軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

898.二度目ですから

「メイ!」

「レンちゃんっ!」

後を追ってきたレンとの再会に、メイはすぐさま駆けつけ飛びつく。

「戦闘はあった?」

「おわったよ! レンちゃんは?」

「こっちもどうにか無事、後はツバメとまもりだけど……」

「二人とも、ここに来そうだよ!」

メイの猫耳がピクリと動く。

すると盾を前面に出したままのまもりと、それをけん引するツバメがやって来た。

「皆無事みたいね」

「ひ、ひやひやしました」

「結晶を普通に使い出すとは……侮れませんね」

四人がさっそく各々の戦いを報告し合うと、壁に背を任せたまま座り込んでいた黒仮面が、顔を上げた。

「まさか結晶兵器を用いて敗れるとは……だがすでに我らは私兵を召喚している。この場所になだれ込むのも、時間の問題だろう」

「兵士たちが、ここに集まってくるっていうの?」

「先にゼティアへのルートにたどり着くのは、どちらかな」

そう言って、かすかに余裕を含んだ吐息をこぼす。

「どうやら、のんびりしている暇はなさそうね」

敵が人数を送り込んでくるというのは、制限時間の類とも考えられる。

「急ぎましょう。人数の少なさは、そのまま背負う不利になります」

「は、はひっ」

「メイも何か気付いたら、遠慮なく先行しちゃって」

「りょうかいですっ」

メイが『待つ』ような状況にならないよう言って、駆け出す。

どうやら黒仮面の打倒は、先へ進むための仕掛けに直接関わっていなかったようだ。

メイたちは広いフロアの、左側に当たる区画の捜索を開始する。

しかしこの区画、似たような造りの廊下がひたすらに続き、おかしな点はあまりない。

開けられるドアは全て開いて、メイと共に内部を確認。

「何もないかも」

少なくともメイの『聴覚』『嗅覚』で、つかめるものはないようだ。

レンやツバメが『ゲームの感覚』で見回しても、明らかに意味のないコピーペーストされた部屋の作りが続く。

それでも四人は次々に、進んでは部屋を確認。

「……足音が聞こえてきたかも」

「兵士たち、本当にくるの……?」

焦りに自然と急ぐ足で、四人は続く廊下を曲がる。

「あれは! 【浮遊】!」

そんな中、ついにレンは天井に紋様の溝があるのを発見。

魔法を【低空高速飛行】から【浮遊】に切り替え上昇し、天井の紋様にタッチしてみる。

紋様は点灯しかけたものの、すぐに消えた。

「この感じ、どうかしら……」

その輝きは、切れかけの電球のよう。

しかし状況には変化はあり。

通路の正面に生まれた輝きは、ブロックの紋様に沿って走る檻型のレーザートラップ。

「この軌道は、さすがにやっかいが過ぎるわね……!」

「こ、ここは私が……っ! 【天雲の盾】!」

紋様の湾曲に沿って進むため、動くレーザートラップは回避がかなり難しい。

だがそれも『上から来る』ことは変わらない。

まもりが盾を掲げることで対応。

「ツバメ、お願い!」

「はいっ! 【加速】【リブースト】!」

レンとメイは後方へ避難。

ツバメはまもりの盾に隠れ、レーザーが通り過ぎたところで走り出す。

「【罠解除】」

そして廊下奥の紋様にタッチして、レーザートラップを解除した。

「…………」

しかし、何もなし。

「この流れで、何もないの……?」

レーザーは消えたが、道に変化などはなし。

先ほど切れ掛け電球だった紋様も、そのままだ。

ようやく見つけた、何かがありそうな場所。

「どうしたものかしら……」

ここから離れて新たな仕掛けを探すべきなのか、とどまってこの罠をもっと調べるべきか。

場合によってはメイとツバメだけ、高速移動で探査に動いてもらうパターンもあり。

黒仮面との戦闘を行ったこの階の『右側』を、あらためてメイに確認しに行ってもらうのもありかもしれない。

判断に悩むレン。

いよいよメイ以外にも、迫る敵兵の足音が聞こえ出した。

四人が並んで、次の動きに悩んでいると――。

「ああっ!」

メイが思わず声を上げた。

廊下の先を横切っていくのは、ボロボロのメイド服。

「迷子ちゃんっ!」

その名を呼ぶが、さすがにこの距離では聞こえなかったのだろう。

迷子ちゃんは、迷うことなく道を駆けていく。

「呼んで来るね!」

メイはすぐさま迷子ちゃんの後を追う。

角を曲がって、その背を確認。

メイが手を上げ、もう一度呼びかけようとすると――。

迷子ちゃんは道に沈み込むようにして、消えてしまった。

「迷子ちゃんが消えちゃった……っ! 【裸足の女神】っ!」

メイは一気に速度を上昇。

迷子ちゃんが消えたポイントまで、全力疾走。

その行動が正解となる。

その場所の紋様は前に人魚が何度か使ってみせた、水柱で地下へ進む仕掛けになっていたようだ。

メイは水柱を泳いで、一つ下の階へ。

「迷子ちゃんっ」

「メイさん!?」

「先に進む道を探してたら姿が見えたから、追いかけてきちゃった!」

意外な形での再会に、驚く迷子ちゃん。

メイは歓喜と共に迷子ちゃんの手を取って、ぴょんぴょん跳ねる。

「そうなんですか……! もしかしたら深部に向かってるのかなと思って歩いてたんですけど、正解でした!」

「よくこの道が分かったねぇ」

「はい! 前回通った道なので!」

「……前回?」

このルートは、迷子ちゃんが前回よく分からずこの遺跡に迷い込んだ時に見つけたものだ。

まさかこの場所にくるのが二度目だとは思わないメイは、首と尻尾を傾げる。

すると足元の紋様に埋め込まれた宝珠が輝きを失い、水柱も消えた。

見ればこの空間は、『大きな何か』を秘めた場所への、通路のような雰囲気がある。

「――――何者だ」

「「っ!」」

そこに現れたのは、一人の黒仮面。

どうやら他に、先行している者がいたようだ。

「……見た顔だな」

メイを見て一言。

「狙いが何かは知らぬが……我らが使命の邪魔はさせぬぞ、冒険者」

黒仮面はそう言って『水色結晶』の付いたクロスボウを、こちらに向けてきた。

「先ほど得たばかりの新たな結晶で――――貴様らを排除する」