作品タイトル不明
953.帰還即再会
「ええーっ! 帰っちゃうのーっ!?」
「そんな……」
「うそでしょ……!?」みたいな顔をするまもり姉と母に、笑うさつきたち。
昼過ぎのゆっくりタイムを、まもり母姉と一緒に過ごしたところで帰宅の時間となった。
「あまりに短いお祭りだった……」
ガクリと崩れ落ちたまもり姉は、悲しそうにうつむく。
「それなら我が家に伝わる家宝を、さつきちゃんに持って帰ってもらおうかな……」
「そんな大事な物を、いいんですか……っ!?」
驚きの表情を見せるさつきを前に、そう言ってまもり姉が立ちあがる。
そしてスッと、つけていたパーティーサングラスをさつきにかけた。
「何を家宝にしてるんですか」
もはや言わずにはいられない可憐。
「こんな大事なもの、本当にいいんですか?」
「大丈夫……もう一つあるから」
普通に取り出した、二つ目のパーティーサングラスをつける姉。
「ちなみに私は昨日、お母様からもらいました」
振り返ると、すでにつばめはパーティーサングラスを装着済み。
「これまでまもりは、お姉ちゃんが連れてきたお友だちを前に、部屋で息をひそめてることが多かったけど、今度はずっと楽しそうだったね」
うれしそうに笑う、まもり母。
家宝の在庫処分を行った結木家の2人。
結局6人全員が浮かれたサングラスという状況に、可憐とまもりは苦笑いを浮かべるのだった。
「またおいでよー! さつきちゃんたちならいつでも歓迎だよ!」
「はいっ!」
「お世話になりました」
「とても楽しい時間でした」
家の前まで見送りに出て来た母姉に、ブンブンと手を振って駅へと向かう。
「あ、あの……」
その道すがら、まもりが意を決したように切り出した。
「本当に楽しい時間でした……っ! ま、また皆さんと一緒に…………合宿がしたいです……っ!」
「しましょうよ。次はどこで集合になるのかしら」
「今から楽しみですね」
「うんっ!」
笑い合うさつきたち。
四度目の合宿はこうして、賑やかなまま終わりを迎えたのだった。
◆
「京には、他にもお店がありました……っ」
京の飲食店はスイーツだけでなく、和食専門の店も作られていた。
メイたちが帰り、寂しくなったまもりはいくつかの店を回り、そこでもしっかりと商品を吟味。
「っ!!」
しかしその足がピタリと止まる。
前からやって来るのは、広報誌を手にしたプレイヤーたち。
まもりは建物の陰に隠れて、やり過ごす。
この広報誌プレイヤーたちがまもりを見つければ、もちろん駆け寄ってくるだろう。
だが、まもりが隠れたのは『捕まる』と考えたからだ。
メイたちが自分をパーティの一員として考えてくれているのは感じられたが、それ以外のプレイヤーがそう思っているはずがない。
「と、取り囲まれる可能性があります……っ」
まもりの圧倒的な防御力を前に、もはやそんなことを試そうとする人すらいないだろうが、それに関しては今もまるで信じられていないのだった。
見事な隠れぶりを見せたまもりは、広報誌プレイヤーたちが去ったのを見て再び歩き出す。
「ここにもお店が……!」
見つけた店舗に、新たな商品を発見。
今後の冒険時に取り出す食べ物として、良い物が見つかった。
四人一緒にいただくとなれば、また楽しい時間になるだろう。
その時を想像して、ついつい足取りも軽くなる。
「まもりちゃんが、スキップを……!」
「ふあああっ!? メイさんっ!?」
そこに現れたのはメイ。
美味しいものスキップを見られて、まもりは顔を赤くして恥ずかしがる。
「さっき合宿から帰ったばかりなのに……!?」
「よくある話よ」
「レンさん!?」
「はい。現実では解散、ここで再会というおおよそいつもの流れです」
「ツバメさん!?」
当たり前のようにやって来たレンとツバメ。
そして再会に全然驚かない様子に、感嘆する。
「それにしても、一部とはいえ荒廃した京の雰囲気はまた味があるわねぇ」
「そうだねぇ」
「そうですね」
「せっかくだし、今度は夕景の京を眺めながらお茶でも飲みましょうか。抹茶を持ち出して飲めるお店もあるみたいだし、今度はお花見でどう?」
「いいと思いますっ!」
「と、とてもいいと思いますっ!」
「桜と廃墟の組み合わせも、見られたりするのでしょうか……!」
飲食に強いまもりによって、増えた新たな楽しみ。
「それではいきましょうっ!」
さっそくメイは、元気よく歩き出す。
「まもりの防御と美味しいもの探しは、すっかり私たちに無くてはならないものになったわね」
まもりの背を押しながら、つぶやくレン。
いつも通りの、合宿直後の再会。
今夜もまた、楽しくなりそうだ。
「ねえねえ見た? 忍者とか侍の組合にも変なクエスト票が出てるんだって! 見に行ってみようよ!」
「世界中に白紙のクエスト票が貼られてるらしいぞ!」
「マジか! これは何か起きそうだな! 世界規模の謎クエストとか、初めて聞いたぞ!」
そんなメイたちとすれ違っていく冒険者たち。
京のクエストの終焉と共に、動き出した何か。
その事実にメイたちが気づくのは、もう少しだけ先のことだ。