軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

718.勘違いです!

「ここがミスリル鉱玉のあるという、レムルの穴ですか」

岩山を上がっていくと、火山口のように黒々とした岩場へたどりつく。

そこには深い、縦穴が空いていた。

「噴き出してる高温のガスは、当たればダメージ確実ね」

このガスは自然と湧き出てきたもので、もちろんドワーフが仕掛けたものではない。

しかし当のエルフたちは、それを勘違いしているというのが問題だ。

「どっちの陣営も見つけられないってことは、ミスリル鉱玉を入手してから話が動く感じかしら」

「そうなりそうですね。鉱玉を取り上げた状態で、両者に頭を冷やしてもらうという流れではないでしょうか」

メイたちは、ごつごつした足場の穴を降っていく。

「【跳躍】」

時には足場が危ういところもあり、ツバメはそんな箇所を飛ばして進む。

「これはなかなか難しいわね。高温ガスもあるし、落ちたら落下ダメージとの連携で死に戻りになるんじゃないかしら」

「ッ!?」

そんな中、思わぬ足場の悪さに転びかけたまもりが慌ててその場に腰を落として転落を回避。

移動系スキルがなく【敏捷】の低いまもりには、なかなか難しいようだ。

「だいじょうぶー?」

そんなまもりに、メイが手を伸ばす。

「あ、ありがとうございます……っ」

まもりは恥ずかしそうに迷った後、「こここここんなゴミに、申し訳ありませんっ!」と、メイの手を借りて立ち上がる。

しかしメイは立ったまもりを、そのまま抱え上げた。

「……ふえっ!?」

「これで一気に進みましょうっ! 【ラビットジャンプ】!」」

「ふえええええーっ!?」

メイは離れた足場に一気にジャンプ。

そこからさらに、次の足場までの距離を計算などもすることなく連続ジャンプ。

「うえっ!? うえっ!?」

まもりであれば、思い切ってジャンプした後にまた距離を測って跳ぶという形で進むであろう難所。

落ちたら即死の円形の崖を、止まることなく降りるメイに思わずしがみつく手に力が入り――。

「おまかせくださいっ!」

メイの満面の笑みに思わず赤面。

「【アクロバット】! それーっ!」

「うええええええーっ!?」

最後は華麗なバク宙で着地。

「え……ええ……」

普段誰かに触れることもめったにないまもりは、抱きかかえられるわ、即死マップを連続ジャンプするわでもう感情がめちゃくちゃ。

頭グルグル、顔からは湯気が上がるような状況になっていた。

「あ、ああああのっ!」

慌てて離れたまもりは盾に身を隠した後、そーっと顔を出す。

「ありがとうございました……」

「いえいえーっ」

そしてまた余裕の笑みを見せるメイに、慌てて目をそらすのだった。

「よいしょっと」

するとそこに【浮遊】で降りてきたレンと、リズムよく足場を蹴ってやってきたツバメも到着。

「……すごい」

素晴らしい速度でこの難所を降りてきたメイをしっかり追ってきたツバメたちに、まもりはあらためて感嘆する。

「あれがミスリル鉱玉だね」

崖の内側を降りた先には、本体の7割ほどが露出した白銀色の球体。

その大きさは、フルフェイスのヘルメットくらいだろうか。

「持って出ましょう。これでとりあえずドワーフさんやエルフさんが、高温ガスの崖にくる必要はなくなるはずです」

ここからは折り返し。

アスレチック化しているレムルの穴。

しかしメイたちは帰りも難なく進み、無事ミスリル鉱玉を持って山頂へ戻ってきた。

岩場の道に戻ってきたところに見えたのは、ドワーフの姿だ。

「……に、人間! 貴様らそれをどうやって!」

メイたちが持つミスリル鉱玉に気づいたドワーフたちが、驚きの声を上げる。

「まさかガスの噴出を見守っている隙に、ミスリル鉱玉を狙う輩が現れるとはな!」

するとそこに、いよいよ進軍を始めたエルフたちもやってきた。

「人間だと……どうやってここを嗅ぎつけた?」

「見ろ! あの人間が持っているの、ミスリル鉱玉だ!」

そしてこちらを見て、声を荒げ始める。

「ちょっと、良くない雰囲気ですね」

「待って! これはレムルの穴に毒ガスが出てるし、エルフとドワーフが仲違いをしそうってことで――」

そしてレンが説明を開始しようとした瞬間、一人のドワーフが声をあげる。

「耳長ども! 手を貸せい!」

「いいだろう」

ミスリル鉱玉を持ち出そうとする人間を前に、ドワーフたちは一転エルフとの共闘を決定。

「ちょ、ちょっと待って、エルフ・ドワーフ連合が敵になるの……?」

「うわわわわっ! 大変だー!」

「ミスリル鉱玉を持ち出そうとしたわけではありません。エルフとドワーフが勘違いで争い始めるのを危惧して――」

「いくぞ!」

ツバメは続けて弁明するが、勢いづいた両者にはもう通じない。

「まずはこの強欲な人間から、ミスリル鉱玉を奪い返すんだ!」

「「「オウッ!!」」」

斧を持ったドワーフたちは前衛、弓を携えたエルフたちは後衛という形を取り、戦闘態勢に入る。

「かかれーっ!!」

「「「うおおおおおお――――っ!!」」」

「ああもうっ! 一方的な勝利がクエスト達成につながるとは限らないわ、様子を見ながら戦いましょう!」

「りょうかいですっ!」

即座に構えるメイたち。

こうして、思わぬ形で敵対することになったドワーフ・エルフ連合軍との戦いが始まった。