軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

980.賑やかな一休み

「スライムハンマー、すごい迫力だったなぁ……!」

「本当ですね! 驚きました!」

「見事な戦いだったな」

キング・ゴールデンリザードを打倒し、ワイワイと盛り上がる掲示板組。

「この樹氷の魔女と使徒長がいれば、これくらいは当然の結果だ」

一方そう言って、クールに決める樹氷の魔女。

「顔に出てるぞ」

レンとの『氷合わせ』の瞬間を撮った動画があったら100万回見ようという期待が、うっかり顔に出る。

一団が広い空間を進んだ先にあったのは、道を塞ぐ大きな石壁。

複雑な紋様が絡み合うように描かれた壁は、一か所だけ明るく輝いている。

「これは他ルートの仕掛けを起動したり、クエストを解くことで、紋様の輝きが広がっていく形式だと考えられます」

そう言って計算君が、壁をあらためて眺める。

「全部点いたら壁が開く仕掛けですね」

「道は何本もあったし、今からこの広い地下で全部見つけて進むのは大変だな」

「他のプレイヤーも動いているし、皆気合入ってたから、そう待たなくても開くと思うぞ」

「敵の打倒が難しくない場所を選んで進めば、低レベルパーティでも解ける仕掛けがあるみたい」

「本当に皆で進んでる状態なのね。そういうことなら、少し休んで行きましょうか」

「いいと思いますっ!」

まだこれ以上は進めない。

それなら焦らず待とうというのは、いつものメイたちの流れだ。

掲示板組はこの状況下でもマイペースな四人に驚きながらも、メイたちの休憩時間という何度も広報誌で見てきた光景に期待する。

「あ、でもこの人数だと色々と用意が足りないかも――」

「だ、大丈夫ですっ! 足ります……っ」

そんな掲示板組の心配に、まもりが即座に反応。

「おおっ、これはすごい」

次々に出てくる食べ物と、お菓子。

「おおーっ、本当にいっぱい持ってるんだな」

出てくる食材と調味料。

「「「…………」」」

多すぎて言葉を失う。

「お茶も色々あるんですね! これならメイドスキルが使えます。こういう時はお茶があると落ち着きますよ」

そう言ってさっそく【ケトル】や【五徳】を取りだし、カップとポットまでしっかり用意する迷子ちゃん。

石床に敷物まで敷くという、完全な態勢だ。

まもりが今一押しの食べ物を並べると、迷子ちゃんも紅茶を配り出す。

いよいよピクニック感が出始めて、レンはちょっと笑う。

「俺たちが必死に探してる間に、迷子ちゃんは優雅に紅茶を飲んで待ってたのか……」

苦笑いを浮かべる、スライム急便の面々。

「でも世界を賭けたダンジョンで、ピクニックはすごいな」

「やっぱメイちゃんたち、肝が据わってるわ」

飲食システムが稼働し始めて、店を利用するプレイヤーは増加の一途をたどっている。

とはいえダンジョンの下層で、これだけの人数でお茶会を始めるパーティなどない。

なかなかない光景を、楽しみ出す掲示板組。

「そう言えば、海底遺跡での報酬は受け取れたの?」

「はい。スライム急便の皆さんに運んでもらうことで、どうにか受け取ることができました。おかげでゴーレムが使えるようになったんですよ」

「今回の報酬は、錬金術の方なのね」

「方向性は、召喚に近いかもしれません」

「なーにゃはドールだったし、錬金術師のスキルって結構多彩なのねぇ」

どうやらナディカ攻略後の報酬を、迷子ちゃんは無事受け取れているようだ。

「あの時はまだ、西部劇みたいに迷子ちゃんを『縄』で引きずるスタイルだったぽよ……」

「気が付いたら丸太に入れ替わっていた時は、さすがに驚愕したなぁ」

そんな苦労話に、深々とうなずくスライム急便の面々。

レンは楽しそうに笑う。

そしてその背後では、身体を上手に成形してカップを持つスライムの姿に、メイとツバメが興味津々だ。

「フフ……」

樹氷の魔女はレンの近くにしれっと陣取り、『紅茶を楽しむ黒き魔術師たちの休息』みたいな空気を楽しんでいる。

続く楽しいお茶会。

メイが呼び出したいーちゃんに、皆が食べ物をあげ出した頃――。

「敵の近づいてくる音がするよ」

「一応ここも、敵が出る範囲なのね」

現れたのは、ミノタウロス型機械の一団。

どうやら今度は前衛後衛で、パーティのような形式を組んでいるらしい。

メイたちが休憩を切り上げようと、動き出したその時――。

「【狐走】」

速く細かな足の運びで駆け込んできた少女は、すみれ。

「【雷閃走破】」

超高速の斬り抜けで、戦士型ミノタウロス型を一刀に伏した。

そこに飛び込んできた、剣士型の振り払い。

「【側方転身】」

側方宙返りでこれをかわし、刀を横一線。

「【波紋刀舞】」

広がる波紋のような斬撃が、剣士型を一撃打倒。

これで残るは三体。

しかしここで、すみれは後退。

すると直後、大きな剣を抱えた少女が一人現れた。

「どいてもらうよ! 【メイルフラッド】ォォォォ!」

水の魔剣【ポセイダル】を振り上げれば、爆発した水塊が怒涛の勢いで襲い掛かる。

容赦のない一撃は、あっさりと敵三体を消し飛ばした。

「ちょっと格好つけちゃったな」

「力が入ってしまいましたね」

そう言って笑う二人。

【ソードリキャスト減少Ⅲ】という『反則』スキルで、大剣攻撃の乱舞を可能にする少女、蘭。

そして高速の抜刀を武器とする侍、すみれ。

ラプラタ遺跡で争った、トッププレイヤー姉妹だ。

「まだよっ!」

思わず叫ぶレン。

そんな二人を狙うのは、駆け込んできた巨クマ型。

気を抜いていた二人のもとに、怒涛の勢いで飛び掛かってくるが――。

「いくぞいくぞ! いっちまうぞ――――っ!」

長い赤髪に長く派手目な爪、キラキラ光る大きな輪のピアス。

駆けてきたのは、七新星のリーダー少女アンジェラ。

「【明王斬月】!」

斬撃が飛び、巨クマ型の体勢を大きく崩す。

「待ってくだされー」

そこに続く、丸メガネにローブ姿の少女。

目にかかる長い前髪が目立つのは、摩訶羅那。

「【ドラグーンイーター】」

竜の鳴き声のような音と共に放つ魔力砲で、トドメを刺した。

「メイちゃんパーティがこんな大きなクエストに立ち向かうってなったらぁん、遊びに来ちゃうよねぇん」

「うんうんっ、その通りだよっ!」

続けてやって来たのは、エジプトの王族を思わせる金の装飾品を身に付けた、妖艶なお姉さんキュービィ。

子供のようなノリの元気少女は、短い銀髪を跳ねさせる武闘家ココ。

さらにキングマンや、アルマーダ、翔二郎。

どうやら七新星も、メイたちが世界を賭けたクエストに参加すると聞いて、我慢できずにやって来たようだ。

キュービィとココの言葉に、うなずく蘭とすみれ。

見ればこのトップ勢についてきたプレイヤーたちも、続々と集まってくる。

「へえ、この子が例のスライムか……!」

アンジェラは、紅茶をたしなむスライムを興味深そうに見つめる。

類を見ない動きのスライム少女は、トップ勢にも話題になっているようだ。

これだけではない。

「どうもー」

トップ勢の後からやって来たのは、クルクルの長く淡い金髪に、ぴょこんと出たアホ毛がなんだか可愛らしい少女。

その顔を半分近くまで橙のマフラーにうずめた、マイペースな雰囲気のメルーナ・ラブウェル。

「メルーナじゃない。めずらしいわね」

「停滞していた魔法学院の物語を進めてくれたメイたちの正念場と聞いてー、皆で来てみたー」

見れば、普段は魔法学院から出ない、クインフォード魔法学院引きこもり集団も来ている。

「皆で魔法学院制服で合わせているのが、とても楽しそうです」

「ああっ、メリーちゃんまで!」

金色の長い髪を後頭部の左右で撒いたテイマー少女は、グランダリア大洞窟で出会った従魔師メリー。

抱えた従魔は丸い身体に小さめの翼、愛嬌のある顔つきと、ふてぶてしい態度をした謎の鳥だ。

「この子も強くなったので、王都地下探索を少しでもお手伝いできればと……」

「ありがとーっ! 本当にたくさんのパーティが参加してるんだね!」

「皆メイさんに惹かれてやってきたのですね」

「そりゃーあのメイが世界を賭けた戦いに挑むなんて状況、黙って見てるのはもったいないからな」

アンジェラは、そう言って笑う。

「そうそう、もうお祭り状態だよっ!」

ココも楽しそうに飛び跳ねる。

一気に騒がしくなった王都地下。

トップ勢も多いため、過去にないほど賑やかになっていく。

やはり『あのメイたちが過去最大のクエストに挑む』という状況は、皆放っておけなかったようだ。

「あっ、壁の紋様がどんどん点灯していくよ!」

トップ勢が強敵を崩し、あとは『人数』で仕掛けを攻略しにいく。

そんな方法で起動していったのだろう、壁の紋様が次々に点灯。

そしてそのまま全ての紋様の光がつながり、巨大な壁に紋章が描かれる。

すると足元が大きく揺れ、地響きのような音と共にゆっくりと壁が下がっていく。

道は、さらにいくつかに分かれているようだ。

「さらに深部へって感じか。アイテムの補充もしときたいところだよなぁ」

「本当だね。少し心もとないかも」

消耗品の数を、気にするプレイヤーたち。

「そういうことならお任せください!」

そこにやって来たのは、すっかりメイたちのお抱え商人となったマーちゃん。

「皆さんの支援のためにやってきました! 今回はメイさんたちの大事。お代はいただきませんっ!」

「「「「おおおおおおおお――――っ!!」」」」

「ふふ、ずいぶんと太っ腹ね」

「ほ、本当ですね」

ここからはまた、パーティごとに分かれての進攻となるだろう。

やって来たマーちゃんの一言に、わき立つ王都地下。

深く広いダンジョンを進んでいくプレイヤーたちの間に、歓喜の声が響き渡った。