軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

729.フローリスと謎の物体

集合時間2時間前。

自分なんかが遅れるようなことはあってはならないと、まもりは早くも待ち合わせ場所のラフテリアにやって着ていた。

幸いフェスで一人、街並みを見て歩いたので土地勘はある。

「ここがメイさんたちの『いつもの場所』……」

港の堤防に腰を下ろすと、青く美しい空と海を望む。

まもりはさっそくお菓子を取り出し、海を眺めながら頬張る。

「まもりちゃん、おまたせーっ!」

「はひぃっ!!」

手にしていたアップルパイを取り落としそうになって、大慌てで捕まえる。

緊張の最中でもしっかりお菓子をもぐもぐしているあたり、よほど好きなようだ。

「アップルパイだーっ」

普通の間隣りに座るメイに、思わず視線をグルグルさせる。

「あ、あああああの! こちらでよろしければっ!」

まもりは持っていたアップルパイを、そのまま突き出した。

「ありがとーっ! アップルパイもおいしいねっ」

「…………っ!?」

メイが普通に受け取って食べだしたことに、あらためて顔を蒸気させる。

効果持ちのアイテムでなければ、受け渡しも自由なのが『星屑』の飲食システムの良いところだ。

「すすすすみません! 新しいのがあったのに!」

「大丈夫だよー」

しかしメイは美味しそうにパイを食べ、海に向かって伸びをする。

そんな姿に、そっとまもりは目を奪われる。

広報誌などで見たものと変わらないメイの笑顔は、今日も明るい。

「まもりも早いわね」

そんな二人の後ろにやって来たのはレン。

「は、はひっ。わわわ私みたいなのが遅れてはいけないのでっ」

誰よりも早くラフテリアについていたまもり。

自分が誰よりも先に来ていなくてはという思いと、初めてのパーティプレイの楽しさについ足が早くなってしまっていた。

「あとはツバメだけど……」

「――――ここに」

「ッ!?」

【隠密】で姿を隠してやってきたツバメが、スッと姿を現す。

「ヒヨコちゃんが面白いので、少し海で遊ばせていました」

「ふふ、何やってるのよ」

「ラフテリアの海に黄色いヒヨコは似合いそうだねぇ」

ツバメが海に大きくしたヒヨコをぷかぷかさせているのを想像して、メイだけでなくまもりも思わずほほ笑んでしまう。

「み、皆さんこんなに早いんですね」

盾に半身を隠しつつ、まもりがつぶやく。

「なんか早く集まっちゃうのよね。今日なんかは展開も楽しみだし、余計に早くなっちゃったわね」

そんなレンの言葉に、うなずくメイとツバメ。

「さっそくフローリスに向かいましょうっ!」

「いよいよ、花の街の復活ね!」

「楽しみです!」

「はいっ」

こうして四人は、結局集合時間1時間前には集合。

意気揚々と、あとは種をまくだけとなったフローリスへと向かうのだった。

ポータルを使い戻ってきたフローリスの街。

さっそくビルダ老人たちを探して、歩き出す四人だが――。

「……なんか、雰囲気が違う?」

メイが尻尾を震わせながら、かすかに聞こえる音の方へと向かう。

「「「「ッ!?」」」」

すると街の中に、誰かが倒れていた。

「エンリケさん!」

メイはその格好を見て、すぐにそれがエンリケだと気づいて走り出す。

そして倒れ伏したままのエンリケに声をかけた。

「う……」

どうにか顔を上げるエンリケだが、その身体にはケガを負っている。

「何があったの?」

「怪しい者たちがやって来ていきなり。あれは以前、この街を毒に沈めた『何か』を狙っていたヤツらだ……」

「クエスト失敗時に、この街にやって来ていたヤツらね」

フローリスで偶然見つかった『何か』

それを聞きつけ奪いに来た者との戦いが、かつてこの街に隠されていた大型クエスト。

その失敗によって、花の街は毒に沈んだ。

「俺は大丈夫だ。それよりビルダさんを……ヤツらの後を追って池の方に向かったんだ!」

思わず顔を見合わせる四人。

「行きましょう!」

レンの言葉にすぐさま走り出す。

「ですがどうしてこの街に? 毒をまく『何か』は、バスクリンのように溶けてなくなったはずです」

「なくなったのはその何者かが持ち出していたから……だとしても戻ってくる意味がないと思うけど。とにかく急ぎましょう!」

四人は人気のない通りを駆け抜け、そのまま街はずれの池へと向かう。

池には今も、浅黒い毒液が溜まっている。

そしてその前にいるのは老人と、四人の黒づくめ。

「何をしに来た! 貴様らの求めるものは、もうこの街にはないはずじゃ!」

黒の仮面で顔を隠した者たちは、言葉も少なくただ老人に冷たい視線を送る。

そしてそんな問いに答えるように、リーダー格が右手を上げた。

魔力光が輝き、天から生まれた光の鎖が池に突き刺さる。

するとゆっくりと、魔法の錨によって深く沈められていた『何か』が浮かび上がってきた。

どうやら、なくなったのではなく池の中に隠していたようだ。

「なっ!?」

驚愕に、目を見開くビルダ老人。

怪しい黒服たちのリーダー格は、部下たちに静かに命じる。

「――――消せ」

その言葉に応えるように、各々武器を手に取る黒づくめたち。

ビルダ老人を消すため動き出す。

突然訪れた危機に、立ちすくむ老人。しかし。

「そうはさせませ――――んっ!!」

駆ける野生児少女の声が、その場に鳴り響いた。