軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

96.有名人です!

賑やかなヤマトの大通りを進み、道を一つ入ったところにあるハウジング素材店。

暖簾をくぐると、そこには樹木を始めとした植物の苗や種がたくさん並べられていた。

「メイくらいでしょうねぇ。ハウジング関係なしに種を買いに来てるのは」

この店に来るのは、『星屑』の中に家や集会所を持っているプレイヤーくらいのものだ。

実際、ハウジングでも商売でもなく種を買っているのはメイだけだった。

「ある程度まとめて種の補充をしておきましょう。『おおきくなーれ』には何度も助けてもらったし。今度は巨木の種もいくつか持っておきたいわね」

「大きな木かぁ……楽しみだなぁ」

「メイさんの周りに一斉に木々が生える画は、すごく神秘的でした」

「……野生っぽくなかった?」

「ま、まさに密林の巫女って感じだったわよ」

「返事が一瞬遅れた!」

「花も咲けば、さらに巫女っぽくなるのではないでしょうか」

「それは可愛いかも……」

並んだ種の中から、メイは花の咲く植物のものに手を伸ばす。すると。

「む、なんだお前は?」

偉そうな雰囲気のプレイヤーと、手がぶつかった。

相手はツバメよりもわずかに小さな身長の、長い白髪の少女。

見た目は12、13歳くらいか。

どこか生意気そうな目で、メイを見上げてくる。

「おっとと、ごめんね。大丈夫かな?」

メイは目線を下げて、白髪少女に問いかけた。

「おい、子供扱いはやめろ! お前、目の前の相手が誰だか分かっているのか!?」

少女はそう言って、キッと鋭い目を向けてくる。

メイは首と尻尾を傾げる。

「聞いて驚くがいい! グラム・クインロードだ!」

胸を張って、高らかに宣言する。

「……ツバメ。たしか、トッププレイヤーの一人だったわよね」

「思い出しました。高レベルパーティのリーダーですね。もっと大人の人だと思っていたので少し意外です」

ささやき合うレンとツバメ。

レベルが高い、またはイベント等で非凡な活躍を続けたプレイヤーは、何かと名前が知られるようになる。

グラムはその中でも、よく知られた有名プレイヤーの一人といえた。しかし。

「わたしはメイです。よろしくおねがいしますっ」

7年ジャングルに住んでいた少女には、初対面だし初耳だ。

メイは、ただただ素直に自己紹介をしてみせた。

「……? おい、私はグラムだぞ!」

「グラムちゃん。よろしくねっ」

対してメイは、ペコっと元気に頭を下げる。

「よーく聞け、もう一度言うぞ。グラムだ! グラムだぞ!」

「うんっ、グラムちゃんだねっ」

「ヤ、ヤマトにいながらグラム・クインロードの名を知らないだと……もういい! 行くぞ!」

ぷんすかと、おかんむり状態で踵を返すグラム。

そして不意に、その足を止めた。

「そうだ、お前メイとか言ったな。もちろん今回のイベントに参加するんだろう?」

「んー、どうだろう。まだ分からないかな?」

「参加しろ。そして『地』軍に入るのだ」

「『地』軍?」

「その時お前は、我が恐ろしさに震えることになるだろう」

そう言って得意げに「わっはっは」と笑うと、グラムは店を出て行く。

「あはははは、ごめんね。根はいい子なんだけど、結構キャラに入り込んでるところがあってさ」

頭部と脚だけに西洋鎧を装備した、ポニーテールの少女が可愛らしくウィンクしてみせる。

こちらは見るからに、メイたちと同年代といった感じだ。

「そうなのかな? 可愛くていい子だったよ」

「本当? どうやら君も、負けじと面白い子みたいだね。私はローラン。よろしくね」

「メイですっ。こちらこそ何卒よろしくお願い申し上げます。こっちは友だちのレンちゃんと、ツバメちゃんです」

「あはは、これはどうもご丁寧に」

ローランも、丁寧に頭を下げる。

「おいローラン、なーにやってんだ。ハウジングの続きやんだろ? とっとと戻ってこいよ」

そこへ入って来たのは、長い金髪を雑に結んだちょっと不良っぽい雰囲気の少女。

彼女もまた、メイたちと同じくらいの年齢に見える。

「……行くぞ」

居並ぶメイたちを見て、わずかに驚いたようにした後「早くしろよ」とローランに向けて言葉を続けた。

「はーい。それじゃまたね」

爽やかに手を振って店を出て行くローランに、メイも元気よく手を振り返すのだった。

「……今の、グラムの仲間たちだよな」

「やっぱイベントに出るつもりなんだな。こりゃ今年もグラムがいる天軍の圧勝だな」

店の出入り口で様子を見守っていた通りすがりのプレイヤーたちは、思わぬ有名人の登場に視線を奪われたままだった。