から、整列したアサシンたちがせり上がってくる。

「すでに旧帝国の残党共も、『鍵』と共に最後の門に向けて動いている。我々にはもう時間がない」

だが、これだけでは終わらない。

管理者はここで勝負をつけるべく、さらに転移宝珠を強く輝かせる。

「『鍵』に惹かれ、『門』に惹かれ、何より『力』に惹かれる危険な冒険者たちは、この場で世界から抹消する」

さらなる召喚でやって来たのも、アサシンたち。

ただ、その様子が少し違う。

「レンさん、あれは……!」

統一されている最初のアサシンたちとは違い、その装備に統一性はない。

「ここでクエストがぶつかるのね……元攻略組のアサシンたちと」

やって来たのは、かつて天空遺跡でぶつかった、世界維持機構についたプレイヤーたちだ。

ここでメイたち『鍵の青年を追い、ゼティアの門に向かう者を倒す』よう、クエストを負っているのだろう。

「アサシンさんたちに加えて、元攻略組の皆さんまで一緒なのですか」

ズラリと並んだアサシンたちの数は、なんと合計50人。

その光景に、思わず息を飲む。

「――――欲深き者たちを、一人残らず片付けろ」

管理者がそう告げると、全員が静かに武器を手にする。

「ちょっと数、多くない?」

驚異的な強さを誇る管理者に加えて、13人がトップ級プレイヤーとなると、戦いはかなり厳しいものになる。

普通に考えれば、たった4人でどうにかできるような数ではないだろう。

「世界を守るのは――――我ら、世界維持機構だ」

元攻略組はそう言って静かに構える。すると。

「【疾走縮地】」

ドン、と巻き起こる衝撃。

強い踏み出しから、一人のアサシンNPCが高速で接近。

メイやツバメが対応に向かうと、突然アサシンはヒザを大きく曲げた。

「【伸身宙返り】」

「「ッ!?」」

華麗な跳躍で前衛組二人の頭上を飛び越え、そのままレンを狙う。

「【首狩り斬華】」

一筋の水平剣閃。

後衛狙いの一撃は、いきなりこちらの虚を突いてきた。

さすがにこれには、誰もが反応に遅れる。

「【かばう】【地壁の盾】!」

しかし、どんな状況でも身体が勝手に防御するまもりが、レンへの攻撃を盾で弾いた。

「助かったわ!」

ダメージなしで切り抜けたことに、思わず感謝がこぼれるレン。だが。

「っ!?」

「【影打ち】【三剣殺】」

影に潜り、視界から姿を消す近距離瞬間移動。

元攻略組が魔力光で延伸させた剣で放つのは、高速の三連撃。

「【クイックガード】【地壁の盾】盾盾っ!」

ぶつかる魔力剣と盾。

魔力が弾けて、火花を散らす。

「先行のアサシンが空中に『視線』を集めたところで、足元からの攻撃搦を仕掛けてくるなんて――! 【フレアストライク】!」

即座に放つ反撃の炎砲弾を、元攻略組は片手を突き体勢を下げる形でかわす。

すると、後方の元攻略組が投じた【ブレード】が飛来。

「っ!」

レンの耳をかすめる形で、飛んでいった。

「さすが、個人個人がトップ級なだけあるわね……!」

初手から『殺しにいく』連携。

元攻略組13人は、そもそも実力がトップ級。

そこに速度自慢のアサシンたちが絡む状況は、やはりそう簡単ではない。

「さ、さらに来ますっ!」

最初の接敵が終わり、一斉に動き出すアサシンたち。

その数に、まもりも圧倒される。

「ウォオオオオオオオオ――――ッ!!」

しかしメイは、【遠吠え】を使うことでアサシンたちの足を強制停止。

「【装備変更】【バンビステップ】!」

装備を【鹿角】に変えて回避重視の態勢を取り、アサシンたちに向かい合う。

1人目、迫る短剣の二連撃を下がりながらの回避でかわす。

2人目、高速の刺突をターン一つでやりすごす。

3人目、跳躍からの振り降ろしを、バク転で回避。

その瞬間、【投擲】によって跳んできていた【ブレード】の数は、なんと7本。

7人のアサシンが同時に投げた、バラバラの角度から飛来する刃。

大きな回避をすれば、その瞬間を別のアサシンに狙われる。

だがメイは首の傾けで2つ、肩の引きで3つと、その場を動かず数センチ単位の挙動でこれを回避。

残る2つを剣で弾く。

「「【伸身宙返り】」」

さらにアサシン二人が、空中で交差して頭を狙いに来る派手な連携にも、驚くことなく片ヒザを突くだけで回避。さらに。

「ここだ――!」

「とっつげきー!」

高速移動から振り下ろされた一撃に、即座に反応してパリィまで決めた。

「【投擲】」

「うわっと!」

パリィによって生み出した隙を突こうとしたところを、アサシンがけん制。

「【フレアアロー】!」

「【斬烈】」

代わりにレンが攻撃に入ろうとするが、飛ぶ剣撃による妨害が入る。

「【地壁の盾】!」

しかしこれも、まもりが早い始動でレンを守った。

「この数の連携を相手に、攻めるのは難しいわね……っ!」

「何か、攻守を切り替えるきっかけが欲しいところです」

敵は全員が高速移動と投擲を使用するため、まるで油断ができない。

さらに人数が多いことで、味方へのフォローにも余裕がある。

どうしても戦いが後手に回る中、動き出していたのは一人のアサシン。

「【疾走縮地】【ソウルスティンガー】」

禍々しい黒のエフェクトをまとう短剣が放つ速い刺突は、黒い稲光のようなエフェクトと共に迫る。

これをツバメは、横へのステップでかわすが――。

「ッ!?」

なんと一人目のアサシンの背後に隠れて、駆け込んできた元攻略組の姿が見えた。

「【刺竜殺】」

高速の刺突撃の回避後を狙う、第二の刺突。

まもりの【かばう】が届かない位置での攻撃に、ツバメは思わず防御姿勢を取る。

「「っ!?」」

次の瞬間。

レンとまもりの隙間を、一人の少女が駆け抜けていった。

「【早換え】! バニーちゃんドレスアーップ!」

セットにした二種類の装備を、任意で切り替えるスキルを走りながら発動。

すると白ベレー帽を乗せたお嬢さまのような装備が一転、燕尾服の裾のような形をしたスカートを巻いた、白のバニースーツ姿に変わる。

「【回転跳躍】!」

華麗な宙返りジャンプで距離を詰め、そのまま空中から、獲物を見つけた隼のように襲い掛かる一撃。

「っ!」

長包丁の振り降ろしをどうにか防御した元攻略組に対して、続ける攻勢。

「【三枚おろし】!」

2本の包丁で放つ3本戦の斬撃を、左右で計6本。

続けざまの防御を強いられた元攻略組が、弾かれ下がったところで、フォローに集まってくる8人のアサシンたち。

その姿を見て、バニーは両手を組んでお願いポーズ。

「【口寄せ】! みーんな出ておいで!」

可愛く首をかしげると、巻き上がる白煙。

現れたのは、大量の白ウサギたちだった。

「ゴーゴー! ヴォーパルバニーちゃん!」

星屑でもめずらしい『量の召喚』が発動。

「なっ!?」

凄まじい勢いで飛び出してきた大量のウサギが、最前にいた元攻略組に殺到し、その鋭い歯でかじりつく。

すでに小型のウサギに取りつかれた仲間の救出はあまりに難しく、フォローに来たアサシンたちまで白い波に飲み込まれる。

そしてウサギたちが波が引くように消えていくと、そこには12人ものアサシンが倒れ伏していた。

完璧な登場を決めたバニースーツの少女は、ここでばっちり決めポーズ。

「一騎当千、勇猛果敢! 最強無敗の白うさぎ、バニー・ラビッツの登場だーっ!」

やっかいな戦況を変えうるきっかけが今、ここに現れた。