軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

816.お試し新スキル!

帝国の大型クエストを終え、城を出たメイたち。

「今回の広報誌も盛りだくさんになってるわね」

そう言ってレンが取り出したのは、最新の『星屑』広報誌。

その表紙は帝国兵に扮した四人の姿。

裏表紙が帝国兵の制服を引っ掛けたスライムになっている辺りに、程よいオチが付いていてツバメが笑う。

密林帝国の程よい木を見つけて、並んで腰かけるメイたち。

ページを開くと、ディアンドル姿の四人はもちろん、城壁から落下している姿もある。

ここには注釈として、メイたちがどんなクエストを受けていたかも載っていて、掲示板組が喜びそうだ。

「動画も大変なことになってるわね。オーケストラの中での戦いと、メイの空中戦」

「そーなの?」

「空中戦は今一番リスポーンを起こしてる原因じゃないかしら」

ドラゴンはもちろん大型の鳥など、空を飛ぶタイプの従魔を連れている従魔士や共闘型の召喚獣を持つプレイヤーは当然、この動画を見て練習し始めている。

すでに九条院白夜が幾度も地面に叩きつけられていることを、メイたちは知らない。

「こういう時に、お茶とか欲しくなるわね」

「いいねぇ」

「いいですねぇ」

「い、いいと思います!」

「ジョブのメイドなんかは外でもお茶とかコーヒーを入れることができて、中には特殊効果を持つものもあるんですって」

「コーヒー!」

メイ、その味よりもコーヒーを飲んでいる自分が「おお、メイちゃん大人だ!」「大人のお姉さんだったんだ!」と言われる姿を想像して「えへへへへ」となる。

一方まもりは、グランデサイズのフラペチーノを想像して楽しそうだ。

さすがに『抹茶に使う耳かきみたいなやつ』の二刀流を想像しているのは、ツバメくらいだろう。

「あ、このシーンいいわね」

「左右に白黒クマさんを従えたメイさんですね」

「に、二体の召喚を呼び出した瞬間は、みんな驚いていました」

「シロクマと言えば……西の兵務区画はどうなったのかしら」

「気になりますね」

『兵器』を追っていた黒仮面の者たちは、皇帝との戦いを終えても出てこなかった。

ただ皇帝が使った結晶化のアイテムは、間違いなく『兵器』に関わっているはずだ。

それにもかかわらず今回のクエスト終了後、兵務区画がどうなるかの情報は出てきていない。

そう考えてレンが「見に行ってみようか」と、言い出そうとしたところに――。

「見事な政変劇だったよ」

木の陰から怪盗が現れた。

どうやら帝国を出るか、エンディング後にしばらく時間が経つとやってくるようだ。

「帝国は大きく変わったみたいだ」

そう言って怪盗が見上げた空に思いっきり世界樹があって、ちょっと笑ってしまう。

「だがどうやら『兵器』を追っていた黒仮面たちは、この隙を突いて帝国を出たようだ。もはや彼らの研究は、帝国という母体がなくても良いところまできているのかもしれない」

「兵務区画はどうなってるの?」

「肝心な部分はもぬけの殻だよ。ただ、前に北極を目指したあの船は消えている。聞いた話では南東を目指しての出航だとか」

「南東……一体黒仮面たちは何を求めているのかしら」

「皇帝を守らなかったところを見ると、単なる侵略のためだけとは限らないのかもしれない」

「『赤月の夜が来る』と……」

「『ゼティアはすでに――』ですね」

「そもそも北極で見た化物は、一体何だったのか」

「ドキドキしちゃうねえ」

「は、はひっ」

「黒仮面たちは新たな何かを求めて動き出しているんだろうね。あたしから言えることはこれくらいかな。それじゃまたどこかで」

そう言い残して、怪盗は去っていく。

植物が多くて去り際に少し手間取る姿は、やはり面白い。

「次は何をしよっか!」

「特に決まっていることもありませんし、とりあえず新しいスキルでも試してみますか?」

「それが良さそうね」

「いいと思いますっ」

「わ、私も賛成ですっ」

こうしてメイたちは、通常の敵もそこそこ強い帝国東部の林へ向かうことにした。

そこに待ち受けていたのは、体長2メートルほどの帝国熊が5体。

どうやら取り巻きを連れた、このマップのボスの一体のようだ。

「それじゃさっそくいってみましょうか! 【増幅のルーン】!」

レンはまず、『数値』の決まっているスキルを増幅するルーンをツバメに使用。

「【加速】【跳躍】【跳弾投擲】【連続投擲】」

ツバメはすぐに跳び、【雷ブレード】を投擲する。

すると『4発』までと決まっている【連続投擲】の数が増幅し、『8発』になった。

近くの岩や樹に向けて投じた【雷ブレード】は跳ね返り、うまく帝国熊たちを感電させる。

「室内だったらもっと面白いことになりそうね! 【フレアストライク】!」

レンはこの隙を突いて炎砲弾を放ち、手前の個体を打倒。

「【獅子霊の盾】!」

硬直から復帰した一体の帝国熊が狙ったのは、まもり。

新装備のスキルを発動すると、盾から胸元まで飛び出した大型の獅子が、その牙で熊に噛みつき引きずり回す。

「それではいきますっ! 【大旋風】!」

メイは残り3体の帝国熊を引き付けたところで、まもりの盾に捕まった熊をつかんでスキルを発動。

そのままハンマー投げのような動きで回転しながら、迫る中ボス熊たちに接近していく。

すると立ちふさがった取り巻き熊Aが回転メイに弾き飛ばされ、10メートルほど転がり消滅。

飛び掛かってきた取り巻き熊Bも弾かれ、飛んでいった先の岩ごと粉砕。

そして【不動】に似たスキルを持つ中ボス熊は――。

「それ! それそれそれーっ!!」

ノックバックを減少させたことがアダとなり、回転熊攻撃を連続で喰らったうえに、最後の放り投げまで受けて敗北。

スキル効果の消えた中ボス熊と投げられ熊は、そのまま土煙をあげながら転がり、小さな崖の壁面に激突。

崩れた土に埋まって消えた。

「相変わらず、とんでもないわね……」

「もう少しで風が起き始めるところも見られましたね。それも楽しみです」

「す、すごかったです」

こうして新たなスキルを試しながら、その感覚をつかんでいると――。

「……他のボスとぶつかった?」

同じく帝国裏の林に棲む、取り巻き付きの中ボスらしき魔物の姿が見えた。

それと同時に、聞こえてきた声。

「――――見つけたよ」

「だが、少々敵が邪魔だな」

「それじゃーやることは、決まってるよねー?」

突然帝国の山中に現れた、四人の少女たち。

現れた新たな敵の一団を前に、武器を取り動き出す。