軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

790.乾杯からの突撃!

「それでは栄えあるガルデラ帝国の建国を祝い――――乾杯!」

「「「乾杯!」」」

皇帝ルーデウスの宣誓によって始まった、華やかな建国祭。

続いて宰相による乾杯が行われ、一部の貴族や上級兵たちがワインをあおる。

そして乾杯は、突撃の合図だ。

「さすがルーデウス皇帝だ、いい物を選んでるな」

「ああ、やっぱり帝国は……最高の……」

「おいどうした? ……ッ!」

始まり出す異変。

【睡眠薬】入りのワインが効果を発揮し、兵士たちが意識を朦朧とさせ始める。

そうなれば、次はレジスタンスの番だ。

「「「オオオオオオオオ――――ッ!!」」」

「なんだ! どうした!?」

ワインをもらうことのできない立場の兵士たちが、異変に慌て出す。

「旧市街の者たちが、西通用門に殺到しているようです!」

「あの煙、火を放ったのか!?」

「向こうの兵士たちはどうした!?」

「多くの兵が眠ってしまい、混乱しているみたいです!」

「ならば動ける兵を動員しろ! あの程度の数でどうにかできるはずがない! 自分たちが生かされているだけなんだということを、その身に教えてやるんだ! 潰せ! 薄汚いネズミどもを一掃するんだ! 」

叫ぶ兵長。

しかし様子がおかしい。

「なんだ、あの数は……?」

「それが城壁外の森から、多数の傭兵らしき部隊が!」

「ネズミ共が伏兵を用意していただと……? ならばドレーク殿に通達し、私兵に来てもらえ!」

「それがドレーク殿は、先日から昏睡したままなんです!」

「……どうなっている。いったいこれはどうなっているんだ!?」

慌てる兵士たちの姿。

帝国初登場の兵士クエストを受けにきたプレイヤーたちも、その空気の変わり様を見せられて困惑する。

「なんだ? 何が起きてんだ?」

「反乱に対応しろって感じのクエストみたいだな」

「……ふむ」

「どうした計算くん」

「いや、僕が思うにこういう類のクエストは、襲撃側は二手に分かれてたりするものではないだろうか。本命はプレイヤーによる皇帝打倒の確率が高い」

「確かに、『城外の反乱軍を抑えに行け』っていう直接的な指示が出されないのも妙だよな」

「少し、様子を見てみるか」

各々の判断で動き出す、帝国兵プレイヤーたち。

そして観客としてやって来た者たちは、まさかの事態に早くも目を輝かせる。

「これでしばらく時間を稼げそうね。多くの兵士たちが反乱を鎮圧しようと、レジスタンスの相手に集中してくれる。城内の兵士や、戦闘の回数は減ってくれるはずよ」

一方メイたちは、持ち場の正門前から騒がしくなってきた城内へと侵入。

すでに前庭から建物の並ぶ区画へと入り込んでいた。

「メイはどう?」

「うん、準備しながら進めてるよ!」

「それにしても、大きなお祭りの中を動くクエストというのはワクワクしますね」

「は、はひっ」

「それじゃまずは第二王子の救出から、行きましょうか!」

「りょうかいですっ!」

四人は主城を目指して走り出し、連なる建物の間を駆けていく。

正門から主城までには、前庭、教会や議場などの石材建築が並ぶ区画、そして広い中庭がある。

そしてこの騒ぎの中でも当然、主要となる守備区域には兵士たちが警備についている。

「おい、どこにいくつもりだ!! この先、下級兵の侵入は認められていない!!」

「ここからはもう、下級兵の制服を着てても戦うしかないってことね」

立ちふさがる上級兵士は、制服に軽鎧という姿。

手にした黒い剣も濃灰色で、刃の部分だけが銀という渋い見た目をしている。

そしてその装備から、上級兵の中でも高いレベルの存在なのだと分かる。

「そういうことならっ! 【装備変更】!」

メイはいつもの装備に変更。

「もう隠れて戦う必要はなさそうだし、この騒がしさなら多少火の手が上がっても問題なしね!」

続けてレンとツバメ、そしてまもりも装備を変更。

「【電光石火】!」

「ぐっ!」

速い斬り抜けは上級兵を捉え、大きく体勢を崩す。

「よいしょっと!」

攻撃に身体を曲げた兵士をメイが跳び越えると、そこに駆け込んでくるのはまもり。

「そ、それっ!」

シンプルに盾を突き出して頭部にヒットさせると、そのまま横を抜けていく。

最後はレン。

掌を突き出し、胸元の軽鎧にタッチしてそのまま走り出す。

「逃がすか!」

当然兵士は追いかけにくるが、ここでレンが指を鳴らす。

「燃えときなさい!」

すると軽鎧に刻まれたルーン文字が輝き、一気に火炎を巻き上げた。

「うおおおおおおおお――――ッ!!」

【燃焼のルーン】は5秒ほどかけて上級兵を燃やし、そのHPを削り切る。

「これ金糸雀の【金剛武装】に使ったら、燃えながら走ってくるのかしら」

「お、おそろしい絵になりますね……っ」

有名ハンマー使いが、炎上しながら大金づちを振り回す姿を想像して唖然とするまもり。

「止まれ! 貴様ら何者だァ!」

掛ける四人の前に、今度は上級兵三人が道を塞ぐ。

「止まらぬなら撃つ!!」

「【重戦特攻】!」

中心にいた鎧の上級兵士は、大きく速い踏み出しからハルバードを振り上げる。

「【雷撃断】!」

「【かばう】! 【天雲の盾】!」

メイとツバメが自然と道を開ける。

振り下ろされた強烈な一撃は、まもりの盾に直撃して止まった。

地面へと流れていく稲光は、仮にまもりが受けていなければ付近のプレイヤーをまとめて感電させる、やっかいな一撃だった。

だが、受け止められてしまえば流れはこちらのもの。

「【フルスイング】!」

同じく振り下ろす形の一撃は、隙だらけのハルバード兵に直撃。

バウンドして大きく跳ね転がるほどの威力で、一発打倒。

「【加速】【リブースト】【アサシンピアス】」

横の槍使いは、最速の一撃に胸を突かれて倒れる。

「【アクセラレーション】!」

すると残った魔法兵は意外にも、魔力噴射で距離を詰めてきた。

突き出した手。

どうやら杖代わりに、魔法珠を仕込んだガントレットを使うようだ。

「【バーニングショット】!」

「【スライディング】!」

手から噴射される激しい炎。

しかし直撃寸前でツバメは、敵の足元を滑り抜ける。

「高速【連続魔法】【フリーズボルト】!」

そのすぐ背後には、レンの放った氷の弾丸が追って来ていた。

「くっ!」

「【反転】」

魔法兵が氷弾を喰らい、体勢を崩したところでツバメが振り返る。

「【電光石火】!」

フラつく魔法兵の背中を斬り、HPを減らしていったところに再びレンが続く。

「【フレアストライク】!」

「ぐああああっ!」

さらに正面から飛んできた炎砲弾を喰らい、倒れる。

「ぜ、前後からの連続攻撃って、すごいですね……」

前から氷弾、後ろから斬撃、さらに前から炎砲弾。

恐ろしい連携にまもりは驚き、メイは「お見事ですっ」と拍手。

一方のツバメは、レンと自然なハイタッチ。

見事な連携が決まり、満足そうに息をついた。

「内部の様子もおかしいだと……? どういうことだ!? 旧市街の下級兵共は城内にはいないはずだ!」

一方内部まで騒がしくなり始めたことに気づいた上級兵が、声を荒げる。

「何かあったら皇帝陛下の怒りを買うことになるぞ! 建国祭は帝国の力を披露する場なんだ!」

「冒険者ども、お前たちも怪しい者を見たら容赦なく斬れ! 反逆者を討ったものには褒美をくれてやる!」

いよいよ慌て出す上級兵たち。

ここでついに、城内にいる刺客の打倒を指示される。

そしてこの展開に、笑う者たちがいた。

「やはりな――――感じるぞ、メイちゃんの気配」

「間違いない。メイさんたちが動いている確率は100%です!」