軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

778.じゃれ合いミッションです!

「それじゃふわふわ狼を思う存分楽しんだし……そろそろ進みましょうか」

巨狼の懐柔クエストも、メイの動物値で一発クリア。

時間制限のあるクエストではないので、十分狼ふわふわを楽しんだ。

「……あれ?」

四人が先に進もうとすると、薄灰狼がメイの上着の裾を噛んで引っ張った。

「どうしたのー?」

メイが問うと、薄灰狼は「ワン」と一度鳴いた。

「思った以上に上手くクエストを達成できたから、何か発生したのかしら」

「そう言えば、スタンさんが『注意しろ』と言っていました。やはり何かあるのですね」

二頭並んで行儀よく座る姿は、何かを待っているようにも見える。

「危険が迫っているとか?」

レンの問いに、灰狼は首を振る。

「どこかに連れていきたいなどでしょうか」

ツバメの問いにも首を振る。

「だとしたら何かなぁ……遊びたいとかっ?」

メイが言うと、灰色狼はまた「ワン」と鳴いた。

「こ、これもクエストなんですか?」

今度は、こくこくとうなずく。

「もちろんいいよ!」

メイが応えると、視界に現れたのは『TIME』という文字と60秒のタイマー。

二頭の狼は腰を上げ、臨戦態勢。

しかし牙をむく様子も、爪を出す様子もない。

二頭ともに、散歩前の犬の様に尻尾をブンブン振って楽しそうだ。

「『遊び』クエストは戦いじゃなく、激しいじゃれ合いに勝てってところかしら」

これに二頭は「それそれ」と、またうなずいた。

「楽しそうだねっ」

「そういうことなら、メイvs四足獣のじゃれ合いになるわね」

「おまかせくださいっ!」

メイも尻尾をブンブンさせながら応える。

「可愛い……二頭と狼少女って感じですね」

「私も同じことを思いました」

尻尾をブンブンさせるメイと巨狼の姿に、思わず頬が緩むツバメとまもり。

「実際始まったら、驚くと思うわよ」

そう言って笑うレン。

直後TIMEの文字が光り、始まるミッション。

まずは濃灰色狼が動き出した。

「速いです……!」

その動きの俊敏さに、ツバメが意識を集中する。

濃灰狼はいきなり真正面からの、特攻。

「はいっ」

しかし分かりやすい動きを、メイはかがむことで回避。

すると濃灰狼は即座に向き返り、ショートジャンプから鼻先での突き上げを三連発。

これもメイはバックステップ三つで下がって回避。

次の瞬間、開く口。

「【アクロバット】!」

脚部への噛みつきは、前方への側方宙返りで跳び越える。

「ほ、本当に……未来が見えてるみたい……」

「メイさん、どうですか?」

ツバメの問いに、メイは律儀に振り返って両手でピース。

「大丈夫だよっ」

するとその隙を突き、濃灰狼は全力の飛び掛かり。

「このとおりですっ!」

メイ、本当によそ見をしながらしゃがんで回避。

これに驚くまもりの前で、濃灰狼はさらにギアを上げてくる。

飛び出すと鼻先に生まれる魔法陣。

そのまま飛び込み消失。

直後、右側に現れた魔法陣から濃灰狼が飛び掛かってきた。

「うわっと! 【ラビットジャンプ】!」

これには驚き跳躍。

着地するのと同時に、振り返った濃灰狼はメイに飛び掛かる。

これをメイがしゃがみでかわそうとすると、目前に現れた魔法陣に消えた。

「ッ!!」

今度は左側からの飛びかかり。

「うわっととと!」

頭を抱えて伏せると、その直上を狼が超えていった。

「こ、これはなかなか大変ですね」

突然消え、違う角度から飛び掛かる戦法にまもりが感嘆する。しかし。

「【装備変更】っ!」

するとここでメイも、【狼耳・尻尾】に装備を換えて勝負再開。

濃灰狼が魔法陣に消え、右から飛び出してくる。

「はいっ!」

片手を突き、身体を低くして待っていたメイは左へのローリングで回避。

濃灰狼は着地と同時に後方跳躍し、魔法陣に消える。

「はいっ!」

そして右上方から来た飛びつきを前方へのローリングで回避して、即座に体勢を片手突きに戻す。

【狼耳】は『受け身』がとにかく自然で速い。

だがここで濃灰狼は再び、魔法陣に飛び込み消えた。

そしてメイの視界の中に、新たに魔法陣は現れない。

「はいっ!」

それは魔法陣が頭上にあったから。

濃灰狼は直上からボディプレスを仕掛けてきた。

しかしこれもメイは自らに『影』がかかった瞬間、真横への速い転がりで見事回避。

「どうやったら、あんな回避が……」

その全てが2センチ、3センチみたいな回避で驚きふためくまもり。

するとここで、濃灰狼が動きを止めた。

代わりに飛び出してきたのは、薄灰狼。

その身体が三つに増える。

「ぶ、分身ですか? でもいきなり三体だなんて……!」

薄灰狼も、動きは高速。

そんな薄灰狼たちは正面三方から迫り、一斉に飛び掛かる。

「本物は、二体目っ」

しかしメイは慌てず、二体目の薄灰狼を前転でしっかり回避。

すぐに振り返り、また片手を突いた状態に戻ると、今度は左右前の三連続。

「三体目っ! せーのっ!」

一体目、二体目の喰らいつきは無視、三体目が来たところでジャンプ。

なんと三体目の突撃を跳び箱の要領で跳び越え、着地のポーズまでしてみせた。

「……ど、どうして、わかるんですか?」

「足音ですっ」

そんなまもりのつぶやきもしっかり聞き分けて、メイは元気に応える。

「狼もメイを捕まえたければ、【忍び足】が必要ね」

レンの言葉に、緊張感はない。

残りは20秒。

「で、でも、二体同時なんて……っ!」

まもりが上げる悲鳴。

最後はなんと、二体の狼が同時に動き出す。

「【装備変更】【バンビステップ】!」

右から迫る濃灰狼の飛び掛かりを、ターンでかわす。

左から来た薄灰狼の噛みつき、踏み込み噛みつき、そして鼻での突き上げという三連撃を、右左右と柔軟なステップで回避。

「【尾撃】!」

その隙に後方へ回っていた濃灰狼を、尾を伸ばしてけん制し足を止める。

薄灰狼はここで分身して三体に。

「【装備変更】!」

メイも【狼耳】に戻してこれに対応。

片手を突いて、回避モードに入る。

「ッ!!」

目前に現れた魔法陣から飛び出してきた濃灰狼の突撃を、右ローリングで回避。

迫る二体の薄灰狼の飛びかかりを、左に二回ローリングして回避。

「【装備変更】!」

足元に生まれた影に気づいて【猫耳】に。

「【アクロバット】!」

頭上からの圧し掛かりをバク転で回避する。

すると狼たちは勝負に出た。

迫る計四体の狼。

足音を聞き分け、一番右側が本物の薄灰狼と判断。

これをかわすと、最後に来た濃灰狼の飛び込みはまたも消失。

「あれっ?」

視線を上げるがそこにもなし。

これにはさすがにちょっと、驚くメイ。

だが視界の中になく、頭上にもなければ、答えは一つしかない。

「後ろだっ!」

その時点で、後方だと判断。

即座に振り返り、予想通り後方から飛び掛かってきていた濃灰狼の前足をつかむと、そのまま巴投げの要領で薄灰狼へ。

「それーっ!」

投げられた濃灰狼が薄灰狼の上にのしかかってゴロゴロしたところで、60秒の制限時間終了。

さすがに遊び疲れたのか、狼たちは息を荒くしながら寝転がった。

「楽しかったー!」

「け、結局一度も、攻撃はかすりもしませんでした」

メイは見事にクエスト達成。

なんとノーミスの完全クリアだ。

まもりはいよいよ唖然とする。

すると思う存分遊べて満足したのか、薄灰狼はどこかへと歩いて行き、何かを喰わえて戻ってきた。

「……鍵?」

古びた鍵は少しサイズが大きく、大きな南京錠にでも使われていそうな感じだ。

「どこかにこれを開けられる場所が出てくるのね。でも失敗する可能性もあるミッションだし、この感じは物語に直に関わるどこかへ続くわけではなさそう」

「宝箱の可能性もありますね、楽しみです」

「おおーっ! ありがとーっ!」

そう言ってメイが二頭の頭を撫でると、巨狼たちはその場でのんびりくつろぎ始める。

「スキル持ちの二体が同時攻撃してきても、問題なしなのですね……」

あらためてその見事な回避を見て、唸るツバメ。

頭上と後方の攻撃への対処は、近接型としては感動してしまうほどの精度だった。

「それじゃ進みましょうか」

「りょうかいですっ」

四人は狼たちに手を振りながら、先へと進む。

「あの子たちに【友達バングル】で来ていただけたら、大きな力になりますね」

「それいいわね」

「メ、メイさんはそうやって、今までに出会ってきた動物たちと再会できるんですね」

「えへへー、すっごく楽しいよ。きっとあの子たちも来てくれると思いますっ」

こうして二つ目の任務は見事、ミッションと呼べる展開まで達成したのだった。