作品タイトル不明
937.呪符地獄です!
ツバメの放った【斬鉄剣】で巨虎は真っ二つに両断され、呪符を散らして消える。
舞い散る呪符の雨に、思わず目を奪われるメイたち。
しかし敵のHPは、まだ7割を残している。
「集れ【呪符地蔵】!」
陰陽師が再び先手を打つ。
大量の呪符の機関銃が怒涛の勢いで飛来し、まもりは盾を構えて防御に回る。
「【地壁の盾】!」
札が次々床に突き刺さっていたのを思い出し、しっかりと盾で受けるが――。
「…………?」
覚える違和感。
呪符は確かに盾を打ち付けているが、弾いた呪符が落ちない。
「っ!?」
そして気づく。
呪符は盾にびっしりと張り付いていた。
その量は、元の素材が見えないどころか、盾を二枚三枚重ねて持っているかのように厚い。
「【呪符地蔵】……そういうことですか……っ!」
恐らく盾などを持たずに喰らうと、体中に呪符が張り付き『ミイラ』状態になってしまうのだろう。
こうしてまもりの盾が、呪符の巣のようになったところで――。
「爆ぜよ!」
右手で印を結ぶのと同時に、盾に張り付いた呪符が爆発炎上。
「きゃあああっ!」
ダメージこそなかったものの、まもりは派手に転がっていく。
大きく上がる黒煙に、遮られる視界。
レンは杖を構え、メイはまもりへの追撃がないか意識を集中。すると。
「「っ!?」」
敵陰陽師は、黒煙に紛れて新たな札を投じていた。
メイは肩に、レンは額に呪符が貼り付く。
輝き出す呪符に、爆発を予想して思わず目を閉じる。
しかし張り付いた札は、攻撃用ではなかった。
「【封】!」
「スキルを封じる札もあるの!? 効果は……上級魔法停止!?」
「ああっ、本当だ! 剣のスキルが使えなくなってるーっ!」
まさかの事態に、悲鳴を上げるメイとレン。
メイたちのスキルを大きく封じた敵陰陽師は、ここで再び攻撃に入る。
「喰え【呪符龍】! 急急如律令!」
大量の呪符が集まり、形作る龍。
蛇型の呪符龍が、猛烈な勢いで喰らいつきにくる。
「ここは私が!」
前方にいたツバメはこれを引き受け、連続の喰らいつきを後方への連続ステップでかわす。
「【投擲】!」
そして後方に下がりながらの【雷ブレード】
見事に呪符龍に刺さるが、札製の竜に効果はなし。
「くっ! 【スライディング】!」
その隙を突き、真正面から飛び掛かってくる呪符龍。
これをツバメは、すべり込みで回避する。
「【反転】【アクアエッジ】【八連剣舞】!」
振り返りと同時に放つ水刃の八連撃は呪符龍を斬り裂くが、それでも身体の一部がはく離した程度。
「もっと火力が高くないとダメですか……っ!」
相性の悪さに、悔し気に息をつくツバメ。
硬直中ゆえに、真正面から迫る呪符龍の攻撃に対応できない。
おとずれた危機。
「犬神さんっ!?」
ノロノロと飛び出してきたのはなんと、犬神だった。
まさかの事態。
迫るトラックの前に飛び出してきてしまったかのような状況に、ツバメは思わす悲鳴を上げる。
「ガルルルルルル――――ッ!!」
直後、巨大化した猛犬が呪符龍の顔面に喰らいつき、そのまま噛み砕いた。
次の瞬間犬神は元の姿に戻り、龍を形作っていた大量の呪符が弾け散る。
「チッ、化物め……っ!」
それでも敵陰陽師は、攻撃の手を止めない。
さらに術を使用し、攻勢を続ける。
「喰い尽くせ【呪符双龍】! 急急如律令!」
すでに無数の札で埋まった床から、格子状の輝きが浮かび上がる。
次の瞬間、呪符で作られた巨大な龍の頭部が足元から突き上がった。
「うわっ! 【ラビットジャンプ】【アクロバット】!」
「っ!」
先ほどの龍をさらに上回る巨大な頭部。
メイはこれを、後方への回転跳躍で回避する。
レンもなりふり構わない飛び込みで、足に呪符龍の牙を受けるにとどめた。
すると新たな呪符龍はすぐさま崩れ、再び呪符の海に帰る。
「に、二体同時はちょっと驚くわね……!」
そう言ってレンが息をつきながら、三歩程下がった瞬間。
「レンちゃんっ!」
落陽殿の壁に貼り尽くされた呪符から、再び龍が生まれ出る。
「きゃああああっ!!」
喰らいつきを受けたレンはそのまま押し倒され、呪符の散開に巻き込まれた。
そのまま跳ね転がり、3割超えのダメージ受ける。
ここでまもりは追撃を止めるため、レンのもとに急いで駆けつけるが――。
「ッ!! 【地壁の盾】!」
慌てて盾を真上に向ける。
しかし天井から降ってきた呪符龍は、そんなまもりごと飲み込み爆発。
「きゃあああああっ!」
2割近いダメージを与えて吹き飛ばした。
この状況でも、敵陰陽師は右手を構えたまま。
落陽殿内のどこからでも襲い掛る、二体の巨竜。
始まる三人のにらみ合い。
動いたのは、またも犬神だった。
メイとツバメは、即座にうなずき合う。
陰陽師目がけて駆ける犬神に、天井から喰らいつきにくる呪符龍。
「ガルルルルルル――――ッ!!」
犬神は巨大化し、上方から迫る呪符龍の横っ面に噛みつき床に叩きつける。
見事な一撃。
しかし一体目の動きはオトリ。
犬神を狙った二体目の呪符龍が、真横から喰らいつきにいく。
隙を完全についた一撃は、回避不可能だ。
「【装備変更】! 【ゴリラアーム】!」
これに対応したのはメイ。
両手で抱えた【王樹のブーメラン】を力いっぱい振り回し、呪符龍の頭部を粉砕する。
「【加速】【リブースト】!」
二体の龍が犬神とメイの連携で砕け散り、生まれた大きな隙。
「【稲妻】!」
ツバメはメイと犬神の間を超加速で駆け、【村雨】による斬り抜けを叩き込む。
「【反転】【雷光閃火】!」
すぐさま振り返り、武器を短剣に変更。
見事な刺突が決まり、短剣から派手に火花が散る。
そして爆発。
吹き飛んだ敵陰陽師のHPは、残り3割強というところまで減少。
ツバメは、クルクルと飛んで戻ってきた短剣を受け取った。
「【呪符双龍】を破るとは大したものだ。これだけの実力者、一体どこで見つけたというのだ……だが!」
起き上がった敵陰陽師は、両手で印を結ぶ。
「――――氾濫せよ【激流符】! 急急如律令!」
「「「「ッ!?」」」」
天井から、ダムの放流を思わせるほどの呪符が流れ込む。
尋常でない量の札は全てを押し流し、メイたちは落陽殿を流れ出た。
「わあああああーっ!」
札のウォータースライダー。
その光景はかつてないもので、つい目を輝かせてしまうメイ。
「妖しい雰囲気だというのに、呪符を使う戦いは見ていても楽しいですね」
「は、はひっ」
「正直、ちょっとだけワクワクしてるかも」
一方ゴロンゴロンと転がり出てきた犬神は、またもだらけモードだ。
「【風】!」
「「「「っ!!」」」」
呪符が、烈風に吹き飛ばされ雨となる。
舞い散る札の中から出てくる陰陽師の姿に、四人はワクワクしながら武器を構え直す。
「砕け【呪符悪鬼】―――― 急急如律令!」
現れたのは高さ10メートルに届こうかという、呪符の鬼。
手にした呪符製の『まさかり』を振り払う。
「【ラビットジャンプ】!」
「【跳躍】!」
その威力はすさまじく、メイとツバメは即座に跳躍で回避。
「【地壁の盾】!」
まもりも即座に防御態勢を取るも、大きく弾かれ下がった。
「【連続魔法】【フレアアロー】!」
その隙を突き、後方のレンは炎の矢で攻撃を仕掛けるが、呪符鬼を焼くにはやはり火力が弱い。
振り下ろされるまさかり。
呪符を巻き上げ視界を塞ぐと、敵陰陽師は足元に手を突き術を発動。
「【爆】!」
舞い上がった呪符を、爆発させた。
「「ッ!!」」
メイとツバメは慌てて回避に回る。
ツバメは爆発の余波を受けて転がるも、慌てて飛び込み次の爆発をかわす。
「敵は呪符製で斬撃に強い。メイの剣技は封印中だし、私も上級魔法が使えない。それならちょっとイチかバチか感あるけど……運でも試してみましょうか」
ここまで散々、陰陽師の呪符バトルというカッコいいやつを見せられたレンは、その手に【魔導経典】を取る。
「上級魔法の使用は禁じられているけど、『魔法効果を持つアイテム』の使用だったらどうかしら?」
どんな魔法を引くかは、まさに運次第。
思い切ってページを開き、ドキドキしながら文言に目を向ける。
「【ドラゴニア】……?」
そしてそのページに書かれた魔法が、発動する。
「……わああああーっ! レンちゃんすっごーい!」
「驚きました……」
「レ、レンさんが……ドラゴンに!」
レンはその姿を、一体の黒竜に変えた。
「ドラゴン化する魔法なんてあるんだ……」
何気にしっかりと黒い竜になっているが、さすがにツッコミには至らない。
「いいわ、これならさすがに火力不足とはならないでしょう?」
二足歩行型のドラゴンになったレンは、豪快な飛び掛かりから体当たり。
呪符悪鬼を弾き飛ばし、大きく体勢を崩させた。
そこから尾を振り上げ、呪符悪鬼の左腕を弾き飛ばす。
さらに回転して放つ払いで、胸部を払う。
二歩ほど下がった呪符悪鬼は、手にしたまさかりで反撃に出る。
放つ払いに、黒竜レンは防御を選択。
「やっぱりこの大きさだと回避が難しいけど……そもそもの防御が高い……!」
続く二連撃をしっかり防御で受け、最後の振り降ろしは横移動で回避。
巻き上がる呪符の中、レンは【爆炎弾】を吐き出し反撃。
これを喰らった呪符悪鬼は、身体を焼かれて大きくのけ反った。
「今っ!」
レンは距離を詰め、呪符悪鬼の首元に喰らいつく。
口内に炎の輝きが生まれると、そのまま爆発炎上。
「おおおおーっ!」
ついに呪符悪鬼は、ボロボロと焼け落ち消えた。
「怪獣大決戦のようです……!」
歓喜するメイと、感嘆するツバメ。
これまで散々龍種とも戦ってきたせいか、その動きも見事だ。
「呪符悪鬼ですら、かなわぬとは……だが!」
レンドラゴンの前に消えた呪符悪鬼を見て、驚愕する敵陰陽師。
二本指で格子を描く。
「これで終わりだ――――【呪符暴嵐】!」
放つ最後の一撃は、呪符全てを用いた巨大竜巻。
全てを切り裂く無数の札が、渦を巻く光景は圧巻。
「あんなものをぶつけられたら、無事では済みそうにありませんね」
これにはメイも思わず息を飲むが、しかしレンは動かない。
胸元を大きく膨らませると、その口内に再び煌々とした輝きを灯す。
「それならこっちも、必殺の一撃でいかせてもらうわ! ――――【烈火紅蓮砲】!」
噴き出すブレスは、赤熱の豪火。
そのすさまじい火力は、呪符の竜巻を容赦なく焼き尽くしていく。
京の夜空に高く炎を巻き上げ、舞い散る火花が降り注ぐ。
「今よ!」
「りょうかいですっ!」
「はいっ!」
思わず見惚れていたメイとツバメは、レンの合図に走り出す。
「【シールドストライク】!」
まもりの投じた盾が、敵陰陽師を打つ。
「【電光石火】!」
即座にツバメが続き、斬り抜けで連携とする。
そこに駆け込んできたのはメイ。
「【装備変更】【キャットパンチ】! パンチパンチパンチパンチパンチパンチ!」
【狐耳】のメイが【狐火】パンチを叩き込み、そのまま右手を大きく引く。
「【虎爪拳】!」
「ぐああああああああ――――っ!!」
最後は振り払う爪の一撃。
敵陰陽師は転がり、HPゲージが消し飛び消えた。
「二度続けて当たりの魔法だけど、それならやっぱり『栞』が欲しかったわね……!」
「本当にすごい魔法ですね」
「カッコいいよー!」
姿を戻したレンのもとに駆け寄ってくるメイたち。
四人はそのままハイタッチ。
「犬神ちゃんもありがとー! かっこよかったよ!」
メイが犬神の前に手を出すと、お手のような感じで手を出した。
メイは犬神の手をつかんでブンブンと握手する。
「……くっ、これ以上は御免だ! すでに報酬分は働いた!」
敵陰陽師は呪符の力を使い、影に消えるようにして逃げ去って行った。
「ふう、思ったより派手な戦いになったわね。ここらで一息つきましょうか」
「それがいいですね」
「はひっ」
「りょうかいですっ!」
こうして明光天皇を狙った陰陽師を打倒したメイたちは、切りのいいところで一息つくことにした。