軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

787.帰還しましたっ!

「面白いものが見られたね」

帝国への帰還は、夕方頃となった。

北極遠征の一行が解散すると、怪盗はそう言って息をつく。

こうして特殊クエストも、無事に終了。

兵士たちも一時的にお役御免ということで、メイたちはあえて正門から街へ出る。

「でも、さすがにあの凍結した『名のない獣』や槍を持ち帰るっていうのは不可能だったみたいだね」

「完全にあきらめた感じでもなかったのは、気になるけどね」

「あの黒い仮面の者たちは、世界の過去を読み解き『兵器』に手を伸ばしてる。それは世界に覇を成すため。でも……他にも何かがありそうだよ」

「赤月の夜……でしょうか」

「それともゼティアかしら」

「その辺りはもう少し調べてみる必要がありそうだね。またどこかで会った時はよろしく頼むよ」

「こちらこそ、よろしくおねがいいたしますっ」

「健闘を祈ってる。帝国がひっくり返って第二王子が皇帝になれば、今みたいな状況は変わってくると思うから」

そう言って怪盗は笑う。

「そうだ。君たちの見事な仕事ぶりへの感謝と、政変への応援として一つ贈り物をしよう。帝国貴族からいただいたお宝だよ」

怪盗が取り出したのは、一冊のスキルブック。

四人は寄り集まって、さっそく中身を確認する。

【斬鉄剣】:居合の要領で放つ範囲の長い斬撃。その威力は鉄すら斬るといわれる。任意の軌道で斬ることが可能な高速の一閃。

「ツバメの【村雨】で使うスキルみたいね。刀の振りに合わせて剣閃が生まれるって感じかしら」

「ありがたいです……怪盗さんということで、ちょっとだけ【スティール】支援のアイテムなどを期待してしまった弱い私を許してください」

「ふふ、別に謝らなくてもいいのに」

「それじゃ、成功を期待してるよ」

「ありがとうございますっ」

メイはブンブンと元気に手を振る。

怪盗は素早い動きで屋根に上がると、そのまま帝国の街へと消えていった。

「また一つ、隠された物語に近づきましたね」

「す、すごい光景でした」

「それじゃあレジスタンス本部に帰りましょうか」

「りょうかいですっ!」

今だ誰も知らぬ、北極という地に眠る『名のない獣』の存在。

メイたちは高揚感を抱えたまま、レジスタンス本部へと歩を進めるのだった。

「無事だったか!」

「どうだ? どれくらいの任務を達成できた?」

「全部できましたっ!」

「全部だと……? あの任務を全て成功させてきたというのか?」

「はいっ!」

「やはり俺の目は間違っていなかった! この冒険者たちなら、帝国を救う英雄になれると!」

「大したものだね……まさか全てを成功させるとは」

レジスタンスの仲間たちが、歓喜の声を上げる。

「これで当日はかなり動きやすくなった! 数の減った兵士が相手なら、俺たちの反抗も時間を長く稼げる」

「第二王子の外部への逃走も、狼たちが追ってこないのであれば楽になるはずだ。鍵も当日に探す必要がなければ、皇帝の打倒に集中できるぞ!」

「もちろん豪商も意識朦朧、これで数日はまともに目を覚まさないでしょうね」

「おおっ! それなら私兵の投入もありませんよ!」

大きくうなずくスタン。

「それでもインペリアルガードを中心とした強敵とぶつかる可能性は高い。念のため準備はしっかり行ってくれ」

「そうだ、君は魔法を使うんだよね」

突然レジスタンスの青年が、レンにたずねてきた。

「そうだけど」

「ここまで完璧な仕事をしてくれたんだ。当日の足しになるかは分からないが、これを受け取ってくれ」

【氷結のルーン】:地面や壁など場所を問わずに氷の剣山を生み出す。敵に設置した場合は低ダメージだが、体勢を崩すことも。設置数は【魔力】に依存し、視界外からでも任意で発動できる。

「これはまた、使って楽しそうなルーンね……! この後帝国城内で戦う際には、色々使えそうだわ!」

敵だけでなく、オブジェクトにも使用可能。

その可能性に、さっそくワクワクする。

前夜祭のクエスト完全攻略には、意外な報酬があるようだ。

「……倉庫を漁って、何か役に立てるものはないかって探してきたんだ。俺たちが持っている物で、唯一価値のある物だな」

「これは負けられないわね」

その言葉に、レンも気合を入れる。

「そういえば、狼さんたちからもらった鍵はどこで使うのでしょうか」

「……この感じだと、おそらく当日向かう形になるんじゃないかしら。鍵を使えそうな場所には注意をしておくことが大事ね」

もしレジスタンスのメンバーが知っていれば、何か話をしてくれるかと考えたが、どうやらそうではなさそうだ。

「それもワクワクしちゃうねっ」

「狼だし、大きな骨とかだったりして」

「……ゴクリ」

レンが、犬が好きな物の代表として挙げた骨。

メイには『棍棒的に使う物』のイメージで、思わずその野性味の強さに息を飲む。

そんな二人に、まもりは笑ってしまう。

「いよいよ建国祭は明日だ。頼んだぞ、我らが同志よ」

「それじゃ私たちも、もう一度準備を始めましょうか」

「スキルの用意や確認もありますね」

そう言ってツバメは、【斬鉄剣】のスキルブックを握る。

「まもりは一度、私に付き合って」

「は、はひっ」

「わたしは王都の植物学者さんのところに行ってきます!」

メイはこれまで使っていない『種』を得るため、王都ロマリアへ。

前夜祭への侵入で、帝国城内の下見もすでに完了。

厳しい戦いが待つであろう建国祭に向けて、四人は準備に動き出すのだった。