軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

791.帝国掲示板分隊

「間違いない メイちゃんは反逆者側で動いてる!」

「僕たちは攻略者たちから帝国を守るクエスト、そして常々言われていた帝国兵たちの感じの悪さ……これは100%間違いありません」

「本当か?」

「ホントにいんのー? これで外部からの攻撃に対応してたとかだったら笑うよ?」

「俺が今まで、メイちゃんたちの動きを外したことがあったか?」

「おお……普段はただただウザイだけのマウント氏の言葉が、今はこんなに頼もしい……!」

「行くか!」

「ああ!」

走り出す、10人ほどの掲示板組。

先ほど聞こえた戦いの音から、主城へと向かう道へ先回りを仕掛ける。

するとそこに見えたのは、走る四人の少女たち。

「「「いたっ!」」」

メイたちを見つけた掲示板組は、即座に進路に割り込みに行く。

「そこまでだ!」

「「「「ッ!!」」」」

マウント氏の言葉に、メイたちが足を止める。

「貴方たち、壁の復旧クエストにいたメンバーね……」

「先日は急にいなくなってしまい、申し訳ありませんでした」

「あ、これはどうもご丁寧に」

ツバメの言葉に、帝国制服のまま頭を下げる掲示板組の面々。

一段落したところで、あらためて言葉を続ける。

「俺たちは帝国側から、建国祭を無事に終了させるというクエストを受けている」

「なるほど、聖教都市みたいな対立システムを含んでいるのね」

「……やはりか。それなら仕方ない」

掲示板組は、静かに目を閉じる。

そしてまるで気持ちを切り替えるように、大きく息をつくと――。

「まさか、貴様が帝国に潜り込むスパイだったとはなぁ」

「まったく、残念だよ」

突然、その表情を冷徹な帝国兵に変えた。

「お前たちは、皇帝陛下のもとへたどり着くことはできない」

「なぜなら……ここで俺たちに処刑されるからだぁぁぁぁ!!」

「相変わらずノリがいいわね!」

すぐさまタチの悪い帝国兵になりきって武器を取る掲示板組に、思わずレンが叫ぶ。

メイとツバメが笑い、驚きにまもりがポカンとする。

それが、始まりの合図だ。

「行くぞ! 麗しき帝国のために!」

「帝国に弓引くやつは、ここで剣の錆にしてくれる!」

動き出す掲示板組。

先頭を駆ける剣士の前に出たのは、ツバメ。

「お相手いたします【加速】」

「うおおっ!?」

ツバメは斬り抜けではなく、真っ直ぐ踏み込んできた。

その手には【村雨】

放つ抜刀からの払い、そして返しが、慌てて防御に走った剣士のHPを削る。

「【三日月】!」

続けて大きな踏み込みから、縦の抜刀振り降ろし。

背中側から手前に描く三日月形の軌跡が、防御を続ける剣士の盾に当たり、派手な火花が散った。

「ア、アサシンちゃん、短剣の二刀流じゃなかったのかよ!?」

二刀相手にどう戦うかを考えていた剣士は、その変化に慌てふためく。

「【加速】」

ツバメは再び接近し、刀の間合いへ。

シンプルな振り降ろしから、そのまま回転斬りへとつなぐ。

「【旋空】!」

「うおおおおっ!?」

防御一辺倒の剣士は、必死の盾防御。

弾かれ合う両者の間に、距離が生まれた。

「くっ、ここから巻き返しだ! 【バスターブレード】!」

掲げた剣は、当たろうが外れようが爆発を起こして敵を巻き込む強烈な一撃。

武器を地面に叩きつけることで範囲攻撃となるスキルは、基本的に隙が大きい。

大きなバックステップでこれを回避したツバメは、その瞬間を逃さない。

「【稲妻】!」

「ッ!?」

鞘から抜かれる刀が、一瞬の輝きを見せる。

次の瞬間ツバメは、まさしく雷のような青白い光の線を描きながら高速接近し、豪快な抜刀振り上げ斬りを放つ。

刃の軌道に一瞬遅れて描かれる白の軌跡は、シンプルで美しい。

「……なっ」

反応もできず、喰らった掲示板組剣士のHPはすでに残りわずか3。

「カッコいいー!」

それを見て、思わず声を上げるメイ。

「サマになってるじゃない!」

「す、すごいですっ」

レンたちも、その戦いぶりに歓声を上げる。

「だが、まだ終わったわけじゃない! 【空刃乱舞】!」

剣士は最後の大技を発動。

速い剣の振りに合わせて空刃を飛ばすこのスキルは、連発が可能だ。

「【バンビステップ】!」

ここでメイが走り出し、空刃の隙を縫って接近。

剣士は慌てて空刃による迎撃を狙うが、メイはそのまま横を通り過ぎていった。

「なにッ!?」

「【跳躍】」

次の瞬間、かかる影。

「ッ!?」

上を見上げれば、刀を持ったツバメの姿。

メイの行動は、単なる目くらましだったようだ。

「【回天】!」

刀を鞘に収めた状態で飛び上がり、そのまま空中で縦に回転しながらの抜刀斬り。

強烈な斬り下ろしが、見事に決まった。

「ここ、までか……」

剣士は、これ見よがしな体勢で倒れていく。

「ルーデウス皇帝陛下……バンザァァァァイ!!」

最後まで帝国兵を演じる男に、「おお……っ」と感嘆するツバメ。

「裏切りのアサシンは左右の動きより縦移動の速さで戦う! 魔法で一気に勝負を掛けるぞ!」

「「「ハッ!!」」」

するとここに出てきたのは計算君。

5人の魔導士と共に距離を取り、建物付近から魔法攻撃を開始。

「撃てぇぇぇぇ!!」

そして追ってくるツバメに対し、一斉に魔法を放つ。

隊列を組んでの魔法斉射は見事。

ツバメは回避に集中せざるを得ない。

「一度さがるぞ!」

この隙に計算君は建物の内部、廊下まで下がって魔導士たちに杖を構えさせる。

そして予想通り追ってきたツバメに、再度の魔法斉射。

「撃てぇぇぇぇっ!!」

「【壁走り】!」

しかし三次元移動を始めたツバメに、魔法は当たらない。

「【天井走り】!」

「一発も当たらないだと……っ!?」

そのまま時計回りに壁を駆け上がり、全弾回避。

天井の途中でスキルを解除して落下すると、着地時には足の装備を換えている。

「【疾風迅雷】【加速】【加速】【加速】!」

【暗転のブーツ】は、移動スキルの使用中に姿が消える装備。

【加速】を連続使用をされると、ほとんど姿を視認できない。

「っ!」

突然のダメージに、魔導士たちが困惑する。

「なにっ!?」

現れたツバメに、慌てて皆が杖を向けるがすぐさま消失。

「マジで、全然攻撃が見えないぞ!」

消えたと思えば、いつの間にか斬られている、

魔導士たちはもう、慌てるほかない。

しかもその火力は、【村雨】に替えたことで上昇している。

「……フッ」

しかしこの状況に、薄く笑みを浮かべる計算君。

「裏切りのアサシンよ、貴様の敗因は相手がこの僕だったということだ。HP1を残して攻撃を耐える【食いしばり】と、自分をも巻き込む高火力範囲攻撃は、この狭い廊下で逃げ場なし!」

「ッ!?」

「終わりだ! 【マイン・エクスプロード】!」

巻き起こる盛大な爆発。

味方も巻き込むこの戦略は、味方にも通達済み。

魔導士たちはたとえ倒れても、共にツバメを打倒したという実績を得られる。

そしてこの煙の上がり方は、対象を捉えた証拠だ。

「やった! やったぞ! 我らは帝国を裏切ったアサシンを、討つことに成功したんだ!」

歓喜の声をあげる計算君。

晴れていく煙の先にいたのは、大きく黄色い鳥類の子。

「ヒヨコォォォォォォ――――ッ!?」

弾け飛んでいくヒヨコの背後から出てきたツバメが、【村雨】を閃かせる。

「【稲妻】!」

そして残り1のHPは、刀の一振りで削り切られた。

「急ぎで買い集めたスキルですが、やはり新武器を振るうのは楽しいです」

ツバメは【村雨】を払い、静かに刀を収める。

「て、帝国の頭脳と言われた……この僕の戦略がぁぁぁぁ! ……ぐふっ!」

まるで『斬撃』が遅れて傷を開いたかのような、ワンテンポ遅れの片ヒザ突き。

そのまま倒れ伏す流れは完璧。

こうして計算君も、帝国の軍師的な役を最後まで演じ切ってみせたのだった。