軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

728.勤務後ティータイムです!

「街に人がいないのって、ちょっと不思議な感じだねぇ」

「趣があります」

「こういう崩壊した街を立て直すって初めてのクエストだけど、やりがいあるわね」

「はい」

すっかり立ち直った街を見て、まもりもうなずく。

状態異常用のアイテム等を補充してきたメイたち。

いよいよあとは、花を咲かせるだけだ。

星屑一美しい街の復活は、もう間近といったところだろう。

別の街に持ち出していた花の種を回収するために、老人とエンリケは街を出た。

四人は残った時間を、のんびり過ごすことにした。

「そうだ、せっかくだしお茶でもする?」

毒もあとは池に残っているだけとなり、植物型のモンスターも街中には見られない。

そして街には高台になっている部分もあり、そこに綺麗な石畳とベンチがあるのをレンは見つけていた。

見晴らしもよく、街を覆っていた霧のようなものが落ち着いた今の状況なら、そんな時間も楽しめそうだ。

「お茶できるの?」

「こんな時のために、実は用意しておいたのよ」

レンはアイテムからティーセットを取り出すと、紅茶の準備を始める。

取り出した小型の焚き火台に【マッチ】で火を入れ、そこに直火可能なポットを載せれば、すぐにお湯が沸く。

「すごーい……」

「最近は外マップで調理をするなんていうシステムも、少しずつ実装しているみたいなのよ。だからまずは紅茶ができるセットを持ってきてみたの」

メイちゃんカフェによる飲食システムの周知もあり、それを『作る』ことにも目が向けられている状況が生まれた。

そこでレンはマーちゃんに頼んで、外仕様の少しおしゃれなティーセットを用意していたのだった。

「まだフレーバーは少ないけど、いけるでしょう?」

「さすがレンさんです」

「いいですわねぇ」

メイはここぞとばかりに、お嬢様風の雰囲気を出してみてる。

特にこの様子を見ているプレイヤーがいるわけではないが、ちょっと得意げな表情に笑ってしまう。

「ふふ、白夜を思い出してちょっと面白く見えちゃうわね」

「あれ……? 白夜ちゃんと一緒ならカッコいいはずだよっ」

「はい、なかなか良いと思います」

「だからそれは間違いだから! 目を覚まして!」

メイとツバメの中で予想以上の高評価を受けている白夜に、思わず引き留めをかけるレン。

こうして四人、紅茶を楽しんでいると――。

「まもりちゃん、どうしたの?」

「ひゃうっ!」

まもりがそわそわしていることに、気づいたメイが問いかける。

「あ、あの……も、もももももし、よろしければ……」

まもりは視線を右に左に迷わせながら、取り出したお菓子をベンチの上に置いていく。

一個、二個、十個、二十個、三十個。

「「「…………」」」

四十個、五十個――。

「「「…………」」」

「す、すみません! わわわ私のような日陰者が出しゃばった真似をっ!」

留まることのないお菓子を無言で見つめていると、まもりは勘違いして盾の影に隠れる。

「いや数よ! めちゃくちゃあるじゃない!」

「業者さんのようです……」

「すごーい!」

目を輝かせながら、お菓子の吟味を始めるメイ。

「まもりちゃんはカフェの時も来てくれて、いっぱい食べてたよね」

「は、はひっ! 広報誌で見かけてから、いつも楽しそうなメイさんをつい……追いかけてしまって」

そう言って「ごごごごめんなさいっ!」と、頭を下げるまもり。

「それで今は同じパーティなんだから、面白いわね」

「わわわ私なんかがメイさんと一緒にいるのがバレたら、殺されちゃいます! 今日も同級生が星屑とメイさんの話をしていて、申し訳なかったです……!」

「大丈夫です」

ツバメはそう言って、静かにうなづく。

「その盾さばきなら」

「まあ、まもりなら自力でなんとかできそうだけど……」

たとえ攻撃されるようなことがあったとしても、全部盾一つでなんとかしてしまいそうだとレンは笑う。

「あっ、これ美味しそう! まもりちゃんはいろんなお菓子を持ってるんだね」

「さ、最近は、クエストの後に食べるのが楽しみになっていたので……」

飲食システムが導入された際に、フローリスには携帯用のお菓子が色々と売られるようになった。

食べるの大好きまもりは、目を輝かせながら毎日それを買っては持ち運び、クエスト後に街の片隅で食べるという日々を過ごしていた。

「いただきまーす! まもりちゃんはどうしてこの街を拠点に選んだの?」

「は、はひっ。フローリスはどこでもきれいな花が見られるから、私みたい日陰者でも楽しい雰囲気になれるので……好きなんです」

「確かに風景のきれいさは、拠点選びに大事ですね」

「それと、あの……NPCの子がいつも声をかけてくれるので……」

「ちょっと好きになってしまいますよね」

「っ!!」

ツバメの言葉に、まもりはブンブンとうなずく。

「普段なかなかプレイヤーと話さないので、連日声をかけてくれるとなるとついうれしくなってしまうのです」

まもりは何度もさらにうなずく。

一通り『盾修行』を終えると、毎日笑顔であいさつしてくれる少女NPCに、ついついハウジング用の肥料を買ってしまうというのが一日の流れだ。

「お気に入りのNPCに綺麗な風景。それが拠点選びの決め手だったのね」

「本当に、いい感じになってきたねぇ……」

あらためてフローリスの街を見渡してみる。

この綺麗な街並みの各所に、あふれんばかりの花が咲く光景はさぞかし美しいだろう。

四人は、お菓子を食べながらのんびり過ごす。

緊張感を見せながらも、なんだかんだいっぱい食べているまもりに、笑うレン。

「これはぜひとも、花満開の状態でまたお茶したいわねぇ」

「はいっ」

そんなレンの言葉に、思わず笑顔で答えたまもり。

自分の言葉と思わず高くなってしまったテンションに、慌てて盾に隠れる。

「待たせたのぉ!」

「うわー! たくさん!」

こうして楽しい時間を過ごしたメイたちのもとに、老人たちが大量の種が入った袋を抱えて戻ってきた。

「もう夕刻も近い。この種をまくのは明日からじゃな」

いよいよフローリスの復活は目前だ。

「なあ、ウォータープリムが足りないぞ」

「……おっと、すまない。どうやら大事な種を忘れていたようじゃ!」

「ウォータープリムは、教会を飾る名物だぞ。どうするんだ?」

「すまない冒険者殿! 植物に詳しい者のところへ行って、種をもらって来てくれないか? そして明日、共にまこう!」

「りょうかいですっ」

いよいよ明日に控えた種まき。

メイたちは再び王都に戻り、植物学者トミーからウォータープリムの種を入手したのだった。