軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

842.新たな偽物

「さて、あのペンギンはどこに向かうのかしら」

レンとツバメに、アーリィと夜琉が一緒の第2パーティ。

こちらのペンギンロボットは、急いでいる感じはない。

余裕のある足並みでついて行くと、見えたのは四角く光る床。

「遺跡って感じがするね」

ペンギンが上に乗ると、床から浮き上がった立方体のブロックは、そのまま上の階へ。

続けて一個下のブロックがせり上がり、新たな光る床となる。

もちろんレンたちも、これに続く。

ブロックのエレベーターに乗った四人がたどりついたのは、乳白色ブロックで造られた広い空間。

「何かが待ち受けていそうだね」

ペンギンはその奥へと進んでいく。

レンたちが続けて白の空間に踏み込むと、足元が黄色く輝き出した。

やがて光は点滅を始める。

点滅は『異常』を知らせる場合に多くみられるが、床が炎を噴くというわけでもなく、やがて静かに光を消した。

「今のはなんでしょうか」

不思議にそうにするツバメ。

すると部屋奥の天井にある注射器のような金属管から、重たい液体が一滴落ちた。

「これって……」

「見覚えありますね」

透明の液体は、糊のような軟体。

ここで変化が起こる。

その液体の色が、黒と銀のマーブル模様になっていく。

「……あれって、私になるんじゃない? そうなるとさっきの光は『認証とスキャン』ってことかしら。今回は色がついてるから、完全に同じ見た目になりそうね」

「私になるとは、どういうことだ?」

「別の遺跡に、プレイヤーのコピーを作る装置があったのよ。できたコピー体はそのまま敵になる感じね」

「そういうことなんだ、なんだかちょっとドキドキするね」

「でも私ならツバメやアーリィの速度に対応できないし、夜琉の一撃は喰らえば即死もあるわ。四対一なら脅威にはなりえない」

黒に銀、そして赤が混じったところで、やはりコピーはレンだと確信。

ならば近接組で一気に攻め込めんでしまえば、問題ないだろう。

狙いが決まり、四人は液体を囲む。

しかしここで、再び異変が起きる。

「……ちょっと待って」

その様相は、変わっていく。

「こ、これは……」

『レン色』の液体に混ざり始めた紺色に、ツバメがレンの目を見る。

「だとしたら……やっかいかもしれない!」

二人が嫌な予感を覚えた直後、マーブル状の液体が大きくはねた。

「「「「ッ!?」」」」

そこに生まれた一人の少女は、長い黒髪を赤いリボンで一つに留め、銀細工のガントレットを右手に装着。

紺色の長いローブをまとい、左手には包帯、目には眼帯。

スラリとした体形にも、感じるスタイルの良さ。

そしてその手には、二本の短剣を持っていた。

「これって……!」

「レンとツバメの『合いの子』か!」

その姿に、さすがにアーリィと夜琉も気づく。

「どうやら今回は、混ぜてきたみたいね!」

「この展開は予想外でした……っ!」

見た目は完全に、ツバメとレンを足して2で割った形。

表情を感じさせない目つきで、こちらを見ると――。

「――――【でんこうせっか】」

「ッ!!」

即座の先手は、ツバメの得意技。

しかしツバメは普段メイを見ている分、この速度に対しても反応できる。

迫る斬り抜けを、しゃがみ一つで回避に成功。

「【はんてん】」

すると包囲を抜けたコピー体は振り返り、再びツバメを狙う。

接近から放つ二刀流。

この連撃をかわすと――。

「【あくまのうで】」

「ッ!!」

地面に描かれた魔法陣から、大地を突き破るように出てきた黒い腕が、ツバメを叩き潰しにくる。

ツバメはこれを、とっさのバックステップでギリギリかわして転がる。

「【白鳥乱舞】!」

この隙をアーリィは逃さない。

ツバメが距離を取ったのを確認して、真横から飛び掛かる。

「【かそく】【りぶーすと】」

アーリィの移動乱舞は、回避を許すほど甘くない。

だが、そもそも乱舞が始まる寸前に相手の後方へ駆け抜けてしまえば問題なし。

「【はんてん】【ふれあすとらいく】」

「きゃあああああ――――っ!!」

即座に振り返って放つ炎砲弾が、アーリィを弾き飛ばした。

「【かそく】【りぶーすと】」

転がるアーリィを追いかけて、コピー体は駆ける。

そして起き上がったばかりのアーリィに、一直線に接近。

「ツバメちゃんって、こんなに速いの!?」

一気に距離を詰められたアーリィには考える暇もなく、手堅く防御を選択するが――。

「ダメですっ!!」

「【らいこうせんか】」

迫るコピー体の手には、防御を無効化する【デッドライン】

「【加速】【リブースト】! すみませんっ!」

ツバメは最高速でアーリィのもとへ駆け、そのまま突き飛ばす。

「きゃあっ!」

二人はそのままゴロゴロと転がり、どうにか最悪の一撃を回避した。

「高速【誘導弾】【ファイアボルト】!」

「っ!」

即座に隙を狙いにいったレンの魔法が、ここでようやくコピー体からダメージを奪う。

しかし防御は間に合い、HPの減少は1割弱と言ったところだ。

「……攻略組でも文句なしのエースだね。こんな子がいたら」

「可愛いのにカッコ良いというのは反則だな」

その時によって少し幼くも、凛々しくも見える表情。

クールな面持ちながらも、戦闘は苛烈。

そんなコピー体に、思わずこぼれる苦笑い。

レンのようなツバメのような少女は、静かに片手を上げる。

「【ちょうこうそくまほう】【ふぁいあぼると】」

「「ッ!?」」

魔力が輝いたと認識した次の瞬間、目前に炎弾。

「なっ!?」

これを喰らって、夜琉は大きくのけ反った。

「【連続魔法】【誘導弾】【フリーズボルト】!」

追撃を阻むため、レンが放つ氷弾。

「【しっぷうじんらい】【かそく】【かそく】」

これをコピー体は、『く』の字型の二段階移動でかわして夜琉のもとへ。

「【電光石火】!」

この動きに対し、けん制をかけに行くのはツバメ。

「【りぶーすと】」

するとコピー体はこれを急加速で回避。

「【クイックステップ】!」

「【ちょうやく】」

駆け込んできたアーリィの剣撃まで、一人で三人を置き去りにして跳躍。

そのまま右手の【致命の葬刃】を振り下ろす。

「させるかっ!」

夜琉はこれを、防御することでしっかり受け止めた。

それは見事な判断だ。しかし。

「【かくしうで】」

「な、にッ!?」

コピー体の背面から伸びてきたまさかの一撃は、さすがに回避不能。

しかもその手には【銀閃の杖】

「【ふれあばーすと】」

「うあああああ――――っ!」

とっさにしゃがんだものの、爆炎は容赦なく炸裂して夜琉を吹き飛ばした。

「夜琉!」

追撃をけん制するため、駆け出すアーリィ。

「待ってくださいッ!! 【加速】!!」

同じく走り出していたツバメが、なりふり構ずアーリィをつかんで力づくで止める。

コピー体の手には【村雨】

わずかに下げた腰と、開いた足。

この状況で、コピー体の狙いは追撃ではなく――。

「【ざんてつけん】」

轟音と共に振り払われる、白のエフェクト。

豪快な剣の振りが巻き起こす風に、髪が大きく揺れる。

地に伏せたツバメはギリギリで、剣の軌道からアーリィを助け出していた。

夜琉はそのシンプルでありながら凄まじいエフェクトに息を飲み、レンは距離的にやや余裕があったにもかかわらず、思わずその場にしゃがんで防御態勢。

「……近づけば翻弄されて、離れると強力な魔法攻撃って」

「一番良い形の合体になってしまったのだな」

静かに刀を鞘に納めるコピー体を前に、アーリィと夜琉は息を飲むのだった。