軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

750.進化の使徒長

「来い」

レンの前に立った黒仮面が手を上げると、足元に魔法陣が描かれる。

現れたのは、大型の獅子型召喚獣。

「共闘タイプね。まあ敏捷物理攻撃型よりはマシかしら」

「ターゲットはあの魔導士だ。気に入ったなら……喰っていい」

「言ってくれるじゃない」

「やれ!」

迫る黒の召喚獣。

「っ!」

攻撃はそこまで速くなく回避可能だが、範囲攻撃は要注意。

バックステップからすぐに転がって【圧し掛かり】を回避。

「撃つ」

黒仮面がレンに手を向ける。

すると飛び出してきたのは、鎖の先に大きな十字の刃を付けた『鎖鎌』の亜種のような武器。

高速で飛んでくる十字刃を避けると、続くのは獅子型召喚獣の攻撃。

「ッ!!」

これもどうにか回避するが、これだけでは終わらない。

さらに十字刃の大きな払いが、レンの頭部を狙う。

「あっぶな!」

これを慌てて身体を低くしてかわす。

この連携が、共闘型の怖さだ。

互いの隙を埋め合い、作り出した好機を狙いにくる。

「なりふり構わっていられないわね……っ!」

飛び掛かってくる獅子型召喚獣の一撃を横っ飛びからの転がりでかわすと、鎖鎌の分銅側が召喚獣を回り込むようにして飛んでくる。

「追尾! しかも魔法珠ッ!」

大慌てで再度の飛び込み。

ギリギリで直撃はかわしたが、炸裂する閃熱がレンをかすめていく。

「【低空高速飛行】!」

即座に体勢を立て直し、レンは距離を詰める。

中距離では召喚獣が邪魔になって鎖鎌の出所が見えない上に、追尾が付くのはあまりにやっかいだ。

しかし近距離なら、鎖鎌の優位性は大きく減退する。

レンは【魔剣の御柄】に【フリーズストライク】を込め、黒仮面を狙いに動く。

「はあああああ――――っ!」

そのまま斬りかかるが、鎖鎌を戻した黒仮面は宝珠付きガントレットを輝かせる。

すると次の瞬間、敵は左方に15メートルほど瞬間移動していた。

「ああもうっ!」

好機も、接近に時間をかけた分だけ相手に回避の時間を与える形になってしまった。

再び程よい距離を取り直した黒仮面は、召喚獣をけしかける。

右の爪の振り降ろしから、続く左腕の叩きつけ。

「この辺りは、メイの戦い方を見てきたことが活きるわね……っ!」

繰り出される召喚獣の攻撃を、避けるところまでは良し。

「ッ!!」

しかし敵の狙いはこの後。

一直線で飛んできた十字刃が、ローブを斬っていく。

横っ飛びの着地と同時に、魔法珠の飛来に気づいて転がる。

直後に起きた、氷塊の爆発に思わず片目を閉じる。

「反撃したいけど、いちいち止まってたら的になる……! こう……なったら!」

敵は二体で一つ。

片方に向けて魔法を放てば、当然その隙を突かれる恐れがある。

ここでレンは、戦い方を変えることにした。

「グオオオオオオオオ――――ッ!!」

「【高速低空飛行】【旋回飛行】!」

飛び掛かってくる召喚獣にステップをやめ、半円を描くホバーのような移動で回避。

「撃て!【十字刺突】」

続く十字刃の飛来も、速い旋回飛行を捉えることができない。

レンから2メートルほどの距離を、遅れて飛んでいく。

「【氷閃珠】!」

ここで逆方向から飛んでくる魔法珠は、追尾によるもの。

このままの軌道では直撃すると踏んだレンは引きつけてから【旋回飛行】をカット。

シンプルな直線移動で直進して魔法珠とすれ違い、再び【旋回飛行】にすることで置き去りにする。

「追尾の鎖も旋回と直進を混ぜれば追いつかない! 距離を保って戦うのは、こっちも得意なのよ!」

召喚獣自体も、速度自慢の個体でないことが大きい。

上手く動き続けることができれば、一方的な攻撃も可能だろう。

「【十字刺突】【火閃珠】!」

「そうくるわけね! でもっ!」

右から速い十字刃の刺突、左から遅れて魔法珠。

レンは右側への【旋回飛行】で十字刃をかわし、一瞬足を突いて向きを変えることで『S』字の旋回飛行を成功させ、続く魔法珠も回避した。

「【誘導弾】【連続魔法】【ファイアボルト】!」

ここでレンはついに反撃に出る。

旋回飛行中に放つ魔法など、早々当たるものではない。

しかし【誘導弾】はしっかり、敵の方へ魔法を向けてくれる。

その結果この『ロボットが地上で、ブースターとスラスターを使っているかのような戦い方』が成立。

「【誘導弾】【連続魔法】【フリーズボルト】!」

大技ではなく、とにかく連続魔法を放ちまくって削る戦闘方式。

速度の速い二つの魔法は、見事に召喚獣のHPを削っていく。

「な……なんだあの戦い方!?」

滑空をメインにした戦いという異例に、驚く掲示板組。

どちらの敵も高速移動型でないということはあるだろう。

だが敵と距離を置いて戦うのが基本の魔導士たちは、常に距離を取れるこの戦法は羨望すら覚える。

「もう一回! 【誘導弾】【連続魔法】【ファイアボルト】!」

「くっ……やれ」

黒仮面の言葉に応え、爪に魔力を宿しての飛び掛かり。

地面を叩きつけるその一撃はしかし、レンの常時低空移動によってかわされる。

「【十字刺突】」

さらに召喚獣左側から回り込んでくる、鎖鎌の一撃。

「悪いけど、こっちにだって壁を超えて敵を撃つ魔法の一つくらい使えるわ! 高速【誘導弾】【連続魔法】【フレアアロー】!」

レンはあえて召喚獣の頭を超える形で、魔法を放つ。

直後、召喚獣を回り込むようにして飛んできた十字刃は、レンの肩を薄くかすめていった。

対してレンが放った炎の矢は、召喚獣の頭を越えたところでググっと下降し、十字刃使用直後の黒仮面に突き刺さり炸裂。

「ぐああああああ――――ッ!!」

レンに敵黒仮面が転がる姿は見られなかったが、HPゲージの減少で手ごたえを覚える。

「使徒長ちゃん、さらに進化してんじゃねえか……!」

「さすが我らの使徒長!」

低空飛行で翻弄し、壁越えの攻撃を決める。

そんなレンの見事な戦いぶりは、まさに魔導士らしい『知』の戦い。

黒少女ちゃんもうっかり杖を突き上げ、目を輝かせる。

「ていうか、スキルだけじゃなく戦い方自体の幅が増えるってすごすぎだろ」

「当然だ! これこそ我らの使徒長なのだからな!」

召喚獣と術者を相手にするということは、必然的に『二対一』の不利を背負うという事。

それにもかかわらず当たり前のように対応し、押していくレンの戦いに見入ってた掲示板組は、思わず感動を覚えてしまうのだった。