作品タイトル不明
916.京の町のレース
衣装と構図による、チラシのプロデュースクエスト。
楽しく達成した四人は、京の通りへ戻る。
すると何やら、夜の町が賑やかになっていた。
「あっ、メイちゃん!」
「メイですっ! これって何が始まるんですか?」
「人力車競争だよ」
「わあ、面白そうっ!」
見れば石畳の通りに、十台ほどの人力車が並んでいた。
どうやらこれを引いて、夜の京の町を駆け抜けるレースのようだ。
すでに観客たちも沿道に集まり、ちょっとしたお祭りのようになっている。
「これは結構、コンビネーションが大事なんだよな」
「パーティメンバーでも良いし、NPCと組んでも良いんだが、客席のヤツが落ちたら負け。人力車が壊れても負け。そして……妨害ありだ」
「かなり荒っぽくてね。一部の攻撃系スキルが使用可能。客席のポジションなんかは主に攻撃担当になるんだ」
「そして車夫は、加速系スキルを始めとした移動スキルを使用することになる」
「なるほどー」
「ちなみに勝負は1周で、『車夫と客』の変更が必須。4人での参加なら半周で交代になる感じだな」
「面白そうですね」
「せっかくだし、参加してみる?」
「いいと思いますっ!」
「メイさんたちと一緒にレース……どんなことになってしまうのでしょうか……っ」
「おおっ! メイちゃんたちが参加するってよ!」
「マジか! それなら俺も出る!」
「私たちも出ましょう!」
発表されたメイたちの参加で、現場は大きく盛り上がる。
こうして参加者は急増。
一気に40台の人力車が、石畳の上に並ぶことになった。
参加をアイコンで申請すると、大きな二つの車輪がついた、黒の漆喰製の人力車を車夫が持ってきてくれた。
「ありがとうございますっ」
「前半にツバメとまもり、後半にメイと私の形でどうかしら」
「りょうかいですっ!」
「では、いきましょう」
「は、はひっ」
ツバメが車夫、まもりが客席の位置で準備完了。
石畳の上に引かれたラインに並び、さっそくスタートの合図を待つ。
「へへっ、お嬢ちゃん。ここへは見学に来たのかい」
「ここはお子様の遊びに来る場所じゃねえぜぇ」
しっかりと堂に入った悪役プレイヤーの登場に、ツバメが「さすがです……!」と息をつく。
一方まだこのノリに慣れていないまもりは「ひいっ」と、ちゃんと驚いていた。
「それでは京の人力車レース……ただいまより開始いたします!」
思わぬ参加人数になった人力車レース。
走り出す緊張。
NPCが登場し、掲げた手を振り下ろす。
すると炎の魔法が撃ち上げられ、ドン! という爆発音を鳴らした。
「「「うおおおおおおおお――――っ!!」」」
それに合わせて、参加者たちが一斉に走り出す。
コースは、京の道を使った正方形のルートを一周。
ただし川の横を通る部分、林を駆け抜ける土のルートもある点には要注意だ。
「邪魔だ邪魔だ邪魔だぁぁぁぁ!」
ツバメたちの前方に飛び出してきたのは、甲冑姿の侍。
「【ぶちかまし】!」
並んだ人力車に肩をぶつけに行くような、強烈な横移動で突撃。
「ぐおおっ!?」
するとぶつかられた人力車は大きく横に流れ、民家の壁に擦れて火花を上げた。
見れば耐久ゲージも、2割ほど削られている。
邪魔者をどかして進む侍は、そのまま突き進んで次の狙いをつける。しかし。
「【エクスプロードアロー】!」
「なにぃぃぃぃっ!?」
斜め後方から飛んできた矢が炸裂。
その火力で転倒した侍の人力車は4割ものダメージを受け、大きく後退することになった。
「いきなり激しい戦いが始まっています……っ!」
「は、激し過ぎますっ!」
まさに何でもありの戦いに、思わず息を飲むツバメとまもり。
どうやら乗り手が『遠距離攻撃』型だと、攻撃性能が高くなるようだ。
「最初のコーナー、きます!」
進む先にあるのは、90度の曲がり角。
「うおおおおおおーっ!」
【技量】勢はこのコーナーを、車輪を滑らせるドリフトでインを抜けていく。
「お、おおおおおっ!?」
一方高速でコーナーに入った【敏捷】勢の人力車は、曲がり切れず壁にぶつかりゲージが減少。
それを見たツバメは、しっかり速度を落として丁寧にコーナーリング。
「……なるほど、大体分かりました【加速】!」
システムを把握し、直線に入ったところで速度を上げる。
こうして一気に、順位を10位まで上げることに成功。
ここで後ろから聞こえてきたのは、激しい衝突音。
「グハハハハ! 邪魔だ邪魔だ! 非力なマシンは潰れて消えろォォォォ!! 【ブレイクタックル】!」
「「ぎゃああああーっ!」」
本来はタンクが敵陣に特攻する際に使われる、突撃スキル。
その凄まじい勢いに、二台の人力車が吹き飛ばされて転がった。
民家の壁に激突した人力車たちは、なんとそのまま失格となった。
「ギャハハハハ! これだからレースはやめられねえぜぇ!!」
「あ、あの人たち、レースじゃなくて人の人力車を破壊することを楽しんでます……っ!」
「あのタイプのレーサー、人力車レースでも出てくるのですか!」
レース物に必ずいる『敵マシン破壊系』の悪役に、ツバメは感嘆する。
「くっくっく、次は貴様らがこのワイルドシャークの餌食になるのだぁぁぁぁ!」
「っ!」
そう言って全身甲冑の戦士は、ツバメたちに宣戦布告。
ワイルドシャークは横に並び、得意のスキルを発動する。
「【ブレイクタックル】!」
「【加速】【リブースト】!」
しかしツバメは、超加速でこれを回避。
「【ストライクシールド】!」
するとすぐさま、まもりが反撃の盾を投じる。
「チッ! やりやがる!!」
人力車のホロ部分に当たった盾で、敵人力車のゲージは3割ほど減少。
「おい、いくぞ!」
「ああ、任せておけ!」
しかし甲冑戦士は止まらない。
乗客の魔導士と合図をかわし、再び速度を上げた。
「いくぞ! 【バーストタックル】!」
「炎が!?」
身体をぶつけて敵を弾き飛ばすスキルの中でも、爆炎を乗せることで大きな効果を発揮するそのスキル。
燃え上がる炎と共に、ツバメたちに突撃。
大きな爆発を巻き起こし、炎と煙が舞い上がる。
「はっはっは! 相手が悪かったな!」
思わず勝ち名乗りを上げる甲冑戦士。しかし。
「……いや! まだだ!」
客席の魔導士が叫んだ。
「それは――――残像です」
爆発に飲み込まれたのは、ツバメたちの【残像】だった。
「な、にぃぃぃぃぃぃ――――ッ!?」
炎を突き破るようにして追い上げてくるツバメたちに、驚きの声を上げる甲冑戦士。
「見事な回避……! だが俺もいることを忘れてもらっちゃ困るぜ! お前たちはここまでだ【グレートファイア】!!」
その杖に巨大な炎を灯し、ツバメたちに放つ。
迫る大きな火炎弾、喰らえばコースアウト確実だ。
「マ、【マジックイーター】!」
しかし魔法による馬鹿正直な攻撃は失敗に終わる。
まもりが構えた盾は、迫る火炎弾を吸収した。
「え……ええっ!?」
「炎が、消えた……っ!」
「お、お返ししますっ! 【グレートファイア】!」
「「う、うわああああああああ――――っ!!」」
まさかのカウンター爆炎に、戦士と魔導士のコンビは派手に転がってコースアウト。
7割にも至るダメージを受け、大きな後れを背負うことになった。
「お見事です!」
ここでツバメたちは、二つ目の角を曲がる。
あとはメイたちとの中継地点まで、一直線だ。
「一気にいきます! 【疾風迅雷】【加速】【加速】【加速】っ!」
ツバメは連続で加速し、一気に順位を上げていく。
「すごーい! ツバメちゃん頑張ってー!」
そのごぼう抜きに、思わず拳を突き上げるメイ。
ツバメはそのまま、5位まで順位を上げた。
そして先頭集団につける形で、中継地点にたどり着こうとした、その瞬間。
「――――くくく、真の勝者は敵を利用して隙を突くのですよ」
「「ッ!?」」
走る閃光。
目くらましの光魔法が炸裂し、ツバメは視線をそらすことでこれを回避。
しかし驚きと共に目を閉じた一台の人力車が大きく逸れて、ツバメたちに激突。
そのままコース端の溝に車輪がつかまり、二台とも転倒した。
「それでは失礼いたしますよ、雑魚の皆さん【ラディカルスピード】!」
そんなツバメたちの横を、笑いながら通り過ぎていく人力車には、余裕を見せる細剣の麗人。
転倒した両者をあざ笑うようにしながら、駆け抜けていった。
様々な手で、ライバルを蹴落とす人力車レース。
どうやら上位は、かなり先鋭化しているようだ。
5位で交代できそうだったツバメは、30位付近まで転落してしまった。
「すみません、あとお願いします……っ」
「ええ、やってやるわ!」
「おまかせくださいっ!」
中継地点直前の攻防を目の当たりにして、気合を入れるメイとレン。
こうして野生の王と、闇の魔術師のチームがコースに解き放たれた。