軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

951.太陽は昇る

「すごい展開だったな……!」

「京の話だけでなく、大きな展開も同時に動いてるんだな」

「いやまずは八岐大蛇戦だろ! 首から首に駆けて跳び回るって、想定外の戦いだろ!?」

「八岐大蛇を相手にする時、想像はしても実現はできないやつだよな!」

「さすがぽよ――っ!」

「上級魔法ナイトメア……まさに使徒長殿に相応しき魔法だ……!」

各所に隠れるようにして見学していた掲示板民も、八岐大蛇の首から首へ跳んでの戦いから、組織の登場という展開に大喜び。

スライムは、興奮にバインバインと飛び跳ねる。

「あらためて、ありがとうございました。まもりさんのおかげで生き残ることができました」

「いいいいえいえいえっ! 斃れるならまずは私みたいな役立たずからがベストです……っ!」

「本当にまもりの防御は、戦いの要の一つね」

「うんうんっ!」

「いいいいいえいえいえっ! 私なんかいない方が――っ!」

「……このお礼は、おにいちゃん行きつけの和菓子店の一品で」

「何度でも、盾になります……っ」

溶岩流を受けることを選んだまもりの選択が、全員生存での攻略を実現させるための岐路となった。

無事に勝利をつかんだ四人は、自然と笑い合う。

そしてそんな四人の姿に、癒される観戦者たち。

「九尾を退けるほどの実力を持っていることは知っておったが、まさか八岐大蛇まで片付けてしまうとは……」

思わず感嘆していたたまちゃんは、思い出したかのようにハッとする。

「うむ! やはりこの目に狂いはなかったな! 見事じゃったぞ!」

そう言って、得意げに尻尾を震わせた。

「よくやってくれた」

するとそこにやって来たのは、葛葉と明光。

どうやら戦いの終わりを感じ取り、御所を出てきたようだ。

「京は……いやヤマトは、汝らによって救われた」

凛々しい目と眉をした明光も、この瞬間は年相応の嬉しそうな顔を見せる。

「お見事でしたな!」

相変わらずダレている犬神を抱えた葛葉も、脅威的な戦果に興奮気味だ。

「このような未曾有の危機、ぬしらがおらなければ乗り越えられなかったの」

「神話のごとき戦い。これより汝らの名は、武勇を誇る神のように語り継がれていくだろう」

「えへへ、照れちゃうね」

「ふふ。その際は『燕命』と書いて、ツバメノミコトみたいな呼び方になっていくのかしらね」

「おおーっ! カッコいいー!」

「まもりは『守大御神』(マモリオオミカミ)とか『護尊』(マモリノミコト)みたいな感じね」

「お、恐れ多いです……っ」

「……なるほど」

「どうしたの?」

ツバメが何か考えていることに、目ざとく気づくレン。

「いえ、この場合レンさんが『暗黒大神』(アンコクオオミカミ)や『闇命』(ヤミノミコト)になるのかなと思いまして……」

「わあーっ! カッコいいっ!」

「はいこの話終わり! 本当に可能性があるからここで終わり!」

むしろ京に新たな厄災を持ち込みそうな名称に、即座に話を打ち切るレン。

「あははははっ」

「メイも『明命』とか『命之大御神』ならいいけど、十中八九『野生児尊』(ヤセイジノミコト)とか『密林大御神』(ミツリンオオミカミ)になるわよ!」

「終わりましょう! この話は今すぐ終わりましょうっ!」

「ち、ちなみにメイさんは、何だったら良いのですか?」

「『珈琲大御神』(コーヒーノオオミカミ)とかかな……?」

右手にコーヒー豆を乗せ、片手でカップを持つ西洋かぶれな菩薩像を想像して、うっかり噴き出すツバメ。

一方まもりの脳内には、腰に手を突いてコーヒー牛乳を飲む如来像の姿。

どちらでも、京の町がコーヒールンバになりそうだ。

「汝らにはずいぶんと助けられてしまったな。あとでまた北西殿に出向いてくれ。直々に礼がしたい」

明光はそう言ってほほ笑む。

「これからは、町の修復に忙しくなりそうじゃな」

「まったくだ。できれば汝らに手を貸してもらえると助かる」

「私は一向にかまいませんぞ。いつまた蘆屋が良からぬ公家と共に動き出すか分かりませんな」

「むっふふ、良いだろう。だがこの宇迦之御魂を手懐けようというのであれば、相応の報酬が必要じゃぞ」

たまちゃんが笑いながらそう告げると、そこに猛長親王たちもやって来た。

「ならば俺たちも、共に戦わせてくれ」

「僕からもお願いします。我々はヤマトを守るために、もっと力をつけなくてはならないようです」

「武神のごとき強さを誇る冒険者たちがいなくなった後も、町を守れるようにねぇ」

「俺は大きな勘違いをしていた」

「自惚れた我らでは、京のために戦うこともできませんでした」

「足りないなら、力を合わせて戦う方がいいわねぇ」

どうやら今回の危機に役立てなかったことが、彼らの認識を変えたようだ。

「ああ、よろしく頼む」

明光がそう言うと、差し込んできた陽光が京の町を照らし出す。

「せっかくの良き朝だ。また一つ、のんびりと風呂に浸かりにでも向かうとするか」

すると明光は、目を細めながらそう言った。

「こういうタイプのエンディングを見るのは、久しぶりだなぁ……」

「メイちゃんたちの戦いは規模が大きいから、こういうやり遂げた感の大きいラストを迎えるんだよな」

いまだかつて見たことのない見事な町の壊れ具合と昇る太陽のコントラストに、観戦者たちはあらためて息をつくのだった。