軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

883.海底遺跡へ

「おつかれさまでした」

「おつかれさまーっ」

ミューダスのヌシを打倒したメイたちは、ひっくり返った船の底部分に集合。

大物相手への勝利に、ハイタッチで喜び合う。

「強力な魔物でした」

「か、勝てて良かったです」

「天気もまた晴れてきたわね」

戦いが終わり、迷子ちゃんも息をつく。

再び穏やかな青空に戻った、ミューダス三角海域。

すると海底の転移装置から放たれる三つの輝きが、ゆっくりと光を増していく。

三つの光点は線になり、描かれた光の三角形。

その内側が『転移の範囲』なのだろう。

「ここに飛び込むのかな?」

「そう考えていいでしょうね。思い切って、みんなで一緒に飛び込みましょうか」

「りょうかいですっ」

元気なメイの返事に、ツバメたちもうなずく。

見ればいくつかの船の残骸が作る足場の先に、倒れた大型船の姿。

五人はピョンピョンと跳ねて、その縁に乗る。

「ツバメちゃん」

メイがツバメの手を取ると、それを見たレンも迷子ちゃんとまもりの手を取った。

「っ!?」

そして最後はメイが迷子ちゃんの手を握り、五人一列に並ぶ。

メイにぎゅっと握られた手の感触に、思わずそわそわし始める迷子ちゃん。

「ツバメ、どうしたの? さっきからしきりに海面を見てるけど」

「五人一緒に飛び込んだところで、ちょうど海中から出て来たクジラに食べられるみたいな形にならないかと思いまして」

「どんなオチよそれ」

謎の心配をするツバメに、笑う四人。

メイは五人が手をつないだのをあらためて確認して、一応海中に何かいないかを確認。

各自と顔を見合わせてから、ヒザを曲げる。

「それではいきましょうっ! せええええのっ!」

続けて四人もヒザを曲げ、準備万端。

「それーっ!」

「「「「それええええーっ!」」」」

そのまま五人一緒に、転移の光の中へ飛び込ぶ。

すると光の柱が天に昇り、そのまま輝きの粒子を残して消えていく。

転移装置が止まると、そこにメイたちの姿はなく、ミューダス三角海域はゆっくりと原状復帰を始めた。

視界を覆い尽くした白の輝きが、ゆっくりと晴れていく。

やがて、足がどこかに着く感覚。

メイが目を開くとそこは――――完全な海底。

「ええええええええ――――っ!?」

メイは思わず叫んで、皆に窮地を知らせる。

「大変だーっ! おぼれちゃうよーっ!」

見上げれば、海面が遠く見えないほどの深さ。

大慌てで『空気ポイント』を探して視線を走らせるも、それらしきものはなし。

「えらいこっちゃー!」と同じところをダッシュで行ったり来たり。

そのまま両手で口を押えて、顔を青くするメイ。

「レンぢゃん……ぐうぎが……ぐうぎがぁぁぁっ! ごぼごぼ!」

「メイ、呼吸は気にしなくてもいいみたいよ」

「…………え?」

言われて気づく。

確かにここは、間違いなく海底だ。

だがその動きに水中特有の制限はなく、そもそも呼吸ゲージも存在しない。

「海底に沈んだ遺跡なのではなく、海底に住む形で使われていたのでしょうね」

「あれ、本当だ!」

メイはちょっと恥ずかしそうに「てへへ」と笑った後、軽く【アクロバット】でバク宙を決める。

地上で使うのとまるで変わらないことを確認した後、あらためて付近を見回してみる。

「きれいな街だねぇ」

海底遺跡は、これまでのものとは少し趣が違い、建築物がどこか直線的な作りをしている。

そして不思議なことに、目の前を魚の群れが当たり前のように泳いでいく。

メイが指を出すと、魚たちが指先をつついてきた。

「かわいいー」

「動物値は魚にも影響を……?」

興味深そうにするレン。

ツバメとまもりは、メイが小魚とたわむれる姿に見惚れる。

そんなメイたちの前にあるのは、大きな門。

凱旋門を思わせる造りをしているが、どこか工業製品のような無機質さもある。

そのせいか、紋様の古さと直線の新しさが混じった不思議な感じだ。

門の中に続いていく道と並ぶ建物は、やはり石材と金属が混ざったような質感。

中央の道の左右に五つずつ並んだ大きな石像は、この都市の英雄か。

そんな中、目につくのは空色の美しい結晶塊。

奥に見える神殿の、彫刻部分。

並ぶ石柱のフチ部分に見える淡い青の光が、静かに点滅を繰り返している。

その輝きはどこかゲーミングPCのようで、この演出が近未来感を出しているのだろう。

「あれが水中でも、普通にできてる仕掛けかしらね」

これまでも各所で見られてきた、結晶による仕掛け。

海底遺跡では、魚とプレイヤーが両立するシステムのためにも使われているようだ。

「やや青みがかっていますが、ここまで太陽の光が普通に届いているのも、不思議な感じです」

「さ、魚たちがたくさん泳いでいる分、寂しさはあまりありませんね」

「無事目的の場所まで来られて良かったわ。帝国の黒づくめたちが来てる可能性もあるし、さっそく見て回りましょうか。ここにも異世界のゲート『ゼティアの門』があるはずよ」

まずは遺跡の内部を歩いてみようと、歩を進めるレン。

そこに続くメイ、ツバメ、まもりの三人。

「「「「……あれ?」」」」

そして、四人全員が気づく。

「迷子ちゃんさんは……どこへ?」

たどり着いた海底遺跡。

迷子ちゃんは早くも、姿を消していた。